介護をめぐる家族・人間模様【第22話】

「見てあげられる間だけでも、好きにさせてやりたい」息子を介護する母親の姿

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Photo by shibainu from Flickr

まったく関係ないが、メガネをかけた猪瀬都知事が加藤茶に見える。さて、この連載では何度も“母と息子の関係は特別だ”なんてことを書いてきた。今回はいつもと視点を変えて、母親を介護する息子ではなく、息子を介護する母親の話を取り上げてみようと思う。

<登場人物プロフィール>
山岡 加寿子(68) 中部地方在住。夫、修さんとの3人家族
山岡 修(41) 加寿子さんの長男。要介護5

■泣いても現実は変わらない。笑って暮らそうと決心した

 山岡さんの家には、間口の広い出入り口が2つある。1つは、玄関を兼ねた内職用の荷物出し入れ口。もう1つは息子、修さんの部屋からスロープを通る出入り口。修さんは、週2回この部屋からスロープを伝って入浴のためのデイサービスに出かける以外、外出したことはない。修さんは20歳の時、バイク事故で脊椎に損傷を負って以来、20年以上寝たきりなのだ。

「意識不明の状態がしばらく続き、一時は生命も危ぶまれました。だから目を開けた時、それはうれしかったです。でも、先生からもう一生立つことも、しゃべることもできないだろうと言われて、私たちは再び絶望のどん底に落とされました。いっそ助からなかった方が修は楽だっただろうとまで思いました」

 1年ほどして修さんは自宅に戻った。

「その時には、私はもう覚悟を決めていました。いつまでも泣いていても現実は変わらない。だったらせっかく助かった命を大切にして、少しでも笑って暮らそうと決心したんです。そうなると女は強いですよ。自宅にいて少しは収入を得ながら息子を介護できるように、内職の取りまとめみたいな仕事を見つけたんです。大した収入にはならないけれど、私もずっと介護で家にこもりきりじゃ、ダメになるだろうと思ったの。家でできる仕事なら、いつでも息子の様子を見に行けるでしょう。ただ、男親はダメですね。主人は今も息子の障害を受け入れられないようで、息子の部屋に入ろうともしない。息子の事故以来、抜け殻のように生きています」

■いつまで息子の介護ができるかわからない

 修さんは退院後、特殊なパソコンを使って、ゆっくりなら“会話”できるようになった。「おかあさん、ごめんなさい」。事故後、初めて修さんが発した“言葉”だという。それが山岡さんの生きる支えになっている。しかしデイサービスに行ったり、ヘルパーが来たりする以外、修さんはテレビやDVDを見るだけの毎日だ。

「修にしてみれば、泣いて暴れたいこともあると思うんです。遊び盛りの男の子が、一瞬で寝たきりになってしまったんですから。でも、修は泣いて暴れることさえできない。唯一の話し相手がヘルパーさんです。今来てくれているヘルパーさんは、まだ20代の男の子だけど、修も気に入ってるみたい。修も20歳のまま年を取っていないようなものだから、話も合うんでしょう。それまで来てくれていたヘルパーさんはおばさんで、話が合わなかった。若い女の子も来てくれてたけれど、修がパソコンの会話で、ちょっと下ネタっぽいことを言ってしまって。それで辞めてしまった。なかなか修が気に入るヘルパーさんと巡り合えなくて、ヘルパーを派遣してくださっている会社もいくつか変えて、今やっといいヘルパーさんが見つかったんです。ケアマネさんには、修にも問題がある。私も修に甘すぎる、いずれ親はいなくなるんだから、甘やかすばかりだと修が将来困ることになると言われました。でも、こんな体になってしまった修の気持ちを考えたら、私が見てあげられる間だけでも、修の好きにさせてやりたい。だから今のヘルパーさんには、ずっと来てほしいと思ってます。ただね、修も事故に遭わなかったら、今頃はこのヘルパーさんのように、結婚して子どももいたかもしれないと思うと、胸が張り裂けそうになります。割り切っていたつもりだったんですけどね」

 最近、山岡家にはいいことがあった。修さんの妹に子どもが生まれたのだ。

「お兄ちゃんがこんな状態だったので、娘にも苦労をかけました。実は子どもができて、慌てて入籍したという事情もあるんですが、主人も少し元気が出たようです。それでも私も70近い。いつまで修の介護ができるかわかりません。夜中何度も修の様子を見るのに起きないといけないのも、正直なところつらいです。でも、とにかくがんばれるところまでがんばらないとね」

 山岡さんの視線の先には、壁に貼った写真があった。事故に遭う前の修さんが笑っていた。

母亡きあとの家族の行方は

しぃちゃん

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