[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」12月7日号

捨てられない奇病と捨てすぎる恐怖、極端すぎる「婦人公論」の大掃除特集

2013/12/02 21:00
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「婦人公論」12月7日号(中央公論新社)

 気付けば、今年も残すところあと1カ月。大掃除という三文字がチラついてテンションだだ下がりシーズンの到来ですね。そんな気持ちを知ってか知らずか、今号の「婦人公論」(中央公論新社)の特集は「きっぱり捨てて、運を呼びこむ」。数号前に断捨離特集を組んだはず……と思った貴女、前回は人間関係の断捨離、今回は物質の方です。「婦人公論」読者はどれだけ厄介なものを抱え込んでいるんだか……。とにかく「婦人公論」読者は捨てたい、なにもかもキレイさっぱり捨ててやり直したいということのようです。表紙インタビューで“前夫マイク眞木とも彼の現在の妻とも、ひとり息子・真木蔵人の元嫁とも仲良くやってま~す”と“捨てない女”アピールする前田美波里がなんだか空々しく感じてしまいますが、しかしなぜエド・はるみポーズなの? コォーーーッ!

<トピックス>
◎一家4人の「なんにもない」暮らし
◎IKKO×千秋 私たち、キレイ好き。ゴミ箱なんか不要です。
◎<読者体験手記>汚部屋ですが、何か?

■キレイ好きは正義?

 「師走も目前。大掃除しなきゃ! とプレッシャーを感じるこの時期こそ、家の中を見直すチャンスです。身の回りに溢れるモノは、あなたの将来に本当に必要?」と老後を盾に脅しにかかる今特集。だいたい、一寸先は闇どころか断崖絶壁のこの世の中、将来なんて全然見えないのに、なにが必要でなにが不要かなんてわかるはずありません。しかし、「……手放してみることで、日常が快適になるばかりか幸福な未来が向こうからやってきます」ということですので、ここはひとつ騙されたつもりで読んでみましょう。

 特集の中身はおおまかに分けて、二通り。片付けられる人の自慢話と、片付けられない人の言い訳です。片付けられる人の代表として登場するのは、『人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版)でおなじみの近藤麻理恵、『わたしのウチには、なんにもない。』(エンターブレイン)を書いた漫画家のゆるりまい、タレントの千秋とIKKOはキレイ好き対談をしています。

 ゆるりまい氏の自宅は、新築引き渡し直後と見紛うモノの無さ。この人が元汚部屋&汚屋敷の住人だったというのですから、人生なにが起きるかわかりません。「きっかけは、高校時代の失恋。彼との思い出の品々をやっとの思いで処分したら、これが快感で(笑)」。しかし漫画や本を3,000冊ドバッと捨てても「家全体は相変わらずものが多すぎて。その後、地元で就職した頃には祖母の認知症が進み、ますます家は散らかり」ということで、結婚を機に実家を自分好みに建て替え、母と祖母と一緒に暮らす孝行娘。しかしなんでしょう、「捨て変態」と自称する彼女の、引き出しまでガランとした自宅には、物で溢れた汚部屋とは違う恐怖を感じます。

 「片付け上手=美意識が高い」とお互いを褒めちぎっているのは、千秋とIKKOの対談「私たち、キレイ好き。ゴミ箱なんか不要です」。「千秋ちゃんは、生まれつき整理整頓のセンスがあるのよ」などIKKOさんの“持ち上げ~(どんだけ~風に)”が炸裂しています。

千秋「IKKOさんのように、意義のあることに惜しみなくお金を使うのは、すごく大切なことだと思います。残念ながら私は物欲も執着も薄くて、なかなかそこまでの対象が見つからないのだけれど……」
IKKO「薄いというか、千秋ちゃんは、小さいころからいいものに接してきて審美眼が養われているから必要としてないのよ。だからこそ、言うことに説得力があるのね」

 激しいマウントポジションの取り合いから、2人の攻撃の矛先は汚部屋の住人へと向かいます。「前に汚部屋の住人で、窓はおろかカーテンすら開けないという女性に会ったことがあるけど、見るからに気がよどんでいる感じがしたわ」とIKKOがdisれば、「頭の中で『この器にはこれだけの分量しか入らない』と把握していたら、絶対に部屋は散らからないのにね。片付けられない人は、頭の中も散らかっているってことかな?」と千秋が返す。出た! 気! 最終的に「見えないものの力」に判断を委ねようとするから、片付けネタは胡散臭くなるんですよ。それにしても、「頭の中が散らかってる」は正解すぎます。

『婦人公論 2013年 12/7号』
“そこそこ”じゃ企画にならんのですわ!
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