ドラマレビュー第24回『海の上の診療所』

『あまちゃん』を咀嚼した手法に賛否が分かれる、『海の上の診療所』の評価

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『海の上の診療所』(フジテレビ系)公式サイトより

 フジテレビの月曜9時枠(月9)で放送されている『海の上の診療所』は、瀬戸内海に浮かぶ無医島を回る診療船・海診丸に乗り込んだ医師・瀬崎航太(松田翔太)と看護師の戸神眞子(武井咲)を筆頭とする乗組員たちの物語だ。

 いわゆる医療モノかというと、少し毛色が違う。航太は医師としての腕はいいのだが、美女と出会う度に一目惚れしてしまう軽薄な性格。毎回、美女たちの悩みを医師として解決するが、実は彼女たちには好きな人がいて、航太は振られて落ち込んで終わるという、『男はつらいよ』の寅さんみたいな構造となっている。

 マドンナ役として出演した女優は加藤あい、篠田麻里子、夏帆、瀧本美織、安達祐実、北乃きい、戸田恵梨香、佐々木希と、1話限りのゲストとしては豪華なのも見所だ。脚本は徳永友一。作品歴を見ると、連ドラを全話執筆した経験は『打撃天使ルリ』(テレビ朝日系)のみで、そのほかの作品では複数の脚本家が参加するタイプのドラマにセカンド、サードで参加することが多かったようだ。しかし、本作では今のところ全話執筆しており、どの話もパターンを守りながらもバリエーション豊かで完成度は高い。

 また、離島を舞台とした医療モノという意味では『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)を連想してしまうという声もあるが、チーフ演出の中江功が同作の演出を担当していたためか、第1話で航太にわざわざ「ドクターコータです」と言わせており、ドラマ内でも遊びとして取り入れられている。それよりも評価が分かれるのは、作中に見え隠れする『あまちゃん』(NHK)の影響だろう。
 
 荒川良々、福士蒼汰といった『あまちゃん』に出演した役者の起用(皆川猿時も刑事役でゲスト出演している)や、エンドロールで用いられる鉄拳のアニメーションの使い方。瀬戸内海という地方ロケを多用した箱庭的世界観。そして『あまちゃん』で人気だった松田龍平に対し、弟の松田翔太が主演を務めていること。

 ネットの感想を見ていると、本作の『あまちゃん』の影響を受けた部分は、残念ながら視聴者からは安易なパクリと受け取られてしまったようだ。作品の出来はそこまで悪くないのだが、初見の印象から敬遠している人も多いのではないかと思う。『あまちゃん』のような、ドラマというジャンル自体を変えてしまいかねない作品が登場した時、作り手としてはどう反応すべきか悩むところだろう。

 『海の上の診療所』は、いち早く『あまちゃん』の影響を咀嚼しようとしているため悪目立ちしてしまったが、うまくいっている部分も多い。まず何より、瀬戸内海の離島を舞台にしているため、ロケーションの見ごたえがある。テレビドラマの場合、東京や都市部が舞台であることが多いことから、どうしても画面の印象が似かよってしまう。その中で本作の映像は頭一つ抜けている。また、脇役の設定が作りこまれていて、本編と関係ない部分にも奥行きを感じる。

 眞子が元不良で、広島でレディースを率いていたというような、本当か嘘かわからないようなうわさ話や、元ラガーマンの料理長・海藤剛(寺島進)がブログを持っていて、料理本の出版を目論んでいるといった話は、それだけでスピンオフが作れそうだ。また、今まで主演が多かった藤原紀香を荒川良々演じる日内事務長の妻に設定したのも絶妙の配置で、彼女の持っている大物感がドラマを邪魔しない形でバックアップしている。こういった脇役の使い方は、『あまちゃん』の良い部分を学習しているので、これから他作品にも広がっていくのではないかと思う。

 第3話で「瀬戸の花嫁」を流したような歌謡曲の使い方も、歌謡曲も含めた過去のアーカイヴを効果的に使っていた『あまちゃん』の見せ方を研究している。根底にある高齢化社会における老人介護の問題というテーマへの切り込み方も悪くない。意外だったのは、今まで航太との因縁を匂わせることで、序盤から物語を引っ張っていた羽鳥輝(戸田恵梨香)が7で登場したこと。てっきり最終話まで温存するのかと思っていただけに驚いたのと同時に、ここで彼女のエピソードが完結してしまったのは少しもったいないと感じた。しかし、大ボスの戸田恵梨香をここで使うということは、もっと盛り上がるクライマックスを用意しているのではないかと期待している。
(成馬零一)

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