角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第53回

台風でも通常営業、保育園としての課題は子どもの安全と人員確保

2013/11/02 19:00
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日替わりでアクティビティがあるので、転園者が少ないのかも。アクティビティを通して、子どもたちは体も心も鍛えられます

 10月は台風が立て続けにやってきましたが、保育園は電車が止まろうと予約の時間には開園しなければなりません。うちの保育園でも調理スタッフが定刻に来られないという状況になりましたが、自転車通勤のスタッフが2名と徒歩通勤の私がいたので、なんとかなりました。ですが、ほかの保育園ではどのような対応をしていたかが気になります(横のつながりがないので)。

 一番現実的なのは「タクシーに乗って出勤をしてください」と指示をすることかもしれませんね。今後スタッフを採用する上で、地域雇用はとても大事だと実感しました。震災が起きたとしても同様に、自転車で帰宅できる距離なら雇用主として安心ですし、自分も子どもがいるのに、大渋滞のなかスタッフを一人ひとり車で送っていくのも大変です。もちろん保育園なので、水、食料のストックはありますが、園児全員を保護者に引き渡した後は、スタッフの帰宅の心配をしなければなりません。子どものいるスタッフもいますので、なるべく早く安全に帰宅させることが雇い主の務めとなります。当園ではアルバイトを採用する時、交通費の負担を減らすためなるべく近くに住む人を採用してきました(現役アイドルは別ですが)。しかし、正社員になるといい人材を選ぶことが重要となるので、近くに住んでいるからといって安易に採用するのは危険すぎます。バランスが難しいですね。

 台風の日は、調理スタッフから「何時に行けるかわからない」と電話があった時点で、料理の得意な保育士が調理をし始めたため、給食の時間に間に合いました。こども園なので専業主婦の母親が多く、前日に「明日は台風直撃なので休みます」と連絡があり、登園した子どもの人数が大幅に少なかったことも幸いしました。地域の小学校の対応は、目黒区は休校、世田谷区は3時間目から、私立はもちろん休校になったので、普段は学童で通っている小学生が朝8時から来て、変化があって楽しかったです。小さい子はみんな小学生のお兄ちゃんお姉ちゃんが好きですから、いつもは夕方前に来ている子が朝からいるので新鮮だったみたいです。

■毎年園児が総入れ替えする保育園もありますが……

 駒沢の森こども園26年度は、1、2歳は定員に達しました。キャンセル待ちが4人いて、現在は「キャンセル待ちもできない状態です」とお断りしています。いつ入れるかわからないのに期待させても悪いし、2年2か月営業していると、年間どのくらいの園児が引っ越すか、幼稚園やインターナショナルスクールに行ってしまうかが把握できるようになりましたから、キャンセル待ちから繰り上がる人数がだいたいわかるのです。ちなみに認可園へ転園するために必要な受託証明を書いたのは1人だけでしたね。過去に一度書いた人が翌年になって「気に入ったので、ずっと“こまもり”(園児や保護者は当園を略してこう言います)に通うことにしました」と言って、認可園を希望しなくなったこともありました。なので、翌年の経営を心配することはありませんが、駅前保育の認可外園は毎年園児が総入れ替えだそうです。それもちょっと悲しいですね。

 うちは、幼稚園やインター(インターナショナルスクール)に行っても卒園はせず、幼稚園やインター降園後に通うダブル保育を希望する方が多いので、みんなの成長を見届けることができます。オープン当初はインターがライバルかと思いきや、逆にインターからの転園組もいます。理由は「すべてが英語で子どもが混乱するようになった」「いいと思って入れたけど、毎日のお弁当が苦痛」……そんな中で駒沢の森こども園を探して入園に至ったという感じです。幼稚園希望者は、こぐま会などの幼児教室に入れて熱心に有名私立幼稚園のお受験対策する方もいれば、対照的に誰でも入園OKの幼稚園を希望する方もいて、さまざまといった感じです。

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では5歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2013/11/02 19:00
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