話題の卵子凍結保存はアリ? ナシ?

「不妊は母の遺伝」「高熱で無精子症に」氾濫する不妊症のうわさの真偽とは?

2013/11/28 21:00
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Photo by erik langner from flickr

 今年8月、厚生労働省が、不妊症治療の助成対象年齢を、2016年度から「42歳以下」にするという方針を決定した。この決定をめぐって「40代の不妊治療による妊娠出産率が10%以下だといわれているので、この線引きは妥当」「43歳以上は産むなと、見放されたよう」などの議論が巻き起こり、メディアもこぞって「不妊症」を取り上げるようになった。その影響からか、既婚者だけでなく、独身者までも不妊症について不安を抱くようになっているという。

 「結婚前から不妊症を考えるのは早すぎる」という印象も受けるが、最近では、卵子老化による不妊予防の一環である「卵子凍結保存」の説明会に、20代独身女性が足を運ぶ姿も見られるようだ。

 今回、「成城松村クリニック」の院長である産婦人科医・松村圭子先生に、世間に氾濫する不妊症のうわさの真偽、また現在の不妊症治療について、お話を伺った。

――現在、さまざまな不妊症に関する情報が氾濫しており、その一つひとつに一喜一憂する女性も少なくないようです。例えばその情報の1つが、「男性が成人してからおたふく風邪にかかると、無精子症になる」といううわさ。彼氏に、「罹患したことがあるかどうかを、聞きたくても聞けない」という悩みを持つ女性までいるそうです。

松村圭子先生(以下、松村) まず睾丸というのは、そもそも熱に弱いもの。体の外側に出ているのは、体温よりも2~3度低い状態にするためです。その睾丸に、大敵である熱が加えられると、精子を作り出す「造精能力」が弱くなってしまうのです。サウナに入ったり、ボクサーパンツをはいていたりっていうのも、実はその働きを弱くする原因の1つです。でも、サウナやボクサーパンツをやめれば、数カ月はかかるかもしれないけれど、働きはちゃんと戻ります。

 「男性がおたふく風邪にかかると不妊症になる」といううわさは、つまり男性が大人になって高熱を出すと、睾丸炎になることがあり、そのせいで精子の造精能力が根絶してしまう――ということです。しかしほとんどの場合、睾丸の片側だけだから、問題ありません。

――片側だけ睾丸炎になった場合でも、妊娠率は下がりますか?

松村 いや、もう片側で精子が作られるから、大丈夫。両側が睾丸炎になってしまうと、無精子症になりますが、きわめて稀です。

――大人になってから、一度でも40℃近い高熱を出したらアウトだと思っていた人は、少しホッとしたかもしれませんね。では、母の不妊症が娘に遺伝することはありますか?

松村 これはまったく関係ありません。不妊には、たくさんの原因があり、原因がわからないという場合もあるほどです。卵子が育って排卵をして、卵管で精子と受精をし、それが子宮に運ばれて着床する――その過程にどこか1つでも異常があれば、不妊になるわけだから。一番多い不妊の原因は、クラミジアとか子宮内膜症などが原因となる卵管障害。これら疾患が遺伝じゃないことからもわかるように、母親の不妊症が遺伝することはありえません。逆に、母親の「私はすぐ妊娠したし、安産だったから、あなたも大丈夫」というのもあてにはなりませんね。

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