『ペコロスの母に会いに行く』著者インタビュー

『ペコロスの母に会いに行く』岡野雄一氏の、「親と距離を置くことで救われる」介護

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現在は「週刊朝日」で『ペコロスの母の玉手箱』を連載中の岡野雄一氏

 2013年10月現在で18万部を売り上げるベストセラーとなった、コミックエッセイ『ペコロスの母に会いに行く』(西日本新聞出版)が実写版で映画化された。認知症の母みつえと息子ゆういちが繰り広げる、おかしくも切ない日常を描いた“介護喜劇”映画だ。著者のペコロスこと岡野雄一氏は、バツイチとなった40歳の時に子連れで故郷・長崎にUターンし、両親と同居。夫の死後に認知症を発症した母と生活を共にしていた。親の老いを受け入れること、介護との関わり方について、岡野氏に話をうかがった。

――お母さまの認知症という重いテーマを漫画にしようと思われたのは、何かきっかけがあったんでしょうか。

岡野雄一氏(以下、岡野) もともと単行本として描き始めたのではなく、編集長をしていたタウン誌に、身辺雑記として描いていた8コマ漫画が始まりなんです。その頃の僕は、離婚したため息子を連れて故郷の長崎に帰って、両親と暮らしていました。10年ほどたって父が80歳で亡くなり、その頃から母の認知症が出始めました。最初は病気だとは思わずに、単に年を取ってボケてきたんだと思っていました。僕が年を取ってハゲたように(笑)。それで、漫画にもだんだん母のエピソードが増えてきたんです。すると店のママさんやお客さんから「わかるー」とか「あるよねー」という反応が出てきた。泣き出す人もいましたね。僕はその反応が意外だった。「え? 普通にあることなのに」って。

――映画も拝見しましたが、ツボにはまって泣き通しでした。映画よりも漫画の方が軽く読める感じがします。笑いながらも、ホロリと泣けるというか。実際は笑えないことも多かったのではないでしょうか。

岡野 幸い、と言っていいのかわかりませんが、母の認知症は進行がゆっくりだったんです。それで、母を観察して描ける余裕もありました。時には写メを撮ったりもしましたね。ただ深刻な話でも、必ず漫画では最後は笑いに落とすようにしていました。たまにしんみり終わると、「泣けた」という反応が返ってきました。みんな、どこかしら覚えがあることなんじゃないでしょうか。

――若い頃のお父さまはアル中ぎみだし、暴力は振るうし、お母さまはずいぶんご苦労をされたんですね。そんなお母さまを見守る岡野さんのまなざしには、息子ならではの無条件の愛のようなものを感じました。娘だったらもう少し違った見方をしていたかもしれません。

岡野 父は酒に飲まれる人で、確かに母は苦労していました。ただ、黙って叩かれてはいたけども「叩かれてあげる」というか、それで暴力の嵐を過ぎ去らせようとしていたというか、そんな感じだったんだと思います。母は、天草の子だくさんの農家の長女。それはしっかり者だし強い人でした。父のことは「弱かったけれど、いい人やった」と言ってましたね。母は体は小さいけれど、大きな人なんですよ。こんなことを言うと、「岡野はマザコンだ」って言われるんですけどね。ま、いいやと(笑)。

――「いい人」ですか。すみません、漫画を読んでいる限りでは、かなりダメなお父さんだなと思いましたが……。

岡野 僕は幼い頃から、父のことが大好きだったんです。母よりも鮮明な思い出が残っているくらいで。母は昔の人だから、常に父の後ろにいたんですね。素面の父は子煩悩で、一緒に相撲を取ってくれたり、野球をしてくれたり。ドクターストップがかかって、60歳を過ぎて酒をやめてからは短歌一筋。念仏好きの好々爺になった。『ペコロス』を応援してくれた詩人の伊藤比呂美さんは、父のことを「好みのタイプ」って言ってましたね(笑)。映画で演じてくださった加瀬亮さんは、若い頃の父そっくりでびっくりしました。僕の息子のまさきも、加瀬さんと本当の爺ちゃんとを混同して話しかけていたくらいで。

――まさきさんは、幼い頃長崎に移って、お爺ちゃんお婆ちゃんと暮らしていたんですね。

岡野 すっかり爺ちゃん婆ちゃん子になりましたね。僕らが帰って来て、父が亡くなるまでの10年間は両親にとっても「蜜月」だったと思います。僕にとってもそう。実は、長崎に帰ってきた時「間に合った」と思ったんです。これまでにも何度か「間に合った」と思った場面があります。漫画にも描きましたが、父がトイレで下血して倒れていたことがありました。発見した母が「父ちゃん、死んだばい」と僕に言った時。母が1人じゃなくてよかった。「間に合った」と思った。それから、母が脳梗塞で倒れた時。救急車の中で、母と一緒にいられてよかった、「間に合った」。今回の映画化も「間に合った」と思っています。映画は僕が想像していた以上によくできていましたね。母は急速に認知症の進行が進み、今はほとんど寝たきりですが、母のいるグループホームにDVDを持っていってみんなで見たいと思っています。

距離を作ることを恐れない

しぃちゃん



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