ドラマレビュー第19回『あまちゃん』

優れた音楽番組でありお笑い番組でもあった、特異なドラマ『あまちゃん』

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『連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック』/ ビクターエンタテインメント

 半年間放送されていた、朝の連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)が、9月27日に終了した。

 岩手県にある架空の町・北三陸市と東京を舞台に、天野アキ(能年玲奈)が成長する姿と、アキと関わった人々が変わっていく姿を描いた本作は、アキが海女になることで地元のアイドルとなり町おこしをする故郷編と、アキが東京でアイドルを目指す東京編、そして、2011年の東日本大震災を東京で体験したアキが北三陸に戻り、地元の復興に関わる姿を描く震災以降で分かれる、三部構成となっていた。

 『木更津キャッツアイ』や『タイガー&ドラゴン』(ともにTBS)といったドラマで、2000年代に絶大な評価を受けた宮藤官九郎を脚本に起用し、海女による町おこしと、アイドルや震災といった現代的モチーフを描いた『あまちゃん』は、あらゆる要素において破格の作品だった。朝ドラの定型である、夏・春子・アキの親子三代の物語という枠組を守りながらも、宮藤が今までのドラマで培ってきた、実在する芸能人や地名、商品名を多用することでリアリティの水準を極限まで現実に近づける世界観や、薬師丸ひろ子や小泉今日子といった今まで起用してきた役者のバックボーンをフル活用した本作は、宮藤のキャリアにおいても総決算といえる作品だ。

 また、宮藤のドラマはマニアックなファンが付くため、DVD-BOXは売れるが、リアルタイムでの視聴率は低いという致命的な弱点があったが、これも初回(第一週)視聴率から20%越えを果たし、幅広い支持を獲得することにも成功した。これは、宮藤脚本の持つ情報量の多さが、「1話15分×6日」で半年間放送される朝ドラという形式と予想外に相性が良かったからだろう。

 1時間1話だと情報量が過密すぎる宮藤の脚本も、1日15分なら、適度に消費できる。また多少ストーリーがわかりづらくても、Twitter等のSNSで消費されるうちに、視聴者の間で知識が共有されるため、途中で脱落する視聴者があまり出なかったのではないかと思う。その意味で宮藤のドラマを観賞しやすい環境が、SNSの普及でやっと出来上がったのだともいえる。

 ほかにも、井上剛を筆頭とする各演出家が果たした功績や、ドラマ中に名前だけは延々と登場するが、最後まで画面に登場しなかった秋元康とAKB48の、本作における存在意味について等、いろいろ書きたいことはあるが、キリがないのでやめておく。
 
 ただ、どうしても触れておきたいのは、多くの視聴者が『あまちゃん』を楽しんだ理由についてだ。おそらく、この作品が幅広い支持を得られたのは、テレビドラマとしてではなく、優れた「テレビ番組」として見られていたからではないかと思う。おそらく『あまちゃん』にもっとも近いのは、クレイジーキャッツの出演していた『しゃぼん玉ホリデー』(日本テレビ系)のような、歌ありコントあり、トークショーありのバラエティ番組や、その影響下で作られた故・久世光彦が演出をつとめていた『時間ですよ!』や『寺内貫太郎一家』(ともにTBS)といったバラエティ色の強いドラマだろう。

 例えば、本作に登場する秋元康のモノマネをしているという太巻(古田新太)の描写などは、とんねるずやダウンタウンがバラエティ番組でやっていたパロディコントのキャラクターのようで、ああいったパロディは、本来、お笑い番組がもっとも得意としていたことである。今期ヒットした『半沢直樹』(TBS系)にしても、昔のとんねるずなら、放送翌週にはパロディコントにするくらいの嗅覚と反射神経の良さがあったはずだが、そういった動きはお笑いの側から、ほとんどなかった。

 唯一、NHKで放送された内村光良のバラエティ番組『LIFE!~人生に捧げるコント~』で『あまちゃん』パロディが放送されたが、宮藤官九郎を接待するような人畜無害な作品になっていた。あの番組だけがお笑い芸人からの『あまちゃん』に対するリアルタイムの返答だったとすると、コント番組が、いかに絶望的な状況にあるのか理解いただけるはずだ。

 それは歌番組も同様だ。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)等の今の音楽番組が、90年代前後を振り返る中途半端な懐メロ番組となりつつある一方で、『あまちゃん』は戦後史そのものを歌謡曲で結びつけながら、今の時代の音楽番組として機能しており、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)のライブシーンは、ドラマというよりは、優れた音楽番組を見ているようだった。皮肉なことにテレビドラマの『あまちゃん』の方が、音楽やお笑いの力を何倍も信じて、作品の一部に取り込んでいるのだ。
 
 『あまちゃん』は他ジャンルで活躍するクリエイターにも絶賛されたが、お笑いや音楽を生業としている人たちは、自分たちの表現がどんどんテレビドラマに奪われていることを自覚して、もっと「じぇじぇじぇ!」と危機感を感じてほしい。
(成馬零一)

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