[官能小説レビュー]

愛のないセックスこそ快感? 『リコちゃんの暴走』が暴く、痛い女の自己愛

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『人肌ショコラリキュール』/講談社

■今回の官能小説
『リコちゃんの暴走』蛭田亜紗子(『人肌ショコラリキュール』より、講談社)

 人を好きになるという心理の裏側には、自己愛が秘められている。例えばルックスの良い男性を好きになり、その思いが通じた場合、すれ違う女性たち全員から嫉妬の視線を感じて快感を得られる。エリートの男性とゴールインすれば、「こんなに安定した収入のある男と結婚できる私」「ここに集まっている女友達の中で一番高収入の男に見初められた私」と思わずにはいられない。男への愛情とは、どこかで利己的なものなのだ。

 このような利己的な愛情表現には、自己破壊型のものもある。不倫、略奪愛などがその最たる例ではないだろうか。家庭のある男性と関係し、休日には何食わぬ顔をして家族と過ごす男性を思い浮かべ、涙する自分に酔う――。そんな女に心当たりのある人も少なくないのではないだろうか。

 そんな障害があればあるほど、盛り上がってしまう女は、時として「障害がないのなら、自ら作ってしまえばいい」という危険な思想に陥ることも。今回ご紹介する『人肌ショコラリキュール』(講談社)に収録された短編『リコちゃんの暴走』の主人公・リコも、そんな女の1人だ。

大学で知り合ってから丸2年、リコが実に21回もの告白をしても、決して振り向いてくれることのない男・シュウ。いよいよ疎ましがられるようになってしまい、リコは「――いちどでいいからあたしと寝てほしい。そうしたら諦める。寝てくれるまで、つきまとう。」と宣言する。

 陳腐なラブホテルで、最愛の男・シュウに処女を捧げるリコ。服も脱がされず、優しいキスもない。この日のために用意した下着を自分で脱ぎ、痛みとともにシュウを受け入れた。肉体的な快感の欠片もない事務的なセックスは、リコの心を深く引き裂いた。

 しかし、シュウから受けた“痛み”は、リコにとって快感となる。それから4年後にできた恋人・ケイに、「飽きた」という理由で別れを告げられたリコは、あの“痛み”を求めて、最後のセックスを懇願する。ケイは喘ぎ声が漏れるリコの口を手で塞ぎ、腰を動かしながら、携帯電話で友人と会話を続ける。そのつれない態度に、リコは感じ、声を上げて果てた。

 次の男・ナツヒコとは3年間の交際を経て、結婚を控えていた。穏やかで優しい恋人。胸を裂くような痛みを与えてくれたシュウやケイとは違い、平穏な日々と順風満帆な未来を与えてくれる。

これぞまさに痛々しいラブ

しぃちゃん

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