[女性誌速攻レビュー]「日経ウーマン」10月号

「笑顔」と「自信」でOK? 「日経ウーマン」産後の職場復帰方法に疑問

2013/09/19 16:00

 また、「ストレスの多い仕事で妊活との両立が難しい…」という相談には、「職場の理解を得るために、いつも笑顔で周囲への配慮を忘れずに働くことが大切です」という回答。ただでさえストレスの多い仕事だと言っているのに、「いつも笑顔で」いることまで強要されるなんて、余計にストレスが溜まってしまいそうです!

 読者投稿欄では、公共の場では妊婦に「席を譲ってください」とお願いすることを要求し、本特集では職場で妊娠出産に協力してもらえるように「笑顔」で周囲に配慮することを推奨してくる「日経ウーマン」。これらの誌面から感じ取れたのは、「妊娠・出産=人様に迷惑をかけること」「迷惑かけちゃうんだから下手に出なさいよ」という、働きながら出産育児に臨む女性への圧力のみでした。

■座談会に見る「産んで働く」のリアル

 散々圧力をかけられた後に用意されていたのは、「『産んで働く』のリアル」覆面座談会」です。

「妊娠したときは『予想外の人生になる』と思ってショック」「乳児と1対1なので、精神的につらかった」「認可保育所に子どもを預けたのですが、園の方針が合わず認可外に入り直し」などのリアルな体験談が満載。特に、各自の夫に対しては、「常に駆け引きしている感じですね。夫は帰りが遅いから、平日は私がすべてやらざるを得ない。正直、『損してるな』って思います」「家事も育児も私に任せっ切り。『助けてくれない』という思いが大きくなって、愛情が一気になくなりました」などなど不満が大爆発。

 この座談会を含めた今回の特集を読んだ読者が、妊娠出産、そしてその先にある仕事と育児の両立を前向きに考えられるようになるとは思えません。「両立するためにこうやりくりするべき」「周囲の協力を得るためにこう努力すべき」という記事をいくら突きつけられても、「私にできるのか」「子どもはほしいけど仕事しながら育てるのは厳しいかな」と思ってしまうのではないかと感じます。

 そもそも、「産んで働き続ける」ことについて、出産当事者である女性だけが悩んでいるという状態がおかしいですよね。女性に「いつも笑顔」でいることを求めるのではなく、無理に「笑顔」なんか作らなくたって出産育児に必要な協力を得られるのが当然の世の中に少しずつでも変わっていくように、「日経ウーマン」始めとする女性誌には、ぜひ率先して声を上げていってほしいと思います。
(早乙女ぐりこ)

最終更新:2013/09/19 16:00
『日経ウーマン』
笑顔もなくなるわ……
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