深澤真紀の「うまないうーまん」第1回

出産を神格化・扇動する声に思う、“産むか産まないか”は本当に女の一大事!?

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イラスト:小野ほりでい

 フィギュアスケートの安藤美姫選手が出産を発表し、父親については明らかにしなかったことで、マスコミは父親探しに奔走した。さらに「週刊文春」(文藝春秋)が公式ホームページで「安藤美姫選手の出産を支持しますか?」というアンケートを行ったことで「シングルマザーを否定するのか」などとネットが炎上し、謝罪に追い込まれた。

 そんななか、音楽家のMegumi Okumotoさん(@natarajashiva)のこのツイートが話題になった。


若く産んだら“若すぎる”
遅く産んだら“遅すぎる”
一人産んだら“一人だけ?”
沢山産んだら“やってける?”
一人で産んだら“父親は?”
産まなかったら“かわいそう”

とかくこの世は棲みにくい。


 まったくその通りで、安藤美姫を巡る問題は、女が「正しい出産」をしないことに対する世間からの「大きなお世話」どころか、「制裁」を実感させる出来事だったと言っていい。 さらに、「子供の性別」やら「働きながら育てるか、専業主婦で育てるか」など、出産を巡っては女性にとって「満点」はないのだ。

 私は46歳、学生時代から25年付き合っている夫と結婚はしているが、大人2人と猫2匹という生活を送っている。お互いに子供を望まなかったこともあり、私自身も後悔はしていないのだが、それでも面倒くさいなと思うことはままある。

 例えば、オネエタレントがこんなことを言うわけだ。

「ワタシは、女性は出産するというだけで男よりすばらしい存在だと思う。もし子供を産まなかったとしても、それについて深く悩んだわけだから、やっぱり男よりも大変なのよ」

 一見、女性をほめているようだが、この言葉の裏には「子供を産まなかった女は、みんな深く悩むべきだ」というプレッシャーが隠されている。しかし私に関していえば、自分の人生で一番悩んだのは、育った家族との関係と、仕事における人間関係だったので、子供を産むか産まないかについては、悩む暇もなかった。それについて悩まなかった私は、男以下の存在というわけだろう(まあそれでもかまわないんだけど)。

 あるいは、女性作家もこんなことを言う。

「若い女性に言いたいことは、この男でいいのかと悩まずに、種をもらって子供を産んだ方がいいということ」
 
 これも、無頼でかっこいい発言のようだが、ただ乱暴なだけである。先の安倍政権時に柳沢伯夫厚労大臣(当時)が発言した「女は産む機械」と、あまり変わらないようにさえ聞こえる。さらにこの発言には「男なんてどうせ無責任で、子育てに興味がないから、自分で勝手に産んで育てた方がいい」という意味もあるわけだが、それは男に対しても失礼だと思うのだ。もちろんそういう無責任な男だっているが、一方ではそうではない男だってもちろんたくさんいるわけだし。自分が無責任な男とばかり付き合ってきただけだろ、と言いたくもなる。

 オネエタレントは「自分が子供を産めない」からこそ、無責任に女性を神格化し、女性作家は「自分が子供を産んでよかった」からこそ、無責任に女性をあおる。

 まったく違う立場からに見える発言なのに、なぜこんなにも「女性」を追いつめるのだろう。

 女性にとって「産むか産まないか」は「人生の一大事」だと思われているからこそ、こういう発言が生まれるわけだが、産まなかった私にとってはただ面倒くさいだけである。

 この「うまないうーまん」という連載タイトルもふざけていると思うかもしれないが、「産むか産まないか」なんて、それくらいの軽さでもいいのではないかと思うのだ。

 安藤美姫はソチ五輪を目指すそうだが、彼女にこそ「ママでも金」を実現して欲しいと私は思っている。

深澤真紀(ふかさわ・まき)
1967年、東京生まれ。コラムニスト・編集者。2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞。雑誌やウェブ媒体での連載のほか、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の金曜コメンテーターも務める。近著に『ダメをみがく:“女子”の呪いを解く方法』(津村記久子との共著、紀伊國屋書店)など。

出産を巡る呪いが、この世で一番根深いのさっ

しぃちゃん

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