[官能小説レビュー]

SMこそセックスの基本!? 『調教MYダーリン』の女王と下僕の奥深い関係

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『調教MYダーリン』/宝島社

■今回の官能小説
『調教MYダーリン』水無月詩歌(宝島社)

 付き合う相手によって趣味や食事の好みが変化する――という女性は多い。しかし、男によって最も変わりやすいのは、セックスではないだろうか。淡白なセックスしか知らなかった女が、濃厚なセックスをする男と付き合った途端、その気持ち良さを知り、女として開花したという経験談はよく耳にする。そのほかにも、男の“性癖”に影響を受ける女性もいるだろう。

もし、パートナーにSMの趣向があったとしたら――今回ご紹介する『調教MYダーリン』(宝島社)の主人公・蘭は、セックスに対して非常に臆病な女性だ。経験こそあるものの、昔付き合っていた彼氏に「マグロだ」と陰口を叩かれ、以来すっかりセックスに対してコンプレックスを抱くようになってしまった。最近では、同僚の黒田から一方的にアプローチを受け、告白を断ったにもかかわらず、しつこくつきまとわれ、辟易としている。

 そんな蘭は、ひょんなことから、社内イチのモテ男・水野の意外な性癖を目撃することになる。人気のない社内でズボンを膝まで下ろし、指を入れて自慰に耽り、喜悦の声を上げる水野は、なんと切れ切れに蘭の名前を呼んでいた。「開発事業部の王子」と呼ばれるエリートの水野は、ドM男だったのだ。
 
 後日、水野に呼び出された蘭は、とある契約を持ちかけられる。それは、「ストーカーの黒田を遠ざけるために、水野は蘭と恋人同士を演じる」「その代わりに、蘭は水野の女王様になる」というものだった。
 
 自分自身に秘めている性癖は、第三者の方がより敏感にその素質を嗅ぎ分けてくれる。最初はまったく興味のない性癖だとしても、パートナーの導きによって驚くほど性急に開花するものだ。

 エナメルのパンプスや拘束具など、水野のSMコレクションに最初は嫌悪感すら抱いていた蘭だが、日々の調教を重ねてゆくうちに、快感を得るようになってゆく。我慢する水野の表情に心が高揚し、自分の命令を忠実に守る水野のいたいけな行動に、敏感な部分が疼く。蘭は水野を快感へと導き、水野もまた、蘭の中に潜んでいたサディスティックな一面を引き出していく。

 いつしか蘭は、仕事中でも水野のことを考えるようになる。調教中の順応な水野の表情を思い浮かべると、スイッチが入ったように性欲がこみ上げて来るようになった。最初に交わした「契約」の域を超え、蘭は水野を好きになり始めていた……。

 本来SMというプレイは、身体をつなぐ必要がないからこそ、強く心を通わせなければ成立しない行為だろう。女王が下僕(しもべ)に対して身体的な苦痛を虐げるというSMプレイでは、ともすると、女王の力加減ひとつで、下僕を傷つけてしまうこともある。それを避けるには、女王が下僕を慈しみ、下僕が女王に絶対的な信頼を寄せるという“絆”が重要なのだ。
 
 しかしどんなプレイであっても、互いのセックス観が一致してこそ快感が成立するもの。相手の声に耳を傾けず、マニュアルに沿った「男性を悦ばせるテクニック」を披露する女性もいると聞くが、セックスは決して一方通行では成立しない。互いに快感を探り合い、心地よい部分を見つけ合うからこそ、気持ち良いセックスができる――そんなセックスの基本を、『調教MYダーリン』はSMプレイを通して教えてくれるような気がする。

 蘭と水野のように、抜群に相性の良いパートナーと出会えれば最高だが、もし今のパートナーとのセックスに満足ができていないとしたら、こちらから相手を“調教”するのも1つの手かもしれない。相手によってセックス観が変わるのは、女だけでない。男もまた、女によってセックス観が変化する。時には女が攻めることも必要なのだ。
(いしいのりえ)

想像力たくましきSM愛好家たち!

しぃちゃん

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