ドラマレビュー第16回『激流』

10代から現在への成長の痛みが俳優たちと重なる『激流』

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『激流』公式サイトより

 自分が10代の頃に見ていた同世代のタレントが、30代40代になった姿でテレビに出ているという現実が時々、呑み込めないことがある。

 最近では、反原発運動の活動家をしている山本太郎と千葉麗子の姿を見ていると、何だかSFでも見ているような気持ちになる。「あの学園ドラマの続きは、こういう話になっているのか?」と、ドラマの中の10代の彼らと、30代になった現実の彼らの姿がごちゃごちゃになって混乱してしまう。

 『北の国から』(フジテレビ)の純(吉岡秀隆)と蛍(中嶋朋子)はその典型例だが、『北の国から』程ではないにせよ、ドラマを見続けること自体が役者の成長記録を見るという、もう一つの物語を生んでしまうことがある。

 そんな、歳を重ねていく俳優の面白さを隠し味としてうまく使っていたのが、柴田よしきの小説『激流』(徳間書店)をドラマ化したNHK火曜10時枠で放送された『激流~私を憶えていますか?~』だ。

 ある日、出版社の文芸部で働く35歳の三隅圭子(田中麗奈)の元に、「私を覚えてますか? 冬葉」という謎のメールが届く。冬葉とは三隅の中学時代の同級生・小野寺冬葉(刈谷友衣子)のことだ。彼女は修学旅行で三隅と同じ班のメンバーとして共に行動していたのだが、三隅たち同級生が目を離した隙に移動中のバスから降りて、行方不明となっていた。

 メールは冬葉と同じ班だった三隅の同級生、秋芳美弥(ともさかりえ)、河野貴子(国仲涼子)、鯖島豊(山本耕史)、東萩耕司(桐谷健太)にも届いており、久しぶりに5人は再会する。束の間の同窓会気分を満喫する5人。しかし、5人はそれぞれ仕事や家庭で悩みを抱えており、冬葉の謎を追っていくにつれて、事故に見舞われていく。

 物語は5人が冬葉の謎を追うミステリーとなっているが、次々と起こる謎の事故が冬葉の呪いではないか? と連想させるような、ホラー映画『リング』に近い側面もある。

 また同時に、これは大人になりきれなかった子どもたちの、遅れてきた青春を描いたドラマだ。失踪した冬葉を、失われた青春の象徴として描くことで、一見、社会的には安定した地位を獲得しているかに見える三隅たち5人の、大人になり損なった姿をえぐりだしていく。

 ドラマは20年前と現在が交差する形で描かれるのだが、面白いのは田中麗奈、国仲涼子、ともさかりえといった女優陣の見せ方だ。ドラマは登場人物が過去と現在の落差に翻弄される姿を描くため、結果的に田中麗奈やともさかりえの20年前と現在のギャップを考えてしまう。彼女たちの、デビューした若い頃のみずみずしい姿を知っていれば知っている程、劇中での姿とギャップが生じ、それがそのまま作品のテーマにつながっていく。

 同業の夫と離婚協議中の三隅を演じる田中麗奈に、「なっちゃん」のCMを思い出し、「あのなっちゃんが離婚!」、セレブ主婦ながら売春に手を染める河野を演じる国仲涼子には、「『ちゅらさん』(NHK)のえりぃが主婦売春!」という感じで見てしまう。そして、そのギャップはそのまま作品のテーマへとつながっている。

 逆にハマりすぎなのは、美弥を演じるともさかりえ。美弥は戸川純や椎名林檎を彷彿とさせるミュージシャンで、過去に歌や小説がヒットしたが、麻薬取締法違反で捕まり、今はスランプで落ちぶれている。デビュー初期の清純派路線から、拒食症を告白したり情緒不安定な時期を経て、椎名林檎のプロデュースした「少女ロボット」を歌うことで、個性派女優に転身していく姿を知っていると、まるで美弥はともさかの半生が描かれているようにも見える。

 こうして、役者のバックボーンやイメージをうまく使うことで、大人に成長したことの痛みを描くことに成功しているドラマだとも言える。

 そして、実は一番面白いことになっているのが、三隅たちの中学で音楽教師をしていた毛利佳奈子を演じた賀来千賀子だ。ミステリードラマなのでネタバレは避けるが、終盤で妖怪じみた迫力を魅せている賀来の芝居は、本作最大のみどころ。この迫力も、若い頃にいくつものドラマで主演を果たした記憶が、視聴者にあるからこそ生まれるギャップだろう。

 そんなふうに、全ての登場人物が、老いというけがれをまとっていく中で、行方不明になった冬葉だけが、「失われた青春」という永遠の美を体現している。演じているのは刈谷友衣子。最近では『ラジオ』(NHK)の主演で注目を浴びた16歳の若手女優だが、薄幸という言葉がこれだけ似合う女優はほかにいないだろう。おそらく今後数年は、ドラマや映画で不幸に見舞われる少女役を独占していくことになるのだろうが、個人的には『高校教師』(TBS系)の頃の桜井幸子を思い出す。でも、彼女も年を取ったら「あの冬葉がこんなことに?」って、言われるのかもな。
(成馬零一)

賀来千香子という業を見つけてしまったネ

しぃちゃん

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