[連載]ぶっちゃけ結婚ってどうですか?【やくみつる氏 前編】

子どもや親のことも話し合わない、やくみつる夫妻の「委ねられている」という着地点

2013/08/12 13:00

――「食べさせている」という思いがあるんですね。

やく その意識が強いですね。カミさんは結婚するまで、ほとんど実務の経験がない。バイトに毛の生えたようなことを短い期間やったことがあるみたいでしたけれど。となると、実際に食えないでしょうからね。事務仕事ができるわけでもないし、なにか秀でているわけでもないし。そういう意味では弱い存在であるわけです。

――でも、奥さんは、やくさんのアシスタントもされていますよね?

やく 実作業はほとんど手伝わなくなりましたけど、今でも折に触れてネタは出してくれますね。昨日も結構いいヒントがきましたね。数年前までは、よくネタ出し会議をやってました。この頃は、よほど短期間にたくさんの仕事が集中した時じゃなければやらない。私のマンガの中で、人の悪いネタだという時はアイツが思いついたと見なして間違いないというくらい、人の悪いネタを思いつきますね。「私もそこまで考えてなかった!」というネタを出してくれますから。

――そこまで考えていることが同じ方向を向いているお2人ですが、意見が対立した時は、どうやって折り合いをつけているんですか?

やく 基本、深刻な対立はないですよね。対立させようと思えばいくらでもありますが……。うちの親のことに関しても、カミさんの意見を取りました。私は長男ですから、自分の親を面倒見なければいかんとは思ってましたが、我々2人の生活時間とまったく違うので、同居はあきらめました。考えてみれば、対立する前に、得策だと思える方、賢明だと思う方を取っていますね。

――それは話し合いもしていない?

やく ネタ出し会議の時ほど話はしてないですね。と言うと、なんて話し合いのない夫婦だろうと思われそうですが(笑)。私の意見に自然に落とし込んでいく。私が自分で判断していれば、間違いがないはずなんです。

――話し合わないと、「すれ違う」という懸念もありますよね。

やく 大きなことはどっちかに委ねられていて、話し合うのはちっこいことだけ、というのがホントなんじゃないんですかね。「今日なに食べたい?」「今度どこ行こうか?」と、対立しても害のないところは、むしろ積極的に話しています。それによって、さも常に意見を交換し合っているように思えてくる。あっちも「なに言ったって、コイツには始まらん」と思っているかもしれないですよね。「意見を聞き入れてくれる」とは思ってないでしょうから。
(後編に続く、取材・インタビュー=小島かほり)

やくみつる
1959年3月12日生まれ、東京都出身。81年に、「まんがタイム」誌にデビュー。以後、野球を題材にしたマンガやコラムで人気を集める。豊富な知識と鋭い視点で近年はコメンテーターとクイズ番組の回答者としての人気を博す。日本相撲協会元生活指導部特別委員、日本昆虫協会理事。近著に『国語力』(齋藤孝との共著、辰巳出版)。

最終更新:2013/08/12 15:35
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