ドラマレビュー第14回『半沢直樹』

時代劇の勧懲フォーマットに沿いつつ、悪以上に狡猾な『半沢直樹』のヒーロー性

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『半澤直樹』公式サイトより

 TBSの日曜劇場で放送されている『半沢直樹』は、池井戸潤の小説『オレたちバブル入行組』『オレたち華のバブル組』(ともに文藝春秋)を原作としたドラマだ。

 世界第3位のメガバンク、東京中央銀行・大阪西支店で働く融資課課長の半沢直樹(堺雅人)は、有能なバンカー(銀行員)。ある日、西大阪スチールという年商50億の大手企業への融資話が持ち上がる。半沢は警戒するが、支店長・浅野(石丸幹二)の鶴の一声で「無担保で5億の融資」が決定する。しかし、西大阪スチールは計画倒産を行い、東田満社長(宇梶剛士)は失踪。融資金5億円の回収が困難な事態に陥る。半沢は浅野支店長に全ての責任を押し付けられ、5億を取り戻さないと出世コースから脱落し地方銀行に左遷されてしまうため、東田社長の行方を追いかけるが、浅野支店長と配下のバンカーが次から次と妨害工作を仕掛けてくる。

 男性視聴者を中心に高い支持を獲得している『半沢直樹』だが、本作のリアリティを支えているのは、敵は組織の中にいるという、伏魔殿としての銀行描写にある。こういった組織描写は、『踊る大捜査線』(フジテレビ系)の警察官僚の描写から始まり『相棒』(テレビ朝日系)等の刑事ドラマでは定番となっているが、その影響は『ハゲタカ』等のNHK土曜ドラマで定期的に作られている企業ドラマの描写にも波及している。

 現在、NHK土曜ドラマでは、『半沢直樹』と同じ池井戸潤の、電気メーカーの不祥事を描いた小説『七つの会議』が放送されているが、こちらで描かれる会社組織も基本的には半沢直樹における銀行と同じである。

 しかし、敵と味方の境界が曖昧で、主人公がじわじわと企業の不正に加担していく『七つの会議』に比べて、『半沢直樹』は銀行の内幕のディテールはしっかりしているが、出てくる登場人物は善玉と悪玉が綺麗に腑分けされており、半沢を陥れようとする上司はとことんズルくて悪い。第一話で、半沢が東田社長に襲われてゴルフクラブを使ったチャンバラ劇が展開された場面は思わず笑ってしまったが、半沢が剣道をやっていることも含めて、これは時代劇なんだと思えば、すべてが符合する。

 チーフ演出の福沢克雄は『華麗なる一族』や『南極大陸』(ともにTBS)といったSMAP・木村拓哉主演の昭和史モノを制作してきたが、ハッタリの効いた重厚な演出を得意とし、そのテイストは本作でも存分に生かされている。中でも素晴らしいのは、半沢を陥れようとする銀行員が半沢を恫喝する場面で、ドヤ顔で睨みつける表情が、能條純一の麻雀漫画『哭きの竜』(竹書房)に出てくるヤクザのようなすごい形相になっている。

 もちろん半沢も負けていない。本作が面白いのは、堺雅人演じる半沢直樹が主人公でありながら、敵以上に狡猾で容赦がないところだろう。「倍返しだ!」という決め台詞から明らかなように、半沢は理不尽な目に遭っても泣き寝入りしない。やられたらやり返す人間で、時に相手を罠にかけて上司を潰すこともいとわない。普段は能面のような表情の半沢が、般若のような形相で相手を睨みつけて恫喝する場面の迫力は、本作最大の見せ場で、この辺り、『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)の古美門弁護士を演じた堺だからこそ可能な顔面芝居だろう。

 こういった、組織の闇を浮かび上がらせる主人公というと、今までは、出世競争には興味がない『相棒』の杉下右京(水谷豊)のような組織内アウトローや、『七つの会議』の原島万二(東山紀之)のように、企業の闇に呑み込まれて破綻していく無力な個人という形で描かれていたが、半沢は自分を陥れようとする上司を、容赦なくぶっ潰していく。元々「上を目指す」と公言しており、組織の理不尽さに甘んじずに、己の信念を貫いていく凶暴さがあるのだ。

 この辺り、同じように今期話題となっている医療ドラマ『DOCTORS 2 最強の名医』(テレビ朝日系)の主人公の相良浩介(沢村一樹)にも通じるのだが、医者や銀行マンといった職業に殉じながらも、権力抗争や組織内改革にも乗り出し、卑怯な手も躊躇なく使うという清濁併せのむ怪物的なヒーロー性こそが、視聴者の心を掴んでいるのだ。
(成馬零一)

上戸は由美かおる的なお色気要因ってこと?

しぃちゃん



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