瀧波ユカリ『女もたけなわ』ブックレビュー

瀧波ユカリ『女もたけなわ』に潜む、女を不自由にする「オヤジ的価値観」の正体

2013/08/02 19:00
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『女もたけなわ』/幻冬舎

 2005年に「アフタヌーン」(講談社)で連載開始された4コマ漫画『臨死!!江古田ちゃん』。汚部屋に全裸で暮らす24歳独身、派遣社員の女性主人公・江古田ちゃんによる鋭い人間洞察が幅広い読者の支持を集め、一大ムーブメントを巻き起こしました。

 彼女持ちの男と別れられない江古田ちゃんに自分自身を重ね合わせたり、江古田ちゃん命名の「猛禽」という「男ウケのいい女子」批判に「わかるわかる」とうなずいたり。「世の中をナナメに見る江古田ちゃんに共感しちゃう私」を語る女性読者は後を絶ちません。

 今でこそ、女子の生態や自意識を描いた作品は数多く登場していますが、『江古田ちゃん』はその先駆者的存在であったといえるでしょう。

 この度出版された『女もたけなわ』(幻冬舎)は、あの『江古田ちゃん』の作者・瀧波ユカリによる気鋭のエッセイ集です。かつて「江古田ちゃんに共感しちゃう女」の1人であった筆者 は、喜び勇んで手に取りました。

 本書によれば、表題の「たけなわ」とは、「行事や季節などが最も盛り上がり、極まっている状態をさす言葉」であり、瀧波氏いわく「長い女の一生の中で、全力で恋愛や仕事や遊びに取り組む時間と体力のある20代・30代はまさに女の『たけなわ』と言えましょう」とのこと。「たけなわロードを走っている女性の皆様に読んでもらえたら、これほど幸せなことはありません」とまえがきに記されている通り、本書には、「モテるために何をすべきか」「性病検査」「アイドル愛」「異性へのプレゼント選び」「過去につきあったおかしな男」「未婚女性と既婚女性の埋められない溝」などなど、「たけなわ」期の女性たちの居酒屋トークの定番トピックばかりが並んでいます。

 中でも、「たけなわ」期の女性に重くのしかかってくるのは、やはり、「加齢」と「結婚」の二大テーマでしょう。本書もこれらのテーマにアプローチしています。

 例えば、「加齢」については、女に年齢を聞く時の緊張感とその対処法について考察する章(「女と女と『今、何歳?』」)、瀧波氏が通りすがりのおじさんに美人扱いされ、おじさんの連れの年配女性に同情心を感じたと語る章(「私より若い娘」)があります。本書では、女性の「若さ」にまつわる問題がかなりの重大事と捉えられているようです。

 また、「結婚」については、「あるところに、『未婚女性のムラ』と『既婚女性のムラ』がありました」という文章に始まり、2つの「ムラ」の住人が完全に仲たがいするまでを、客観的に寓話調で語る章(「ふたつのムラ」)、友人の結婚パーティーに向かう独身女性2人の僻みや不満に満ちた会話を書き出し、「会場にねたみやそねみは持ち込まないのが女のマナー」というアドバイスで終わる章(「女のマナー」)があります。そこからは、既婚女性と未婚女性の間の断絶を、積極的に描き出そうとする瀧波氏の姿勢がうかがえるのです。

『女もたけなわ』
悪者にならないための過剰な平和主義ってつまんないよね
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