ドラマレビュー第11回『鬼女』

藤山直美の怪演だけが光った『鬼女』、現実でもドラマでも欠如する“男の視点”

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『木嶋佳苗 法廷証言』(宝島社)

「だました男なんか、1人もいてません。私はただ、あの人らに愛されてしもうただけや」

 次々と男に金を貢がせ、2人の男を殺害した罪で起訴された三崎真由美(藤山直美)は、フリーライターの野元千明(夏川結衣)に向かって、そう語る。

 金曜プレステージ・スペシャルドラマ『鬼女』(フジテレビ系)は、婚活サイトで知り合った男たちを自殺に見せかけて次々と殺した結婚詐欺師・木嶋佳苗の事件をモデルとしている。木嶋の出身地が北海道だったのに対し、三崎の出身地は関西となっており、常に関西弁を使っている設定だ。演じるのは関西の名女優・藤山直美。外見だけならぴったりの人選だろう。

 スポーツ新聞で傍聴記録のコラムを執筆するフリーライターの野元は、傍聴で三崎の堂々とした佇まいに圧倒され、彼女のことを調べているうちに、男からだまし取った被害総額2億円のうち、1億円の使い道がわからないことに気付く。やがて取材を進めていくうちに、実は彼女には里子に出した娘がおり、難病を持つ娘のために支援団体を通して多額の寄付をしていたのだと知り、真相を記事にまとめる。しかし、三崎は「私には娘なんかいてない」と否定する。

 事件を担当する検事・岡部貴子(田中美佐子)は、10歳年下の夫とうまくいっておらず、男たちに愛されたと誇らしく語る三崎に苛立つ。法廷での振る舞いに魅力を感じ惹かれていく野元と苛立つ岡部、この2人の女の視点から物語は描かれる。

 三崎を演じる藤山直美の怪物的な芝居は、確かに迫力があり、見どころ満載だ。しかし、それは関西弁を駆使する「藤山直美」の面白さであって、木嶋佳苗の不気味さ(あるいは面白さ)ではない。故郷の痕跡を消して、叶恭子に憧れ、インターネットで偽セレブとして虚構の自分を演じていた木嶋佳苗の現実感のなさは、三崎からは感じない。どこからどう切り取っても「藤山直美」でしかないのだ。

 ドラマ版で加えられた母としての側面も、木嶋佳苗の人物像からは大きく離れている。仮に母としての自分を否定し、女として生きようとしていた(そのために法廷で悪女を演じていた)という展開ならば、もう少し見どころがあったかもしれない。よくも悪くも、実際の事件よりも藤山直美を見せることの比重が大きいのだろう。

 現実の木嶋佳苗とは違い、三崎は無罪となり釈放される。しかし、三崎の最後の恋人だった長谷川(甲本雅裕)は、野元の記事を読んで感動し、彼女を守るために嘘の証言をしたと野元に告白する。その結果、彼女が殺したかどうかの真相は藪の中となってドラマは終わる。

 彼女が犯人かどうか、男を殺したかどうか? というのは、木嶋の事件において大きな問題ではない。むしろ、あれだけの事件を起こした彼女に対し、シンパシーを覚えてしまう少なくない女がいること。そして、決して美女ではない太った彼女に多くの男が引っかかり、金を貢いでいたという、多くの人間を巻き込んだ彼女の奇妙な魅力こそが最大の謎なのだ。

 前者は作中である程度は描かれていたが、後者については、まったく踏み込んでいない。作中では一応、父を殺された飯塚緑(小池栄子)が、三崎や彼女を擁護する記事を書いた野元に怒りをぶつける場面があるのだが、その怒りは殺された男たちの意見ではない。

 実際に被害者がいる事件のため配慮したのかもしれないが、三崎に引っかかった男の視点がスッポリ抜けていることに、何か作り手の意図を感じてしまう。事件の真相について答えを出す必要はないが、その背景で渦巻いていたかもしれない心情を描くことは可能だったはずだ。実際の事件の報道もそうだが、あまりにも殺された男の側の視点がスポイルされているように見えた。
(成馬零一)

フィクションより現実が勝ち

しぃちゃん



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