[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

“オシャレ”をまとったエコ男子もどき&ほっこり女子にもの申す!

2013/06/30 21:00
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(C)安彦麻理絵

 「草食男子」が市民権を得て、ずいぶんたつような気がするが、それならば「エコ男子」はどうだろうか?

 エコ男子……多分「草食男子」ほどメジャーではないかもしれない。けれど、どんな人種かは、なんとなく想像がつくのではないだろうか? 「エコ」というからにはやはり、草しか食ってなさそうな印象を受けるので、草食男子と同じ系統にも見受けられる。しかし、淡白で闘争心がなさげな草食男子とは、何か微妙に違うような気がする。

 私が思う「エコ男子の定義」……それは。地球とか環境問題について真剣に考えている。「浄化」とか「解毒」が好きである。ヨガをやってる。アーユルヴェーダについて詳しい。アースデイに足を運ぶ。自給自足に憧れている。石窯で天然酵母パンを焼く。ベジタリアンである。泥付きの野菜が好きである。農業について関心が高い。「田舎に移住」とか本気で考えている。風邪をひいて熱を出しても、薬で治そうとはしない。日々、「ていねい」を心がけてスローライフを実践中。したがって「会ったその日に勢いでセックス!!」とかはしない、はず。

 ……こんなふうに、思いつく限りを書き出してみたが、どうだろう? 「いるいる!! こういう男!!」「こないだ荻窪の自然食品屋でこういう男、見かけたわ!!」等々、いろんな声が聞こえてきそうである。草食男子とエコ男子、同じ系統かと思いきや、実は、似て非なるもの。あっさり淡白で薄味そうな印象を受けるわりにはなんとなく、エグみが強いエコ男子。

「かなり頑固で、とんでもなくこだわりが強そう」「他人に対して厳しそう」「タバコなんか吸ってたら説教されそう」「『加藤茶の嫁ってやっぱ整形?』なんて話題をふったら、ものすごく軽蔑されそう」

 ……そんな風に見える所が、私は少々苦手なのである。しかし、中には本当にほっこりとした、ふかしたてのジャガイモのような、温和な性質のエコ男子もいるだろう。皆が皆、環境問題に目をつり上げて、泥付き野菜にかぶりついてるとは思わない。きっと、高見盛みたいな罪のない笑顔で「お嫁さん、欲しいっスね!!」なんて言ってるエコ男子もいるはずだ。だから私は、彼らを否定する気はさらさらない。私が苦手意識を剥き出しにして、目くじらを立ててしまうのは、多分「エコ男子」ではなく、「オシャレ」という衣をまとった、「エコ男子もどき」なのである。

 最近はそんな、精子臭のしなそうな、エコ男子もどきが増えてるような気がする。スローでオシャレなライフスタイルは、男おいどんとは真逆な生き様である。そんな彼らが関係を持つ女は、いわゆる「ほっこり系女子」である確率が高いだろう。「天然生活」(地球丸)とか、「リンネル」(宝島社)「クウネル」(マガジンハウス)「マーマーマガジン」(エムエム・ブックス)等を熱烈支持の女たち。間違っても「美ST」(光文社)とか「婦人公論」(中央公論新社)の読者であるハズはない。

 「ほっこり系女子」とつきあうと、もれなく「冷えとり・布ナプキン・マクロビ・レメディ・ホメオパシー」などがついてくるので、エコ男子もどきにも、さらに磨きがかかってくる。そんな男女を、じっくりコトコト、ル・クルーゼのナベでよく煮込めば、「ロハスでオーガニックな素敵カップル☆」の出来上がりだ。

 ……と、まあ、こんなふうに書くと、いやが上にも文面からは「皮肉」というオーラが滲み出てくる。事実、私はよく友人から「アンタ、ナチュラル系に対するディスりが激しい」と、言われる。 それこそ、目を三角にして舌打ちしてしまう程に、私はこういう人種を毛嫌いしているのだが……実はこれ、私の「醜い嫉妬」がなせるワザである。私が心底なりたいと思っても、なれないもの。それが「ほっこりフンワリ、おしゃれで素敵な生活を送ってる人たち」なのである。……ああ、私もそんな、自然光の下でハーブティーをすするような、天然酵母パンと玄米が主食みたいな、そんな人間になりたいもんだよ……。

 しかしそう願っても、いかんせん、私の人間性がゲスなもんだから、そんなふうに生きる事ができないわけだ。大体、なんで私が、そんなライフスタイルの人間になりたいのかといえば、それはもう、ただひたすらに「周囲の人から、まあ素敵☆って憧れられたい!!! 羨ましがられたい!!!」という……腹の中ではそんな、どす黒くてまがまがしい根性が渦巻いてるんだから、ゲス中のゲスである。私をル・クルーゼのナベにブチ込んでコトコト長時間煮込んだら、きっとナベの中は、ブワブワの薄汚いアクまみれになるだろう。

 ところで、エコ男子の行き着く先って、なんでみんな判を押したように「農業」なんだろう? 「漁業」に走るエコ野郎っていないのか? 漁業も別にナチュラル系な気がするのだが、しかし「漁村に移住のエコ男子」って、あんまり聞いたことがない。彼らの移住先は大体、山村と相場が決まっている。そしてそこで、無農薬野菜とかを作るわけである。山村ではなく沖縄あたりに移住したとしても、そこで漁業を始めた、なんて話はあまり聞かない。それはやはり、漁業が「オシャレとか、ほっこり」にはほど遠いから……じゃないだろうか? マグロ漁船とかイカ釣り漁船に乗り込んで、スローにほっこりなんてしてたら、荒々しい海の男たちに袋叩きにあいそうである。エコ男子たちが漁業から遠ざかる原因のひとつに、そんな「猛々しい雰囲気」もあるのではないだろうか。

 そして、エコ男子たちの彼女や奥さんだって、農村に移住する事にはOKを出すだろうけど、漁村に移住となると……リネンのワンピースやエプロンを身につけて、豪快に、出刃包丁で魚をさばくほっこり女子って、想像つかない。古民家を改造した、手作りのインテリアに囲まれて、テーブルの上には……「漁師直伝・アジのなめろう」とか、「藁焼きブリの叩き」そして「白鶴・まる~~~っ!!」……やっぱりありえない。

 結局、漁業の世界は「演歌」である。「兄弟船」とか「舟歌」なわけである。ロハスやオーガニックとか言ってる人たちが、そんな世界で生きていけるとは思えない。まあ、エコとかそういうことも大事なんだろうけど、でも。

 「男が精子臭しなくなったらマズいんじゃないのか?」と、最近の、そういう男たちを見て思う私なのであった。

最終更新:2019/05/21 16:24
『天然生活 2013年 07月号』
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