ドラマレビュー第5回『みんな!エスパーだよ!』

超能力を性欲とリンクして扱う『みんな!エスパーだよ!』の優しい目線

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『みんな!エスパーだよ!』公式サイトより

 『ヒミズ』や『希望の国』といった問題作を次々と制作している映画界の鬼才・園子温が監督を務め話題なのが、テレビ東京系列の深夜枠・ドラマ24で放送中の『みんな!エスパーだよ!』だ。

 物語の主人公は、『ヒミズ』で主演を務めた染谷将太。心の声が聴こえる超能力「テレパシー」に目覚めた高校生・鴨川嘉郎を演じている。平和で何もない田舎で暮らす人々が次々と超能力者として覚醒し、超能力を正しいことに使おうとする嘉郎と、私利私欲のために力を使おうとする超能力者との戦いを描いたドラマだが、基本的にはコメディであり、園子温作品でいうと『愛のむきだし』中盤のテイストに近い。

 原作は『デトロイト・メタル・シティ』(白泉社)の若杉公徳による同名漫画。原作にある下ネタ全開のテイストを守りつつも、監督の世界観をエロ方面で炸裂させている。園監督の妻としても知られる神楽坂恵は、登場する度に乳を揉まれ、作品内では女子高生が、パンチラを連発する。いわゆるオシャレな下着でなく、80年代ラブコメでいうところの純白のパンティーだ。

 ヤンキー女子高生の美由紀を演じる夏帆もまた、惜しみなくパンチラを披露。清純に見えて実は腹黒い女子高生・浅見さんを演じる真野恵里菜は、心の声を通して「鴨川くんか……絶対、私でオナニーしてるよな」と、ファンが聴いたら卒倒しそうな台詞を連発する。TENGAの登場シーンも含めて、「ほかのドラマにはできない、こんな面白いことができますよ」というお披露目として、第一話は大成功だったと言えよう。

 園が演出した1話以降は、映画『SRサイタマノラッパー』シリーズの入江悠が2~3話を、映画『くそガキの告白』の鈴木太一が4~5話の演出を担当。最新話(第5話)では、女性の性欲に対する嫌悪感が心的外傷となっている青年が、その原因となっていた死んだ母親との心理的な葛藤を、嘉郎たちエスパーが手助けして和解するという展開で、バカバカしくも感動的な話となっていた。回を重ねるごとに描ける物語のバリエーションが広がっており、一見、変化球だらけに見えて、思った以上にしっかりした作品だと言える。それは超能力の扱いにしても同様だ。本作における超能力は、性欲と密接にリンクしている。

 思春期は、身体が大人へと変わっていく中で、性欲も含めた外の世界への好奇心が大きく広がっていく時期だ。しかし実際は、親の庇護を受けながら、家と学校の往復ばかりという狭い世界を生きているため、現実と内面のズレを日々実感しながら、妄想を肥大化して生きている。これは、インターネットや携帯電話が普及した今でも変わらないだろう。いや、むしろネットで世界の情報にアクセスできるからこそ、自分にも何か特別なことができるはず、この力を世界のために役立てたいという妄想が広がるのかもしれない。本作における超能力とは、そういった思春期の妄想に形を与えたものだ。

 そんな孤独な妄想世界を生きていたエスパーたちが、嘉郎のテレパシーによって繋がり、チームを作るという展開は、定番だとは思っていても、やはり泣ける。特にテレポーテーション(瞬間移動)を使う榎本(深水元基)とテレキネシス(念動力)を操る嘉郎のオジの永野輝光(マキタスポーツ)のような実社会では性犯罪者として速攻で逮捕されそうな人たちすらも仲間として描く本作の姿勢は、実に優しい。その意味で『みんな、エスパーだよ!』というタイトルは、「みんな、スケベ(でいいん)だよ!」とドラマスタッフが、かつての自分たちも含めたすべての少年少女に語っているかのようだ。

 しかし、この優しさと居心地の良さに、自己完結した狭さも感じる。思春期の少年少女に渦巻いている性的衝動には、明るいエロスだけでなく、暗いタナトス(死への衝動)もあるものだが、演出の見せ方がコメディテイストのためか、今のところ、後者の破壊衝動は弱い。このあたり、同じように思春期の少年を描いている現在放送中のアニメ『惡の華』にある切迫感と較べて、踏み込みの甘さを感じてしまう。

 とはいえ、よくも悪くも本作の評価が決まるのは物語終盤だろう。『テレビブロス』5月11日号(東京ニュース通信社)に掲載された染谷将太と園子温のインタビューによると、後半は“とんでもない超展開”が待っているとのことなので、今後、どこまで暴走できるか、期待している。
(成馬零一)

おいおい、お色気×エスパーならマミだろ?

しぃちゃん

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