「1990X」編集長・斉藤まことインタビュー

女子カルチャーの新局面? ギャル系・カワイイ系でもない1990Xとは

2013/05/31 17:00
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「1990X」(プレビジョン)

 1990年代生まれの女の子と、1990年代のガーリーカルチャーを共演させた“ジェネレーションギャップ氷解マガジン”「1990X」(プレビジョン)が、発売以降話題を呼んでいる。表紙には、SKE48・松井玲奈(91年生まれ)が、当時カルチャーシーンに強い影響力を持っていたソニックユースのロックTに身を包み登場。ほかにも、ポニーテール写真集で人気の佐野ひなこ(94年生まれ)がヒステリックグラマーを初めて着てみたり、「H」(ロッキング・オン)や「Olive」(マガジンハウス)など、90年代に一世を風靡したカルチャー雑誌をまるでアナログレコードのように収集する女子大生・鵜川カナ(91年生まれ)が、そのコレクションをガイドするなど……! もしや、ガールズカルチャーは、新しい局地へと突入したのか? 果たして90年代生まれの女子の実像とは?

 「1990X」のほか、ガールズカルチャー誌「spoon.」の編集・発行人も務め、90年代前半にはカルチャー誌「H」の編集長として敏腕を振るった斉藤まこと氏に聞きに行った。

――今回、90年代生まれの女子に注目しようと思ったのはなぜですか?

斉藤まこと(以下、斉藤) 実はきっかけは、10年ほど前。2003年にうちから出した書籍『小学生日記』の作者・華恵ちゃんでした。彼女は当時小学六年生で、全国の作文コンクールで文部科学大臣賞を受賞するような突出した才能の子でした。彼女のお母さんは60年代生まれなんですが、華恵ちゃんをはじめ、その世代に育てられた子どもたちは、ギャル文化とは違う文化的な趣向を持っていて、90年代の文化をくみ取っているように感じていました。彼女たちは生まれた時からすでに不況だったこともありますが、消費に対して欲望を感じていなかったりして、それが新しいなと感じました。「こういう子が出てくる時代になったのか」と感じているうちにはや10年がたって、90年代生まれが20歳前後になっている。1人の突出した才能の登場から、10年たってようやく、ギャル文化以降の女の子たちが見えてきたんです。

 そして今、ももいろクロバーZも前田敦子も、人気のアイドルは90年代生まれが中心。これは一周回ったな、いまこそ「90年代生まれの女の子」を一括りにしたら面白いのでは、と考えていたら、写真家のホンマタカシさんも同様のことを考えていて、ならばと久しぶりにホンマさん全面フィーチャーで「1990X」を作りました。

――「Olive」「relax」「STUDIO VOICE」などのカルチャー誌が軒並み消えていくなか、斉藤さんは「spoon.」で変わらずガールズカルチャーを追いかけていらっしゃいますよね?

斉藤 「Olive」から市川実日子、「mc Sister」(ハースト婦人画報社)から村上里佳子(現・RIKACO)が生まれたように、女性誌の魅力は、その時代を体現するモデルを発掘して時代と並走することだと思うんですね。「spoon.」ではそれが華恵ちゃんであったり、5年ほど前の森ガールであったと思います。またそんな時代性を感じさせるモデルを推していきたいという意識はすごくありますね。日本には、究極で分けるとヤンキーかオタクのどっちかしかないと思うんですが、2000年代前半はギャル系カワイイカルチャーのニューヤンキー層が主流で、今はオタクデフォルトな世代が台頭してきているように思いますし。

『1990X』
90年代の地縛霊になったオバサンたちに捧ぐ
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