ドラマレビュー第2回『リーガル・ハイ』

『リーガル・ハイ』、物語を信じない弁護士の「人間なんてこんなもん」の肯定力

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『リーガル・ハイ』/TCエンタテイ
ンメント

 『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)は、勝つためなら手段を選ばない連戦連勝の弁護士・古美門研介(堺雅人)と、正義感が強い生真面目な新米弁護士・黛真知子(新垣結衣)が主人公のコメディテイストの法廷ドラマ。脚本を担当したのは『相棒』(テレビ朝日系)、『鈴木先生』(テレビ東京系)で完成度の高い脚本を執筆する古沢良太。堺雅人の演じる古美門が次から次に早口で繰り出す長台詞と、明らかにモデルがあるだろう訴訟ネタの面白さが話題となった2012年を代表するテレビドラマだ。

 4月13日に放送されたSPドラマは、昨年、大津市で起きた中学2年生の自殺事件以降、盛り上がったいじめをテーマにとした物語だ。ある中学で起きた生徒の飛び降り事件で、息子が昏睡状態となった母親が、背景にイジメがあったのではないかと学校を訴え、原告側の弁護士として、古美門と黛は学校側と争うことになる。新登場人物として、古美門と戦うライバル弁護士・勅使河原勲を北大路欣也が、古美門と対立する女裁判官・別府敏子を広末涼子が演じ、テレビシリーズ以上に豪華な仕上がりとなっていた。

 物語は、イジメの証拠を隠ぺいする学校側のアリバイを古美門と黛が崩していくミステリードラマとして進んでいく。やがて、事件の鍵を握る担任教師の藤井みなみ(榮倉奈々)がいじめを黙認し、実は事件を隠ぺいしようとしていた黒幕は教師たちではなく生徒の中にいることが明らかになる。普通なら、ここで一気にクライマックスだが、そう一筋縄ではいかないのが、『リーガル・ハイ』の面白さだ。

 事件の真相を告白した藤井は、今度は学校の教師たちと生徒に無視されて孤立したことから自殺未遂を行う。黛は教室に乗り込み、生徒たちを批判した後で、良心に訴える。やがて生徒たちが法廷で証人となることで、いじめが立証され、古美門たちが法廷で勝利し、「いじめに被害者も加害者もない。お互いに空気を読みあうことで温存される日本的構造こそが問題だ」という結論に落とし込む。普通のドラマなら、まぁ無難な結論だろう。しかし、物語はまだ終わらない。

 実は、藤井の自殺は古美門が仕組んだ狂言自殺であり、藤井を診断した医者もグルで、すべては黛に生徒をけしかけるための嘘だった。そして生徒たちの間で回っていた、「いっしょに証言をしてほしい」というメモもまた、古美門たちが捏造したものであったことが明らかになる。生徒たちは、何も変わったわけでなく、古美門が作り出した別の空気に流されただけでしかなかったのだ。

 辛辣なオチだが、これが絶望ではなく「人間なんてこんなもんだよ」という、彼らのふてぶてしさを肯定する方向に向かうのは、本作の持つ根本的な明るさだと言えよう。

 古美門にとって、相手の過去の古傷を抉り出して、ネチネチと陥れることも、相手の善意に訴えるような感動的な名演説も、裁判というゲームに勝つための手段でしかない。その意味で、彼は言葉も物語もまったく信じていないのだが、だからこそ武器として使いこなすことができる。

 この辺り、古沢良太のもう一つの代表作『鈴木先生』と比較すると面白い。鈴木先生は古美門と違い、理想とする教育観を持つ中学の担任なのだが、古沢良太は、その理想の裏にある、鈴木先生の女子中学生への性的欲望と、美しい理想を実現するために鈴木先生が用いる、ほとんど洗脳とも言える教育手腕と、自分の理想を妨げる人間をディベートの力で無自覚に陥れていく姿を、容赦なく描いている。

 言葉を信じずに手段と割り切っているが故に最強の弁護士である古美門と、自分の理想を実現するために、言葉を駆使する鈴木先生は一見正反対だが、目的のために物語(空気)を偽装していくやり口はどこか似ている。ここに、刑事として犯罪を解決することが完全に自己目的化している『相棒』の杉下右京を配置すると、古沢良太の中にある言葉と物語に対するスタンスが見えてくるのかもしれない。

 『リーガル・ハイ』は10月から続編が放送されることが決定したが、その時は是非とも、テレビ局の壁を越えて、古美門VS鈴木先生VS杉下右京という最強の屁理屈バトルを実現してほしい。
(成馬零一)

「人間なんてこんなもん」そう思えるまでが遠い

しぃちゃん



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