[女性誌速攻レビュー] 「Ray」5月号

アイドルより「サークルでモテる女の子」の方が格上、「Ray」で乃木坂46が散々な扱い

2013/04/09 16:00
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「Ray」2013年5月号/主婦の友社

 新生活を始める人も多いこの季節、「Ray」(主婦の友社)でも、新しい専属モデルがデビューしました。今をときめくアイドル・乃木坂46の白石麻衣ことまいやんです! 誰だよ! 元モーニング娘。・久住小春が「CanCam」(小学館)、AKB48・篠田麻里子が「MORE」(集英社)、小嶋陽菜が「MAQUIA」(同)の専属モデルになったことも記憶に新しいですが、今後モデルは「アイドルの再就職先」となるのではないでしょうか。人気衰退後、パチンコ店やスーパーの営業ドサ回りをさせられたり、再結成したら「姥捨て山」と嘲笑されたり……そんな諸先輩方の背中を見て育った若いアイドルたちはとても堅実。「アイドルとして名前が売れているうちに専属モデルになっておけば、人気がなくなっても惨めな仕事をしなくて済む」と思っているのかも。まぁ、まいやんって誰だか知らないけど! モデルとして人気が出て、タレントや女優になるというかつての王道のロールモデルが、これからは逆転していくような気がしています。

<トピックス>
◎“くびれ”“美脚”“小顔”よくばり着回し31days
◎もしも、白石麻衣が女子大生だったら…~可愛すぎるキャンパスコーデ~
◎20才の夢のお値段

■アイドルが徒となる「Ray」の世界

 さて、そんなわけで今月号から専属モデルになったまいやんですが、一体どんな女の子なのでしょうか。「モー娘。は踏み台だった」「男性ではなく、女性から支持を受けたかった」「アイドルは男に媚びてる」というイキりまくった発言を連発した久住を超えるような、現役アイドルのぶっ飛び発言を期待してしまいます。

 しかし、記念すべき初冠企画「もしも、白石麻衣が女子大生だったら…~可愛すぎるキャンパスコーデ~」の「まいやんの女子大生だったらやってみたい10のコト」は、何とも味気ないカスッカスな仕上がりに。「図書館でテスト勉強してみたい!」「おいしい!と評判のパン屋さんでバイトしたい」「女友達と日帰りで温泉旅行に出かけたい!」など、アイドル・まいやんの願望はそこらの女子高生とさして変わりなく、かと言って「あのアイドルがこんな庶民的な願望を抱いているんだ!」という感動もありません。だってね、まいやんのアイドルぶりを知らないんだもん!

 「まいやんを知る10のキーワード」も、「パンケーキが好き!」「とにかくスタバ好きです!」「得意料理はハンバーグです!」「YUIさんのファン!」と、ツッコみどころは皆無。アイドルなんだから、もうちょっと気の利いたことは言えないのかと、思わず心の中のプロデューサー・康が顔を出しちゃいそう。

 そんなまいやんを見ていると、「Ray」は彼女に、アイドルという話題性は求めても、アイドルとしてのキャラクターは一切望んでいないのだなぁとつくづく思わされます。最近、読者モデル集団「プリ(はぁと)クラ」をゴリ押ししていることからもわかるように、「Ray」は単に「サークルで一番可愛くてモテる女の子」を狙うための、ちっちゃなちっちゃな世界の雑誌なんです。そのポジションを狙うならば、アイドルをやっているなんてことは、男子を怖気させるだけで何のメリットにもなりません。「パンケーキが好き!」発言の方が、ずっと男子の心と股間を鷲掴みにしますよ! アイドル戦国時代とも言われる昨今、女の子の憧れの象徴であるアイドルの肩書きが、「Ray」誌上では足枷になってしまう。まるで大富豪の“革命”を目の当たりにしたようでした。

■就活に1円もかけなかった、恐るべき女子アナ内定者

 そんな夢もへったくれもねぇような「Ray」ですが、今号には「20才の夢のお値段」という企画がありました。「夢のない人生なんてつまらない!」という漠然としたキャッチコピーとは裏腹に、その内容はなかなかにシビア。人気職業別の夢への投資額が一覧になって掲載されています。

 「保育士……約7万円」「気象予報士……約10万円」「インテリアコーディネーター……約250万円」「看護師……約600万円」など、資格スクールのパンフレットでも読んでいる気分になるのですが、そんな中、地方局の女子アナに内定した女の子が、「夢への投資金額……約0万円」と意気揚々と書いているのが目に留まりました。なんでも「スクールにも通わず、就活に必要なスーツやバッグなどは手持ちのアイテムでまかなった」そう。夢への投資金額を紹介する企画にもかかわらず、空気を読まずに「私語り」をしたがるその根性こそ、プライスレスですよね!

 それよりもさらに空気を読んでいなかったのは、「あなたの夢を教えてください」に登場した、20才の一般女子たちです。「世界一周旅行する」「宇宙に行く」「Peace Boatに乗って世界一周」など、ビッグすぎる夢を語り出し、何だったら「BIGになる!」と直球ボールを投げる子まで! 将来への漠然とした不安を抱く若者に、明確な「金額」を提示することで、夢への取っ掛かりを見つけてほしい――そんな「Ray」の企画意図を鮮やかに裏切る野望の数々です。

 多分彼女たちは、大学生活を楽しむことに必死で、将来に対して不安を感じる暇もないのでしょう。しかし、本企画の最後に登場したAKB48の横山由依が、「アイドルの仕事をしながら、調剤薬局事務の資格を取得した。いつかは調剤薬局事務の仕事をしたい」と心にもないであろうことを語っているところ見ると、トシちゃんよろしくの「BIGになる!」宣言が、清々しく思えて仕方ありませんでした。
(豊島ユイ)

最終更新:2013/04/09 17:21
『Ray』
アイドルどもの「パンケーキ好き」率の高さは異常
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