ドラマレビュー第1回『リッチマン、プアウーマン』

『リッチマン、プアウーマン』が描いた、恋愛と流行の生き生きとした“軽薄”さ


フジテレビ公式サイトより

 元ライブドア社長・堀江貴文(ホリエモン)が仮釈放された、3月29日から3日後の4月1日、『リッチマン、プアウーマンinニューヨーク』(フジテレビ系)が放送された。本作は、昨年フジテレビの月曜9時枠(月9)で放送された連続ドラマ『リッチマン、プアウーマン』(以下、『リチプア』)のSPドラマだ。

 物語は新進気鋭のIT企業「NEXT INNOVATION」の若き天才社長・日向徹(小栗旬)と、東京大学理工学部に通う就活中の女子大生・夏井真琴(石原さとみ)のラブストーリーが中心だが、そこに副社長の朝比奈恒介(井浦新)の、日向への嫉妬を交えたBL的な男の愛憎劇を絡めることでストーリーを盛り上げており、久々に現れた月9らしい恋愛ドラマとなっていた。

 今回のスペシャルドラマで描かれるのは、本編の最終話で省略された、真琴がブラジルに旅立ってからの空白の1年半の出来事だ。物語は、真琴と日向がニューヨークで再会してから日本で同居を始める様子を描きつつ、「NEXT INNOVATION」の社員たちのその後が描かれる。

 自分勝手でわがままだが、熱い情熱をもって仕事に対する理想を演説する日向の、どこか憎めない純粋さは相変わらずのカッコよさ。その一方で、真琴を部屋に泊めた時、ささいなことで口ゲンカをしたり、真琴にペースを乱され翻弄される姿は、億万長者のIT社長とは思えぬ不器用さで、「お前は小学生か!」と、見ていてニヤニヤしてしまう。

 作中では最先端のタブレット端末やスマホをオシャレに使いこなす日向社長の姿が描かれ、日向の暮らす高級マンションではお掃除ロボットのルンバがウロウロしている。まるで2人の恋愛を彩るように、最先端の流行アイテムが次から次にぶち込まれていく。

 80年代にフジテレビ系列で放送されていた『抱きしめたい!』等のトレンディドラマは、画面の中がオシャレなアイテムで埋め尽くされており、視聴者からカタログ雑誌のように楽しまれていた。「こんな部屋に住んでる奴なんていねーよ」と半笑いでツッコミながらも、流行の最先端を扱うことで生まれるドラマのキラキラ感を楽しんでいたものだが、バブルが崩壊して以降、ドラマからは、トレンディドラマ的なキラキラ感は徐々に失われていった。『リチプア』は、久しぶりに現れたキラキラとした恋愛と流行を描いたネオ・トレンディドラマとでも言うような作品である。

 そして、こういう生き生きとした軽薄なディテールがあるからこそ、ドラマの核となる「理想」がより際立つ。本作では、日向の「ITを通して世の中を良くしていきたい」という理想が繰り返し描かれ、日向が開発した「パーソナルファイル」という戸籍情報管理システムをどう世に送り出すのかが、物語の中核となっている。

 「パーソナルファイル」は作中で何度も姿を変え、より便利で使いやすく、わかりやすいものへと進化していき、独善的で孤高の天才だった日向が真琴との恋を通して変化していく姿に重ね合わせられている。

 「お前なら世界が変えられるんだ」「未来ってよくなりますかね?」といった、青臭い台詞が次々と出ても恥ずかしくならないのは、脚本の安達奈緒子を筆頭とするドラマスタッフが「ITが社会を変えていく」ということを、本気で信じているからだろう。

 記者会見を行ったホリエモンは、痩せてほっそりとしていたが、その姿はどこか、日向徹を彷彿とさせた。
(成馬零一)

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しぃちゃん

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