「タレント本という名の経典」

男の「下に見てもいい」欲を満たす、女子アナ・中野美奈子の“ニブさ”

2013/04/06 19:00

 そんな中野だが、最近バッシングにさらされている。発端は先月の米アカデミー賞である。他番組への映り込みや拙い英語力が原因だが、実は2009年のアカデミー賞でも中野はやらかしていた。『おくりびと』が「外国語映画賞」を受賞した際、TBSの独占生中継にもかかわらず、中野は俳優を差し置いてセンターに立ち、オスカー像を持つという暴挙に出る。他局のカメラマンが舌うちしていたそうだが、そんなことで中野は動じない。「オスカー像を片手にへんてこな感想しか述べられず、でも優しい監督はじめ出演者のみなさんがその一連の流れを盛り上げてくれた」と本書で述べているが、それはあくまでニブい中野の視点によるもの。確かなことは、局アナ時代の中野は、周囲にがっちり守られていたということである。

 バッシングをされても、守ってもらえる……女子アナとは不思議な存在である。テレビには出るが、芸能人ではなく会社員。しかし、CDや本を出すなど、芸能人の領分にも進出している。それは彼女たちの人気の高さゆえだが、それでは女子アナはどうして男の心を掻き立てるのだろう。男性週刊誌で女子アナの記事を見かけないことはなく、そのほとんどが下世話な話と揶揄でできている。女優やタレント記事にはない、上から目線も特徴的だ。そう、男たちは「下に見ていい」存在としての美女を求めている。番組でアシスタント役をすることが多い女子アナは、「日本中の男の部下」なのだ。

 ここで言う部下とは、自分より下の人、従うしかない人、という意味での部下である。年を取っていても太っていてもクチが臭くても、自分に選ぶ権利があると信じて、女に点数をつける男たち。そんな男の下世話な査定欲求と、好みじゃないタイプに査定された時の不愉快さを差し引いても、「人気が欲しい」女子アナ。この二者の関係は切っても切れない。トムとジェリーのように「仲良くケンカする」関係なのである。

 清楚で時々セクシーさもアピールして、でも女性ウケも考慮する。アナウンス技術は抜群で周囲への気配りもある。努力教信者の女子アナたちは、今日も完璧を目指して努力を続けるだろう。しかし、彼女たちは忠実に「部下役」を遂行しているにすぎず、どれだけ努力をしても、結局は楯をつかないニブい女、つまり中野のような女が得をする。その向こうにいるのが、男という権限のない上司である限り。
(仁科友里)

最終更新:2019/05/17 20:56
『ミナモトノミナモト。』
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