ジェイミー・フォックスまで!?

アメリカ最大のタブー、人種差別発言で表舞台から去ったセレブたち

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メルに至ってはほぼビョーキ

 アメリカの人種差別問題は建国から現在に至るまで続いている、とても深刻な社会問題である。1971年、往年の大スターでアメリカ人にとってヒーロー的存在だったジョン・ウェインが、「私は白人至上主義を信じている。少なくとも、黒人が(社会において)責任を果たせる段階までの教育、教養をつけるまではね」と言い放ち、人種差別主義者のレッテルを貼られたことがある。しかし、その当時は人種差別的発言が原因で仕事を干されることはなかった。

 ジョンの発言から40年以上たった現在では、人種差別的な発言はタブーとされており、キャリアや人気に致命的なダメージを与えるとされている。今回は、タブーとされている人種差別的発言をし、活動に影響を受けたセレブを紹介したい。

アクセル・ローズ

 ロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼズ」のフロントマン、アクセル・ローズが人種差別主義者と呼ばれるようになったのは、デビュー後まもない1988年のこと。この年の初めにリリースしたミニ・アルバム『GN’Rライズ』に収録された「One in a Million」の歌詞に、黒人を卑下する「ニガー」、同性愛者を毛嫌いする「ファゴット」という差別用語を散りばめたからである。人権擁護団体は「カリスマ的人気を誇る影響力の強いバンドだけに、若者の人種差別を助長する」と懸念し、「曲をアルバムから削除すること」「バンドとして謝罪表明を出すこと」を強く求め、大きな論議を巻き起こした。ガンズはこの年、黒人ハードロックバンド「リヴィング・カラー」の前座を務めていたのだが、リヴィング・カラーもこの曲には「問題がある」と発言。作詞したアクセルは大バッシングを受けた。

 アクセルはインタビューで、「オレが人種差別的な言葉を使ったのは、それがタブーだからだ」「オレが怒っているのは、オレから金を巻き上げようとした黒人。黒人すべてじゃない」「オレが嫌なのは、自分がエイズだと知りながら性交渉しまくり、HIVをばらまいたホモ。ホモすべてじゃない」と、弁解。「オレのボディガードは黒人で親友でもあるんだぜ」と人種差別主義者ではないと断言している。

 その後、バンドの人気を支えていたギタリストで母親が黒人のスラッシュは、「曲を作ったことは後悔していないが、アクセルから最初『この歌詞でやりたい』と見せられた時は反対した」と告白。96年にスラッシュは脱退し、アクセルとは出会ったその日から仲が悪かったと明かしたが、「One in a Million」の「ニガー」に相当腹を立てていたという説もある。そして、スラッシュを失ったガンズは、その後失速してしまった。

 アクセルは、2011年にカナダのバンクーバーで行ったライブの終わりに、「出てけ! マザーファッカー!」と叫んだ直後に、「アジア人のクソったれ!」と言い放ったと話題になった。しかし、「アジア人(Asian)」ではなく、「ウブな野郎(Innocent)」と言っているという意見があるほか、もともと人種差別主義者だというイメージが定着しているため、前回ほどは騒がれなかった。

■マイケル・リチャーズ

 アメリカ人の4人に1人が見たという国民的コメディ『となりのサインフェルド』(89~98)でカルト的人気を誇るおとぼけキャラクター「クレイマー」を演じ、爆発的な人気を得たマイケル・リチャーズ。誰からも愛されるコメディアンとして名をはせていた彼だが、原点であるスタンドアップコメディ中に発した言葉で、一気に転落してしまった。

 問題となったのは、06年にウエストハリウッドのコメディクラブ「ラフ・ファクトリー」で行ったパフォーマンス。彼がトークを繰り広げている最中に到着した20人ほどの若者のグループが、騒がしかったことに腹を立てたマイケルは、「クソうるさい、バカなメキシコ人と黒人が来たよ」と悪態をついた。これに若者の1人が「オレのダチは、アンタのこと面白くないって言ってるけど」と応戦したのだが、これにマイケルがブチ切れ。「なんだと! このニガー!」「50年前なら、オメエのことを木に吊るして突き刺してるところだぜ」と、過激に発言。この様子は動画にバッチリと収められており、流出。「いい人だと思っていたのに!」と憤慨したファンから大バッシングを受けるハメになった。

 その後、マイケルは『となりのサインフェルド』のジェリー・サインフェルドの力添えを得て、全国放送で謝罪声明を発表。「自分は人種差別などしない男だということだ。なぜあんなことを言ったのか。本当に申し訳なく思っている」と憔悴しきった表情で述べた。07年にはスタンドアップコメディを引退。直後、「スピリチュアルなヒーリング」目的で婚約者と共にカンボジアへ行くと発表し、表舞台から消えてしまった。

■Dr.ローラ・シュレシンジャー

 70年代からラジオ番組に出演するようになり、80年代後半に人生相談を請け負う番組を持つようになったローラ・シュレシンジャー。名門コロンビア大学を卒業したエリート・ユダヤ系女性である彼女は保守的な考えの持ち主で、「説教と教示をし、モラル、価値観、倫理についてガミガミ言う」というスタイルで、多くの女性の支持を得た。マリッジ・カウンセリングも行っており、『女性がやってしまう、人生をダメにする10のこと』『夫への適切なケアとフィーディング』など、女性向けの指南書を執筆していることでも知られている。

 そんな彼女がとんでもない発言をしたのは、10年夏。白人の夫を持つ黒人女性のリスナーから、「夫の白人の友人たちから人種差別的な言葉を言われるが、どうすればいいのだろうか?」という相談を受けたときのことだった。ローラは、彼女をかばうどころか、「白人と結婚したのだから、仕方ない」「ニガーニガーと言われたって我慢すべき」と、“ニガー”という放送禁止用語を連発しながら冷たく回答。「だいたい、オバマ大統領になってから、人種差別とか言いだす人が多くなった」とまで語り、大きな論議を醸した。

 実は彼女、00年にも同性愛者たちを「生物学的なエラー」と言い、同性カップルは養子など迎えるべきではないと発言し、バッシングされた前科持ち。保守的なのだから仕方ないという声も上がったが、人生相談のプロフェッショナルが差別的な思想を持っていいのか、と大バッシングが巻き起こりスポンサーが離れてしまったことから、ローラは番組を終了するハメになった。

■ジェイミー・フォックス

 レイ・チャールズの伝記映画『Ray/レイ』でアカデミー賞主演男優賞を獲得し、俳優としての地位を築いたジェイミー・フォックス。黒人であることを常に意識している彼だが、昨年は度を超した“黒人至上主義的な発言”を立て続けにしたとして、バッシングされた。

 まず、11月の終わりに、イエス・キリストに対して使う「私たちの主であり救い主」を、オバマ・大統領に対して使い、大きな波紋を呼んだ。そして、12月にゲスト司会者を務めた人気コント番組『サタデー・ナイト・ライブ』のオープニングでいきなり、「オレは黒人。黒人でいることに誇りを感じているから全身、黒服で決めたぜ。ブラックは新しいホワイトなんだよ」と言いだし、挙げ句の果てに「オレさ、新作映画『ジャンゴ 繋がれざる者』で、白人を撃ち殺したんだ。最高だろ?」と言い放ったのだ。これには白人が「我々が人種差別的な発言をしたら激しくバッシングされるのに、黒人が白人を差別してもジョークで済む。こういう風潮はもういい加減にしてほしい」と大激怒。

 ジェイミーは同時期、雑誌のインタビューで「オレは人種差別に敏感な黒人。常に人種的思考の人間だ」「例えば写真撮影のスタジオにリッツとチーズが用意されてると“白人向けスナックかよ!”とムッとするね。でも、(黒人の大好物だとされる)フライドチキンとスイカが用意されてたら“バカにしやがって!”って、もっとムッとする。常に人種的な思考で物事を考えるんだ」と激白。

 「仕事を終えて帰宅すると、毎日『今日は8時間白人になった』『今日は4時間だけで済んだ』と思う」と、ハリウッドはまだまだ白人優位主義だと明かし、「白人と黒人は、リアクションの仕方が違う。(ナチス占領下のフランスが舞台の映画)『イングロリアス・バスターズ』を見るユダヤ人は、静かに怒りを表すだろう? 黒人の場合、気に入らない映画を見ると、素直に、“シット! ファック・アップ!”と言うね」「黒人はそういう場合、映画だけでなく、その役柄に対しても興味をなくすんだ」と繊細な問題について赤裸々に述べた。

 昨年末の人種差別的発言で、ジェイミーのキャリアが終わることはないだろう。しかし、大きくイメージダウンしたことは明らかで、しばらくの間、干されるのではないかとみられている。

■メル・ギブソン

 アクション映画『リーサル・ウェポン』シリーズで、大ブレイクしたメル・ギブソン。自宅敷地内に教会を建てるほど敬虔なカトリック信者である彼は、中絶反対を公言したり、イエス・キリストの処刑までの12時間をグロくリアルに描いた映画『パッション』(04)を製作。『パッション』は、反ユダヤ主義的な作品だとも言われたのだが、本人は否定した。しかし、2年後の06年。メルがユダヤ人に対する暴言を吐いたというニュースが大々的に報じられ、「筋金入りのアンチ・ユダヤ」のレッテルがべったりと貼られるハメになった。

 06年7月28日、メルはスピード違反と飲酒運転の疑いで逮捕された。直後、メルは、「オレの人生は終わりだ。めちゃくちゃだ。(当時の妻)ロビンはオレを捨てるだろうし」とうろたえていたのだが、突然、怒りの矛先を警官に向け、「オマエ、ユダヤ人か? ファッキング、ユダヤ人め。この世に起きる戦争は、全部ユダヤ人どものせいだ!」と言い放ったのだ。

 『パッション』でメルに悪いイメージを持っていたユダヤ人団体は、彼を強く非難。メルはすぐさま謝罪声明を発表し、ユダヤ教指導者たちにも直接会って謝罪。アルコール依存症に苦しんでいることもカミングアウトした。しかし、メルのユダヤ人に対する誹謗中傷にはもうウンザリという声が多く、ユダヤ人の多いハリウッドから干されてしまった。ジョディ・フォスターやロバート・ダウニー・Jrなど、メルをかばうセレブスターもちらほらいるものの、恋人へのDV騒動も起こすなど、ハリウッド大スターとしてのイメージは完全に地に落ちてしまった。

 スポーツ界にも、人種差別発言をして大きな波紋を呼んだ選手が存在する。タイガー・ウッズについて聞かれ「来年はフライド・チキンを用意しないように言ってくれ」と黒人をバカにする発言をしたプロゴルファーのファジー・ゼラーはレイシスト(差別主義者)だと非難され、NBAの天才的バスケットボール選手シャキール・オニールは、ヤオ・ミン選手について「チン・チョン」と言い、中国人から大バッシングを受けた。

 その昔、アメリカは「人種のるつぼ」と言われたが、うまく混じり合っていないため、今日では「サラダボウル」と呼ばれることが多い。残念なことだが、アメリカにおける人種差別は、当分なくなりそうにない。

「謹慎ってほんましんどいで!」

しぃちゃん

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