"噂の女"神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第164回】

人間よりもペットが大事? 現代における「生類憐れみの令」論争

2013/02/19 21:00
「女性セブン」2月28日号(小学館)

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

第164回(2/15~19発売号より)

 モントリオール五輪で「和製コマネチ」とまで言われた元体操選手の岡崎聡子(52)が覚せい剤で逮捕された。これで6度目の逮捕だそうだ。最初に逮捕されたのは約20年前。覚せい剤の再犯率の高さを改めて思った。そういえば元光GENJIの赤坂晃くん、そろそろ今春あたり出所予定だよなぁ。

1位「八千草薫 82才からの犬猫で『おひとりさまペット「論争」』」 (「女性セブン」2月28日号)
2位「上原さくら『死の料理』『裸で抹殺』離婚泥沼夫へ!隠せぬ殺意」(「女性セブン」2月28日号)

「離婚するより『家庭内別居』」(「女性セブン」2月28日号)

「子連れ再婚で幸せになりた~い!」(「女性自身」3月5日号)
3位「かとうかずこが『路頭に迷ってでも…』許せなかった高畑淳子の“暴君ぶり”」(「週刊女性」3月5日号)

 今週は<いかにも女性週刊誌らしい>記事が目白押しだ。トップは女性+高齢+おひとりさま+ペットという黄金の取り合わせである。主人公は大女優の八千草薫82歳。立派な高齢者であり、5年前に夫が亡くなり、現在は“おひとりさま”である。母の代から数えて11代目という犬を飼っている、筋金入りのペット好きだ。さらに昨年には野良猫を引き取ることになった。そして同年、11代目の犬が亡くなると、新たに12代目の犬を飼い始めたという。

 そんな事情を八千草がテレビで話したところ、ネット上で論争が巻き起こったという。

「年齢を考えたらペットの将来が心配」「生きがいなんだからいいんじゃない」

 要するに“おひとりさま”高齢者がペットを飼うと、孤独死、認知症、突然の入院などで、ペットに危機が訪れる。一方、ペットの存在は高齢者の生きがいでもある。その是非を「セブン」は論証し、自治体の取り組みやら保健所に意見を聞くなど、賛否両論、上手にバランスを取っている。老若幅広い層の女性の興味を引く記事でもある。しかし個人的に言えば、このバランスの取り方が、すっごく嫌だ。だって人間と犬猫をまるで同等のように扱っているから。

 「ペットは家族であり子ども同然」という風潮が日本でも定着して久しい。犬に洋服を着せて、飛行機に乗せて旅行に行く。レストランも同伴で、人間のテーブルの上でエサを食べさせる飼い主までいる。大物芸能人は仕事にもペット同伴(これらは虐待ではないかと思うが)。みんなマジで人間と犬が“同等”だと思っているのだろうか? 高齢者だろうがおひとりさまだろうが、人が望めばペットを飼えばいい。生きている間はきちんと世話をする。それが人間様の生きがいならなお更だ。ペットはそういうものだろう。そもそも、高齢者じゃなくても道端の糞を始末しないバカ飼い主がいる。転居や転勤、リストラで飼えなくなって捨ててしまう奴もいる。無駄吠えを放置し周囲に迷惑をかけ、虐待をする。

 それ以前に悪質なペットショップで売れ残った犬猫はどうなる? 年間殺処分される犬猫は20万匹以上で、そのうち3割が飼い主などの飼育放棄だという調査もある。これが全て高齢者というわけではないだろう。さらに言えば、これら問題を解決するなら、繁殖させない、飼わせないというペット禁止令でも出すしかない。

 そんな高齢者以外の身勝手な飼い主を取り締まれないのだから、ペットしか寄る辺のない高齢者が犬猫を飼いたいといって、邪魔する権利は誰にもない。高齢者が死んだ後、ペットはどうなる? って、それより現在生きている高齢者の生きがい――それによる健康維持や気力、生命の方が“私にとって”大切だ。というか比較するのも馬鹿馬鹿しい。一部の愛犬家たちは、高齢者より犬が大事なのだろうか。動物愛護も大切だとは思うけど、そんなことに比較すべくもなく、人間の命や尊厳、生きがいの方が大切だろう。これって当たり前だと思うのだが、世の中的には違うのだろうか――。現代における生類憐れみの令。こんな騒動に巻き込まれた八千草はお気の毒である。

 2位は妻の本音が描かれた3つの記事を取り上げたい。まずは、上原さくらの泥沼裁判。双方メディアを巻き込んで悪口合戦を繰り広げているが、今回「セブン」が入手したのが“上原とその友人の会話を録音した”テープである。高嶋政伸夫妻の“DVテープ”に勝るとも劣らない強烈な会話が収録されたものだ。

<ほんと殺してやろうかと思った><崖とかあったら突き落としてもいいかな>

 恐怖の殺意を抱く上原。さらにネットで“夫の殺し方”を検索して、塩分濃い目の料理で病気にさせたり、夫の歯ブラシでトイレの洗濯をして戻す、犬のウンコをカレーに混ぜるなどの知識を得たこと、また自分のヌードをばら撒きそれを夫の仕業のように装い、社会的地位を失墜させるなど、具体的な計画を考えていることを語っているのだ。もちろんこれらを実行するかは不明だ。しかし上原が殺意まで抱くほど憎んでいることはわかる。

 いや、しかし夫婦をめぐる争いは何も上原という芸能人夫婦だけではないらしい。それが次の記事である。「離婚するより家庭内別居」。多くの夫婦は一度は離婚を考えたことがある。夫と一緒にいたくない、不満だ、憎んでさえいる。だが離婚をするのではなく、家庭内別居を選ぶ妻が急増しているという。

 記事によれば、その理由は経済面や子どもの問題だ。そのため夫に気付かれないよう夫婦のスペースや生活動線を分断し、出入りも玄関と裏口、挨拶はメールやライン、自分はハウスキーパーと思い生活費から金を抜き、夫は透明人間と思う――と、現実を見て隠密に行動する妻が増えているのだという。嫌いな男とガチで憎み合う上原のケースとは対照的だが、考えれば男にとってこちらだってかなり怖い。自分を憎む女がひとつ屋根の下にいる。にもかかわらず、夫は憎まれているとは知らない――。滑稽でもあるが恐怖でもある。

 そしてもう1つが「子連れで再婚」だ。タイトルだけ見るとまっとうに感じるが、しかし内容は全然まっとうではない。なぜなら、“現在結婚生活を営む主婦”が<夫の給料が下がりっぱなし>で<このままでは子どもの将来が心配>だから<収入の安定したイケメンと結婚し直したい>というお話だから。まだ離婚もしていない妻であり母親がである。さらに<谷原章介さんみたいな人と子連れ再婚して、もっと子どもを産みたい>だって。しかも、相手の人の子どもに自分の子と同じだけの愛情を注ぐ自信がないから、子どものいない人がご希望だとか。何様?? 彼女たちはまず再婚相手を見つけてから離婚したいらしい。まるで再就職先を見つけてから職場に辞任届けをだすように――。

 女性はしたたかでマジ怖い。しかし、こうした話しをあたかも“ポジティブな女性の生き方”のように指南する女性週刊誌はもっと恐い。世の男性も女性週刊誌を読んで、妻の本音を勉強した方がいいかも。

 今度は熟女のバトルである。かとうかずこが32年間所属した「劇団青年座」を退団した。次の事務所も決めず唐突に。その理由は、「青年座」の幹部でもある高畑淳子のわがままにあるという。ある時には怒鳴り、台本を投げつけ、演出にも口を出す――。もし本当なら、大物熟女女優同士の“身内バトル”の勃発だ。ワクワク。しかし記事を読むと何だか様子が変。取材に応じたかとうも高畑との対立を否定し、高畑本人もテレビで見るようなあっけらかんとした感じで否定。2人の大先輩の西田敏行に直撃するも全否定。なんだか子どもが(記者)、老獪な大人たち(かとう、高畑、西田)に化かされたような記事になっていた。老獪な芸能人たちの完全勝利!?

最終更新:2013/02/19 21:00
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