角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第35回

お受験対策=日常生活の延長! テクニックじゃ補えない“保育”を実践

2013/02/02 16:00
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「受験絵画」では子どもたちの個性あ
ふれる豊かな表現力が求められます。
テクニックだけではダメなのです

 前回、駒沢の森こども園の受験対応について書きましたが、具体的にどんなことをしているか書いてみたいと思います。小学校受験には個人差もありますが、年少ぐらいからのスタートが妥当だと考えています。受験は「親の趣味に付き合ってもらっている」ぐらいの感覚でいてほしいです。お教室(受験対策専門の幼児教室)で習う“受験テクニック”は合否に深く関係し、とても重要だと思いますが、それ以上に普段の生活が大切。子どもは自分をよく見せようと取り繕うことをしないので、日常をきちんと過ごしていないと、やっぱりボロが出てしまいます。そこで、子どもが長い時間を過ごす保育園で対策ができれば理想だと思い、始めることにしました。

「受験絵画」は記憶力、想像力が決め手

 普通の絵画教室と受験絵画教室の大きな違いは、普通の絵画は何かを見て描くのに対し、受験絵画は記憶と想像が中心であることです。例えば「夏休み楽しかったことを描いてください」という課題。子どもは基本的にウソをつきませんから、その絵から夏休みをどう過ごしたかがわかることはもちろん、出来事をちゃんと記憶していてそれを表現する力があるかがわかります。普段から旅行のときの写真を子どもに見せたり、一緒に思い出してお話しすることも親の務めなのです。

 また、「この虫眼鏡は見たことのない虫が見える不思議な虫眼鏡です。どんな虫が見えましたか?」(慶応義塾幼稚舎の受験で過去に何度も出た問題)など、想像力が試される問題も多く、画材はクレヨン、水彩画、マジック、油ねんど……毎年違うもので出題されるので、すべて練習しないといけません。絵画と製作がミックスされた問題、たとえば「好きな動物の顔をマジックで描いて切り取り、セロテープをつけ、お面をつくる」などもあり、1つの試験で、絵画、はさみ、セロテープのスキルを試されることもあります。

 絵画のポイントとしては、描きたいものを画用紙いっぱいに描くこと(余白が残っていると見栄えが悪く、ぱっとしないのでダメ)、ユニークな色使いをすること。そして、友だちの真似をしないことです。真似は絵画に限らず絶対ダメ。「好きな動物を描く」という課題では、ほかの子とかぶりやすく、男の子はライオン、女の子はウサギを描く傾向にあるので、かぶらないような動物を1つ想定しておくことが基本ですね。自分の描いた絵について、「質問や発表」がある学校もあるので、その対策も行っています。

 絵画の時間は、クレヨンがちゃんと持てて、筆圧が強くなった頃を目安に始めています。普段の保育とのリンクが大切だと考え、セロテープ、糊の練習は通常の保育内での制作として1歳から、はさみは2歳から教えています。

■父親不在の家庭に重宝される「受験体操」

 駒沢の森こども園で、アクティビティとして実施している空手の時間の半分は受験体操です。実際の受験では、「大きな声で返事をして、前転してネットをもぐって、ギャロップ(スキップに似たステップ)」みたいな連続技の試験が多いので、最初は1つずつ練習させて、徐々につなげていきます。前転もギャロップもコツをつかめばできるようになるので、お母さんでは気づけないコツを先生が教えています。

 本来、前転はお父さんが家で布団を敷いて遊びながら教えるのが早いのですが、父親不在、あるいは草食系すぎて運動苦手のお父さんも多いので、この体操の時間が重宝されていますね(笑)。また、受験では先生のお手本通りに行うことが基本。たとえば、ゴム跳びの場合だと両足跳びなのか片足跳びなのか、飛行機のポーズをしているときの足の位置はどこだったのか、観察する力も問われるので、その対応もしています。ただ跳べる、ポーズがとれるというだけじゃダメ。そこが普通の体操教室とは違うところです。

■「行動観察」は、日常生活が最も出やすい

 受験で点数配分が多いのは「行動観察」と面接です(女子校はペーパー最重視の傾向)。それには日々の保育と当園独自のアクティビティの1つである「自己表現」が大切だと思っています。

 行動観察とは、子どもたちを遊ばせて点数を付けていくもの。そこで問われるのは、「リーダーシップ」や「やさしさ」です。たとえば、「なにか遊びを考えてください」と先生が言ったとき、一番に答えられた子どもは加点され、遊びを考えた内容がユニークな子ども、ルールを考えた子ども、「代表じゃんけんにしようよ」などと提案した子どもも加点されます。「イスとりゲーム」や「いろ鬼」などの遊びを行うケースでは、勝ち負けではなく、お友だちを応援していたり、ルールがわからなくなってしまったお友だちに「きみ、勝ったから進んで!」とやさしく教えてあげたりした子どもは先生の目を引き、ポイントが高いらしいです。お教室の行動観察を見たとき、「こんなのいつもこまもり(駒沢の森こども園)でやってんじゃん!」という感じでした。

 また、「自己表現」の時間では、面接のとき「緊張したり、恥ずかしがったりして何も話せなかった」ということがないよう、自分の力を最大限出し切る練習をしています。自由な校風の学校では、メーターが振り切れているような個性を持つ子どもを、「子どもらしさ」と評価する学校も多く、多少大げさに自己表現するぐらいが先生の目を引き、合格につながるそうです。もちろん、先生のお話を聞く、おしゃべりしない、友だちを追い越して歩かないなどの基本ができての、メーター振り切れですよ! くれぐれも間違えてはいけません。お受験するしないにかかわらず、通常の保育時間での過ごし方が大切だなあとつくづく思いますね。

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2013/02/02 16:00
『慶應義塾幼稚舎 絵画I』
翔くんもこれを乗り越えたんだね……
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