【田房、子役オーディションに行ったってよ】vol.1

「服が地味」「時間厳守」親をも審査する、赤ちゃんモデルオーディションに潜入


(C)田房永子

 “子役タレント”ブームも定着し、元日から鈴木福(小2)がヘリコプター中継する昨今。育児雑誌を開けば「子どもタレント事務所」のオーディション参加者募集の記事がわんさか。でも、こういったオーディションって、誰でも「合格」して登録料やらレッスン料やら何十万も請求されるというウワサを聞いたことがあるんですけど、本当なんですかね? それに「子どもを芸能人にしたい親」を生で見たい! 生後10カ月の娘を持つママライターが、子役タレント事務所に入るためのオーディションに行ってきました!

審査案内の時点で無理難題!

 0歳児が応募できるオーディションを開催している事務所は3つ。まずは赤ちゃんモデル事務所Sに申し込みました。ここは子役を中心にした大手の老舗事務所で、有名子役も多数輩出。鈴木福や谷花音などスーパー子役が所属する事務所Tに比べると若干地味な印象ですが、赤ちゃんモデル部門だけでなく、子ども劇団やダンス部門も充実しているので、成長に応じてつぶしが利きそうな堅実さが親としては魅力的です。

 そんなS事務所から「お子様が実際にお仕事していただけるかどうか、環境順応力の審査として当社スタジオにてプロカメラマンによるカメラテストを行いますので、ご来社ください」と審査案内が郵送で届きました。当日の注意事項を見ると「お子様のご機嫌が良い状態でお越しください」と無茶すぎる“さかもと未明”な要求が。しかも「赤ちゃんのお顔に湿疹、アザ、血管腫等が見られる場合はお帰りいただく事がございます」って……。さらに「※お母さんは絶対にブーツを履いてこないでください」と、ホラー映画の「※一人では絶対に見ないでください」みたいなこちらの気をそそる謎の一文が……。 一体、ブーツを履いていくと、どんなことが起こってしまうんですか!?

審査タイムで怒涛の質問攻め!

 港区の審査会場に一番乗りで着くと、女性スタッフたちがハイテンションでお出迎えしてくれました。通されたオーディション専用の部屋には椅子がたくさん並んでいて、部屋の目立つところには、オムツや赤ちゃんグッズがズラリ。そうか、あれもこれもモデルはこの事務所所属の赤ちゃんなんだ、スゴイな~って思ったけど、「自分の子がオムツのパッケージに印刷されたい」という気持ちがさっぱりわからないッス! だって、あれ最後ぐちゃぐちゃに丸めて捨てるじゃないですか!

 すると、フォーマルドレスを着た赤ちゃんを抱えた夫婦が入ってきました。ショッキングピンクのフリルに赤ちゃんが埋まってる、みたいなすげぇドレス! あんなの着せてこなきゃダメなの!? しかし、スタッフが目を丸くして「おめかししてきたね!」と言っていたので、ドレスを着てくる赤ちゃんは珍しいということがうかがえました。ホッ!

 そこまでは和やかムードだったのですが、審査開始時間になると雰囲気が変貌してきました。女性スタッフ3人が代わる代わる私のとこに来て、「目の赤いのはなんですか?」「それは消えますか?」と聞いてくるんです。そういえば娘は、生まれた時から右のまぶたにうっすら赤い部分があるんですよ。これは、産道を通ってくる時にがんばってギューって目を閉じたからできるサーモンパッチ。いずれ消えるんで、まったく気にしてませんでした。もしや、審査案内にあった「赤ちゃんのお顔に湿疹、アザ、血管腫等が見られる場合はお帰りいただく事がございます」って、うちも該当するわけ!? まさかの強制退場!? つーか、こんなことでうちの子を判定するんじゃないよ! って思ったけど、確かにオムツのCMの赤ちゃんのまぶたが赤かったら、視聴者は心配になりますよね……。サーモンパッチは赤ちゃんモデルにとって致命傷。赤ちゃんの勲章なのに……! と、ここで木村多江似の女性が赤ちゃんを抱えてやってきました。遅せえ~よ!  

■地味or派手しかいない親たち

 木村多江似の赤ちゃんは、服も顔も地味。うちの子と同じ感じで親近感です。だけどフリル埋まり赤ちゃんのお母さんは、ガタイがよくってサイケ柄の派手なワンピを着て、パーマロングのプリン頭でいかにもギョーカイママっぽい! 旦那さんも帽子に眼鏡でキメてて、なんか鮎川誠ってカンジ! ママ同士はお互いチラ見はするものの、会話を交わす暇はありませんでした。
 
 それにしても、やっぱりこの鮎川夫妻みたいな感じの親が、子役の仕事場には多いんだろうな~、と思ったんですけど、実はそうでもなさそうなことが、この後の時間でわかったのです……。

■カメラ審査で「ブーツ禁止」の意味がわかった!!

 まさに役者がそろったので、いよいよカメラ審査開始。ブーツを履いてきちゃいけない理由はここ! スタジオは土足禁止、撮影スタッフたちがせかしてくるので、ブーツなんか脱いでらんない雰囲気。椅子に座った娘を手で支えるのに必死になっていると、「お母さん、口なおして!」と言われ「へっ?」と見てみると、娘が下くちびるを上のくちびるで隠していました。こんなの直したことないからモタモタしてたら「口なおして!」って大きい声で言われるので、ヒイイ……って青ざめながら娘のあごを押しました。しかも「笑わせて!」とか言うんですよ。無理だよ! 「う~ん、お母さん頼りないねえ」な空気が充満したところでカメラ審査終了! 

 鮎川夫妻も木村多江似も撮影を終え、次は「赤ちゃんモデル・タレントとしての心得」ガイダンスが始まります。S事務所所属の子役出演の有名CMを見るのですが、鮎川妻が「ほ~ぅ……すご~ぉい……はぅ~……」といちいち感嘆の声を上げるのです。そうか、芸能界を目指している人にとっては、オムツパッケージもステイタスなんだなあ。

 ここでおもむろにスタッフから、「実はみなさんが入場された時から審査が始まっていたのです」といやな宣告が! 「肌がキレイ」とか「いつもご機嫌」など、赤ちゃんの素質と同じくらい大切なのが「母親の挙動」とのこと。母親が現場に連れて行き、全ての管理をするので「テキパキ動ける」「時間を守れる」「服装が地味」なことが要求されるというのです。派手な服装がダメなのは、「あくまで赤ちゃんが主役なので、母親は黒子に徹するべし」という意味。美空ひばりや宮沢りえなど、“ステージママがスターを作る”という伝説をカン違いしたミーハーなお母さんに現場が荒らされる、みたいなことが多いのでしょうか? 「いくらお子さんががんばっていても、お母さんが現場監督に口を出してしまって、もうお仕事が来なくなるという場合もあります」とか、「母親は出しゃばるな」ということを遠まわしに何度も言っていました。「実は審査表をつけさせていただいてました」と言って、私と鮎川、木村3人の素行を細かくABCで分けた通知表みたいのをヒラヒラさせるスタッフ。トロい、派手、遅刻、で3人とも落第点じゃないですか?
 
 無理そうな人にも別の道が用意されています。「当事務所に登録したあとのレッスンについて」の説明では、「親子二人三脚でレッスンをこなすことにより、親子のコミュニケーションがとれ、自立心の確立と非行の防止に役立ちます」とか言い始めました。さっきまで「撮影に口を出すお母さんは『使い勝手が悪い』と現場で嫌われます!」とか言ってたのに、急にお客さん扱い。S事務所のオーディションに受かって13万円(年間)ほど払うと、レッスンを受けたり、CM等のオーディション情報が得られます。働くのはこっちなのに、お金を払うのもこっち♪ 合否は後日郵送でお知らせ、とのことで、オーディションは終了。

 3日後、うちの子にも合格通知が! 「初年度費用134,400円」を1週間以内に振り込むように、って書いてあります。早急~! 振り込まずに放っておいたら、「登録するのかしないのか、しない場合でも、お知らせください」と留守電に入っていて、そのあと何度かかかってきたのですが、それでも放置していたら、年を越しても「登録するんですか、しないんですか」と留守電に入ってました。猶予、長っ!
(田房永子)

「ほ~ぅ……すご~ぉい……はぅ~……」

しぃちゃん

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