[女性誌速攻レビュー]「日経ウーマン」2月号

夫の存在感ゼロ! 「日経ウーマン」超人ワーキングママの充実した日々

2013/01/17 16:00
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「日経ウーマン」2013年2月号/日経BP社

 さまざまな新連載がスタートしている「日経ウーマン」2013年2月号(日経BP社)、注目すべきは「佐藤佳菜子の賢い女子のオシャレLesson」です。記念すべき第1回は、「まじめな印象の白シャツももっと楽しく着こなせる!」と銘打って、白シャツの肩の上に抹茶色のニットカーディガンを羽織るという「石田純一先生リスペクト」としか思えないステキなコーディネートを提案しています。一周まわって最先端ファッション……なのかも!

 そして1年ぶりに表紙&インタビューに登場した竹内結子は、なぜかぼさぼさのロングヘア、寝間着のような白っぽい上下という出で立ちをさせられて、今にもお得意の幽霊役ができそうな雰囲気に……。「日経ウーマン」=仕事もプライベートも真面目に頑張るけれど、今いち垢抜けない雑誌という位置づけは、今年も変更なしで大丈夫そうです!! 「貯め方&備え方」「時間術」「学び」「マナー」等々、お馴染みの見出しが並ぶ特集記事を、早速チェックしていきましょう。

<トピックス>
◎私が変わる!新★習慣
◎毎日が充実!働く女性の時間術
◎最強の開運生活&パワスポ2013

■ポジティブ思考強化の落とし穴

 「2013年新しい自分に!」「女子力UP」「常に笑顔で」「なりたい私になる」等々、これでもかとポジティブな単語で埋め尽くされた大特集「私が変わる!新★習慣」。今回取り上げたいのは、「読者が挑戦!私が変わる☆2週間メソッド」コーナーの中の1つ、「ポジティブ思考プログラム」なるものです。

 そのほかのプログラムが、「節約&貯め」「脱・ダラダラ」「女子力アップ」と、「日経ウーマン」的な上昇志向を体現しているのに対して、「ポジティブ思考プログラム」はメンタルトレーニングであり、「どんなことも前向きにとらえられるメンタルを作り上げよう」と、その目的もはっきりしません。このプログラム、方法は簡単で、「1日に2分間瞑想をする」「誰かを励ます、もしくは褒める電話かメールをする」「1日10分以上体を動かす」「自分にとって『有意義だった』と感じる事について文を書く」「その日の夜、『ありがとう』と思ったことを2~5個リスト化する」という5つの項目のうち、「やりたい」と感じたものを1日1つ以上行うだけ。

 このプログラムに挑戦した読者は、開始前に、「キャリアアップのため、英語や法律を独学で勉強していますが、続きません。続かない理由は、おそらく『人より出遅れていること』を意識しすぎて、ネガティブになっていることだと思います」と語っています。この方は、瞑想や運動、「ありがとうリスト」の作成を経てプログラムを終了し、「『ありがとうリスト』は読み返すと元気になるので、これからも続けます!」とポジティブ思考を習得されたようですが、プログラム中もプログラム終了後も、当初の目標であった英語や法律に関する資格の取得や、そのための学習の話題が、まったく出てこないのが気になりました。この人、ポジティブ思考だろうがネガティブ思考だろうが、なんだかんだ理由つけて勉強しないのでは……? 2週間のプログラムでなれる程度の「新しい自分」の限界を知った本特集でした。

■ワーキングママの夫よ、掃除でもしろ!

 今月号の付録「一生お金に困らない!『貯め方&備え方』ガイド」のように、独身の働く女性をターゲットにした特集のイメージが強い「日経ウーマン」ですが、「毎日が充実!働く女性の時間術」特集には、「忙しいけれどプライベートも充実!ワーキングママの24時間管理術」というコーナーがありました。このコーナー、「プライベートも充実!」「子育てをしながら仕事も楽しくこなしている」等の煽り文句がついているのですが、「日経ウーマン」的「充実」したワーキングママの生活とは、いったい、どのようなものなのでしょうか。

 見開き1ページ目に、営業・宣伝・経理それぞれの仕事をこなす3人のママのタイムスケジュールが掲載されているのですが、3人の共通点は「残業なし」であること。しかし、食事の用意・保育園の送迎・子どものお風呂や掃除など、思いつく限りの家事をこなし、家でも仕事のメールチェックを行い、早朝や通勤中に自分のプライベートタイムを確保(といってもやることは資産運用や資格の勉強)する彼女たちの生活には、「充実」というより「うわあ大変そう……」という印象しか持てません。

 腑に落ちないのは、いずれのママのタイムスケジュールでも、夫が家事を分担している様子がまったくないこと。夫について言及しているのは、営業・山本彩乃さんの「21:00 夫とコーヒーを飲んで一息」という箇所のみとなっています。実は曜日ごとに家事を分担していたり、もしかしたら単身赴任で別居中だったりするのかもしれませんが……存在感なさすぎだよ、夫。コーヒー飲んでる暇あったら、山本さんの代わりに掃除でもしろよ、夫。

 男に頼ることなく自立して生きていくという「日経ウーマン」イズムにかかると、描かれるワーキングママ像も、仕事に全力、あらゆる家事育児を1人でこなし、さらにスキルアップも目指す超人になってしまうようです。スキルもなく仕事に行き詰まり、自分のことで手一杯になっている独身女子は、ワーキングママの時間管理術を見習うどころか、私には無理だ! と尻込みしてしまいそうです! 日本の少子化が加速しそうです!

 さて、超人ワーキングママの凄さを見せつけられた後にたどり着いたのは、「上手な『手抜き力』で、仕事をスピードアップ!」のコーナー。なんでも「仕事は80点を目指す」「Q(quality=品質)・C(cost=コスト)・D(delivery=納期)を意識して仕事をする」「タイムリミットを決め、時間が来たらやめる」とありましたが、これ、手抜きじゃないどころか、バランス感覚と見極めの能力が必要とされており、かなりハードルが高いテクニックな気がします。手を抜くのにさえ手を抜かせてくれない……そんな「日経ウーマン」の教えに振り落とされない人だけが、超人ワーキングママのような「充実」を手に入れられるのでしょう。

■ウーマン読者の恋愛テクは「おまじない」?

 ところで、新年といえば、神社に初詣でしたり、一年の運勢を占ったり、スピリチュアルと縁の深い時期。基本的に努力で未来を切り開いていく「日経ウーマン」も、「開運」や「パワースポット」という言葉には目がありません。今月号では、「最強の開運生活&パワスポ2013」という特集が巻末を飾っているのですが、「パワースポット」をわざわざ「パワスポ」と略すこだわりも、あらゆる無駄を省く節約志向の本誌ならではといえるでしょう。「開運アドバイザー」や「手相芸人」「スピリチュアルセラピスト」など、謎めいた肩書きの専門家たちが入れ代わり立ち代わり登場して「2013年を明るく、楽しい毎日にするための情報」を伝授してくれます。

 「スッキリすれば運が開ける!開運☆整理整頓術」では、「年末に大掃除をしたのに、もう散らかってしまったという人もいるのでは? しかしそんな部屋では開運生活とは縁遠くなる」と、耳の痛くなるような小言をチクリ。それでも整理整頓が億劫な人は、前出の大特集の「仕事が早い女性たちの、時間術&机を拝見!」のコーナーを見て、環境と作業効率が密接に結びついているということを再確認し、自身の生活環境を悔い改めることができますよ!

 ちなみに、「開運アイテムで幸運GET!」のコーナーは、「合コンや飲み会で注目されたい→揺れるピアスを着けて参加」などのありがちなモテテクニックや、「好きな相手からまめに連絡が欲しい→相手の直筆のメモや手紙を枕元に置いて寝る」などの小学生ばりの恋のおまじないが満載でした。この記事を真に受けておまじないを実践した読者からの報告が、再来月の投稿欄に掲載されるかもしれません!

 相変わらず、キャリアや節約に全力投球で隙がないけれど、ファッションや恋愛には疎く、張りきりすぎて空回り……というギャップがそそる「日経ウーマン」でした。来月の予告を見ると、なんと、なんと、「心を癒やす『ひとり時間』」という特集があるようです。「いつも全力投球」に疲れ果てたウーマン読者たちが、全力で癒しを求めて購入するであろう来月号を、筆者も今から指折り数えて待ちたいと思います!
(早乙女ぐりこ)

最終更新:2013/01/17 16:02
『日経ウーマン』
「日経ウーマン」の処女処女しさよ
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