[官能小説レビュー]

就職難がテーマに!? 官能小説的就職活動は、身体を張ってナンボ

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『写真館』/幻冬舎アウトロー文庫

■今回の官能小説
『写真館』吉沢華(幻冬舎アウトロー文庫)

 官能小説を読んだことのない人が、「官能小説」と聞いて、パッと思い浮かぶシチュエーションは、だいたい決まっていると思う。人妻モノ、痴漢モノ、SMモノ……その中でも、官能小説的職業と言えば、即答できるのはナースと教師くらいではないだろうか?

 数えられる程度のありきたりなパターンしか存在しなかったのは、昔の話。昨今の官能小説には、実にさまざまなジャンルやシチュエーションが登場して来ている。

 今回ご紹介する『写真館』(幻冬舎アウトロー文庫)は、女子大生の就職活動がテーマとなっている。就職氷河期の現代では、履歴書に貼る写真1つも採用を左右する大きな要素となる――そんな一般的な就職活動から一歩離れた、“官能小説的就活”とは、いったいどんなものだろう?

 主人公の繭子は、大学の教授に紹介された、美しい証明写真を撮ることで定評のあるカメラマンに出会う。

 美大に通う辻繭子の第一志望は、放送局の美術部だ。一般的な企業ならば、履歴書の写真は無難なものの方が好まれるが、繭子が志願しているのは、マスコミのしかも専門的な職種。人とはちょっと違った写真で目をとめてもらえるよう、売れっ子で多忙なカメラマンがいる写真館にお願いすることになった。

 繭子は、ゼミの教授でマスコミにコネを持つ五十嵐から紹介状を書いてもらい、写真館を訪れた。都内の一等地に位置する写真館「Studio Luxious」は、古い洋館のような建物。扉を開くと、そこには美女アシスタントの可憐が待ち構えていた。

 スタジオの壁には、さまざまな写真が飾られている。くびれたウエストラインの曲線を描いた全裸の写真、猫足のソファに横たわり、性器の手を当てた写真――どれもが官能的だけれど、どこか芸術的で美しく、繭子は魅了されてしまう。

 それらの写真すべてを手掛けたのが、カメラマンの東條。「女性は魔物、いや、ミューズだ」と言い放つ彼は、その芸術品である写真に繭子を収め始める。履歴書用の写真を撮った後は、プライベートのポートレートを撮ることに。東條と、アシスタントの可憐に導かれるままに足を開き、ブラウスのボタンをひとつずつ外して、断続的に響くシャッター音に快感を得てゆく……。
 
 ファインダー越しに見つめられる瞳と、それに応じる被写体とのやりとりは、まるでセックスのようだ。人にじっと見つめられることなんて、実は日常ではほとんど機会がない。唯一あるといえば、男に抱かれている時くらいだろう。

 情熱的な瞳で全身を舐めるように見つめられ、シャッター音に身を任せていると、まるでその断続的な音に愛撫をされているような気分になるのかもしれない。カメラ越しの疑似セックスだけでは足りなくなり、可憐と東條の逢瀬を目撃した繭子は、東條とも関係を持つことになる。

 繭子の就活のベースとなるのは、“女”をフル活用すること。教授である五十嵐に抱かれ、マスコミへのコネを得た。そして、第一志望である放送局の専務である田中との面談でも、誘われるままに股を開き、行為に応じる。

 「女であること」そして「若いこと」、それだけしか強みのない繭子が、第一志望である放送局の美術部に内定できたのは、身体を張ったから――それも、3人の男に。そんな結末に、官能小説界での就職活動とは、まさに“身体を張ってナンボの世界”であると感じる。

 官能小説の世界は、読者に、「でも現実ではあり得ないこと」と思われがち。しかし、それが「就職活動」という、どこか身近な設定だと、「あれ、もしかしたら、これってアリ?」と錯覚してしまうことも、ないことはないだろう。

 もしこの作品を、就活生が読んだら、どう感じるだろう? 誰に後ろ指を指されても、どんな姑息な手段だろうとトコトン利用して、勝利を勝ち取る繭子の強靭なハングリー精神に、感化されてしまう……なんてこともあるかもしれない。

張れるものがあるだけで上等!!

しぃちゃん



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