[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

「ちょいと待ちなよ、おねえさん」寅次郎なら、さかもと未明にこう言うだろう


(C)安彦麻理絵

 漫画家のさかもと未明さん・国内線飛行機搭乗中に、ギャン泣きする赤子にブチ切れ騒動。ネットで、このニュースを目にして、仰天・戦慄。そして、なんだかどうしようもなく、やるせないような、哀しい気分になった。何故なら私は現在、4歳、2歳、1歳という「かなりやっかいな年頃」の子どもらの育児に日々振り回されているからである。

 事の詳細を手短かに説明すると。今年の夏に、国内線の飛行機に乗った未明女史。そこに同乗してたのが、ギャン泣きの赤子。客室乗務員や母親がいくらあやしても、一向に泣き止む気配なし。それで、我慢の限界を感じた未明女史、着陸準備体勢に入った機内で「もうやだ、降りる、飛び降りる!!」と、出口に向かって走り出したのだそうである。そして、赤子の母親に「ある程度大きくなるまで飛行機に乗せてはいけません、赤ちゃんだから何でも許されるわけではないと思います!!」と、厳しく忠告。羽田に着いた後も、小さい子どもを搭乗させる事に対して激しく意見を申し立て、その後、この航空会社を取材などして記事を執筆。雑誌で発表して、そして今回のこの騒動に至った……というわけである。

 今回、個人的に「この騒動のキモ」だと思った部分は、「母親は、泣きわめく赤ん坊をほったらかしにしてた訳ではない」というところである。母親は別に、赤子をほったらかして、鼻歌歌いながら機内誌を眺めていたわけではなく、客室乗務員も巻き込みながら、必死になってあやしてたわけである(まわりの状況を考えたらもう、恐縮して、赤子と一緒に泣きたい気分だっただろうに)。泣き喚く子どもをほったらかしてたのであれば、「アンタちょっとねぇ!!」と、母親を一喝するのも無理はないが、そうじゃないとなると……なんかもう、「哀しい」、その一言に尽きる。

 それと「赤ちゃんだから何でも許されるわけではない」というくだり。実際、子どもを育ててみてつくづく思うのが、「赤ん坊」という存在は、「ボケ老人」と同じだという事である。なんていうか、頭の中が「あっち側にいってる人」。「赤ん坊」というだけで、世間ではなんだか「……素晴らしく尊い存在」みたいに祀り上げられてるような気がするが、でも、融通の利かなさは、ボケ老人と大差ない。1歳未満の赤子なら、完全に「ボケ状態」、1歳半くらいで「まだらボケ」といった感じだろうか。そんな相手だから「許す」とか「許さない」という以前に、話が通用しないから、こっちが「諦める」、もしくは「腹を括る」しかないのである。

 そして「ある程度大きくなるまで、飛行機に乗せてはダメ」というのも、相当哀しいゴリ押しである。なにしろ、そんなふうになったら、孫と離れて住んでるジジババは、大きくなるまで孫に会えないという事になる。里帰り出産をした人は、子どもが大きくなるまで家に帰れなくなる。親がいきなり危篤になっても、子ども連れでは死に目にも会えないという事になる。

 「ああ、この場に……」私は思った。「この場に『フーテンの寅次郎』がいてくれたら、きっと騒動は丸く収まってたのではないか……?」、そんな突拍子もない思いが、私の頭を突然よぎった。泣き喚く赤子、困り果てた母親、ヒステリックにパニくる未明女史、その対応に追われる客室乗務員、そしてそれらの状況にウンザリする同乗者たち……ああ、この便に寅次郎が乗り合わせていれば……!! 『男はつらいよ』フリークなせいだろうか、寅だったらきっとこうしてたはず!!

 そんな光景が、私の目の前に鮮やかに広がる。

 「ちょいと待ちなよ、おねえさん」

 ヒステリック状態になってる未明女史に、おもむろに話しかける寅次郎。

「アンタも小さい頃には、この子みたいに、泣いておっかさんを困らせた事があるんじゃないかい?」
「な……なんなのよ、アンタ一体!?」
「忘れたって事はねぇだろう、え? 泣き止まないアンタを背中におぶって、おっかさん、子守唄を歌ってアンタの事、あやしてたんじゃないのかい? 赤とんぼがパァ~っと飛んでる夕暮れ時にさ……。アンタ、クニはどこだい? 故郷のおっかさんは元気にしてるのかい?」

 たたみかけるように未明女史に語る寅次郎……そんな話につい耳を傾けているうちに、うっかり、おっかさん&己の子ども時代を思い出し涙ぐむ未明女史、ついでに、客室乗務員やほかの乗客たちも涙ぐんで、気が付いたら、あれだけ泣き喚いていた赤子はいつのまにやらウトウト……。

 そんな風になったりはしなかっただろうか……寅次郎マジック。この飛行機に、もしも「とらやのおばちゃん」も乗り合わせていたら、きっと、忌々しい顔で未明女史の事を「いやな女だねぇ、あんな、1人で育ったみたいな顔しちゃってさ!!」と言ってたんじゃないかと思う。それを聞いて「おいちゃん」は、「ほっとけ、ほっとけ、あんなヤツはロクな死に方しねぇ」と、そんなふうに返答してたはずだ。

 これがもしも(なんだか、ドリフの「もしものコーナー」みたいになってきたが)、もしも『裸の大将』が乗り合わせてたら、一体どうなってただろう? 厳しい口調で母親に詰め寄る未明女史。そこに、もっそり、オズオズと歩み出た、芦屋雁之助扮する山下清。握り飯片手に、口角にご飯粒をつけた顔で

「……あ……赤ちゃんとお母さんが、かわいそうなんだな……」
「な……!! なんなのよアンタ一体!!」

 余計に未明女史をキレさせてしまいそうである。

 ほかには。もしも『座頭市』が、この問題の便に乗り合わせていたら……(座頭市フリークでもあるんです……)。ヒス・パニック状態になって、周囲の迷惑もかえり見ず、出口まで走り出す未明女史。そんな彼女の足元に、市がいつも手元に携えてる「仕込み杖」、あれを未明女史の足に引っ掛けて、女史をすっころばしそうな気がする。無様にひっくり返った未明女史を見て、彼女にドン引きしていた同乗者たちも、思わず「プフフ」っと吹き出す始末。それに対して「キッ!!」と鋭く睨みつける女史。そして、ツカツカと市の前に進み出て、

「ちょっと!! 何なのよアンタ!! こんな恥かかせて、タダですむと思ってるの!?」
「……ええ?? いやぁ、あっしは見ての通りの『目◯ら』でございますからねぇ、ゲヘヘへ……」

 そんなふうに、下卑た笑いを浮かべる座頭市の姿が目に浮かぶ。そして

「赤んぼなんざぁ、泣くのが仕事でございますから」

 こういう「茶番劇」って、いくらでも妄想できてしまうから、楽しすぎる。

 ところで、小さい子ども3人を電車に乗せる、それはまさに地獄絵図さながらの有様である。常に周りの方々に恐縮しまくりで、現地に着いた頃には、疲れとイライラで怒り爆発、一体自分は何のために外出してるのかわからなくなる時が、多々ある。そんなふうだから、私は子どもとの外出が大嫌いだ。

 でも、時々、電車の中で「がんばってるわねぇ」と、声を掛けてくれる人がいる。「大変よねぇ」「あなたエラいわよ~」、そして、ごくたまに、そんな子どもたちの相手をしてくれたり、微笑んでくれる人もいる。ギャーギャーうるさくて、落ち着きないのを我慢してくださってるだけでもありがたいのに、そんなふうに優しく接してくれるなんて、それって、本当にすごい事である。ありがたくて、本気で泣きそうになる。だから「ああ、私も!!」と心底思う。日々、ストレスだの何だので、イライラしっぱなしの私だが、でも、電車とかで、子どもの事でいっぱいいっぱいになってるような親御さんたちがいたら、「大変ですよねぇ~」の一言が言えるような、そんな器のデカい女になりたい、と、思うのだ。

 てなわけで。今回のこの騒動に対する私の「気持ち」は、すべて、寅さんや、裸の大将や座頭市が代弁してくれました。ありがとうございました。

「奥様、お言葉ではございますが……」(市原悦子)

しぃちゃん

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