[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

山咲千里にならないように……中年女が若い女に憧れるなら、客観性が重要だ

2012/11/18 21:00
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(C)安彦麻理絵

 酒を飲みながら考えてみた。日本の女の、3大「だん」。壇ふみ。檀れい。壇蜜。「壇ふみ」は『連想ゲーム』(NHK)、「檀れい」は「宝塚」、そして「壇蜜」は「グラビア」……。

 サタミシュウのSM小説『私の奴隷になりなさい』(角川文庫)が映画化されたそうである。その主演を務めたのが、壇蜜。それで初めて私は、この女性の存在を知った。「あら、主人公の女のイメージにピッタリなカンジ!?」それが、パっと見の第一印象である。団鬼六あたりのSMだと、小向美奈子や谷ナオミみたいな、肉肉しい体の女が似合うかもしれない。しかし、サタミシュウのSMは、壇蜜ぐらいの、そこまでコテコテじゃない女の方がシックリくる。映画の予告編などをみると、壇蜜は、今時のオシャレなSM衣装を難なく着こなしていて、なんとなく「女ウケ」も良さそうである。しかし、何故かそこはかとなく「昭和な雰囲気……」といったらいいんだろうか。「畳」とか「襖」とか「やぶれた障子」が似合いそうな雰囲気を醸し出しているから、なんだか不思議な人である。

 ネットで彼女の経歴を調べてみたら、今現在31歳との事で、「グラビアは若さが売り」という事を考えたら、ちょっと異質である。普通の大学にも行っていたようだが「調理師免許取得」「英語教員免許取得」「日本舞踊名取」「葬儀の専門学校にもいた」などなど、やっぱりなんとなく変わっている。そんなふうだから、「もしや」と思って壇蜜のブログを読んでみたら、案の定。「この人、頭よさそうだ」と、思わず引き付けられるような、気が利いた文章を書いている。なんていうか「ツボを押さえるのがうまい」みたいな、そんな感じなのだ。タレントのブログは大抵「今日食ったもん」とか「今日の私服~」とか、内容がそんなんばっかだが、壇蜜のブログにはそういうネタは見当たらない。「エロ」と「知性」と「サービス精神」が、上手に仲良く同居。まるで「飲みに行ったら、すごくいいホステスにサービスしてもらった」みたいな気分になってしまうような、そんな読後感にひたれるブログなのであった。

 そんなわけで、酒を飲みながら「壇蜜」について色々、思いを馳せる夜……。この人は「グラビアアイドル」とか「グラビアギャル」みたいな、そういう呼び名よりも「グラビアの女性……」(「女性」と書いて「ひと」と読む)そんな肩書きの方がシックリくる。それはやはり「昭和……」みたいな、古い雰囲気を醸し出してるせいだろうか。彼女の顔つきを見てると、何故か「後家さん」という単語が頭に思い浮かぶ。そして、今時の服装……も、いいかもしれないけれど、それよりも「トックリのセーター」(タートルネックではなく、あくまでもトックリ)、そして「地味なボックスプリーツの膝丈スカート」が似合うような気がする。

 そんな衣装で是非、ノーパンでたたずんでほしいと思わせる力が、この人にはある。場所はやはり、「ひなびた旅館」が最適だろう……。「ローカル線の走る線路沿い」っていうシチュエーションも良さげな気がするし……死んだ亭主の仏壇の前」って設定はどうだろう……? そんなふうに、「勝手に壇蜜プロデュース」の夜は更ける。

 ……てなわけで、今、気が付いた。私はどうやら、壇蜜にかなり憧れてるようである。「後家さんエロ」「そして知的」そんな風情が、私のハートにハードヒットしたようなのだ。ああ、できる事なら、今度生まれてくる時は、私も、壇蜜みたいな女に生まれたい……!! その位、今、私は、激しく「壇蜜!!!」なのだが、しかし、あまりにも憧れすぎるのも危険だ。なにしろ「益若つばさに憧れ過ぎておかしくなった、山咲千里」みたいになったら、大変である。中年女が、自分よりも若い女に憧れる時は、「常に自分を客観視しながらホドホドに」が、重要かもしれない。「壇蜜に憧れる、43歳の子持ちの女漫画家」って、字面だけみても、かなりブスでトンマなのだから。

 そんなわけで、肝心の映画の方だが……見たいとは思うのだが、どうも1人で見に行く勇気が、私にはない。(さりげなく「チカンにあったらどうしよう」とか、心配してたりするのであった、こんなトシになっても)で、予告編を見て思ったのだが。壇蜜、やはり、いい仕事してる。しかし。それよりもどうしても、なぜか、ついうっかり「目を奪われてしまう」のが、共演している板尾創路の、顔に刻まれた「ほうれい線」である。他人のほうれい線に、やたらと目がいってしまう、というのは、私の年齢的なものもあるのだろうか。

 頭に残るのは、壇蜜の股間よりも、板尾のほうれい線。バスの中で重々しい顔つきで、バイブのスイッチを入れる板尾……の、グッキリ刻まれた「ほうれい線」、壇蜜を上から目線で見る時の板尾……の、激しく深い「ほうれい線」。主演女優よりも存在感を醸し出すほうれい線って、一体どうなんだろうか?

 「これでは、せっかく勇気を出して見に行っても、板尾のほうれい線にばかり気を取られてしまうのではないか?」……身悶える壇蜜よりも、板尾のほうれい線探しばかりする自分……そんな心配が頭をよぎり、私はますます映画館に行く気をなくしてしまうのであった。板尾のほうれい線には、何も罪はないのだが。

最終更新:2019/05/21 16:26
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