[女性誌速攻レビュー]「美ST」12月号

私たちは踊り疲れたコウメ太夫……「美ST」から聞こえる中年女性の悲哀

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「美ST」2012年12月号/光文社

 「美ST」(光文社)12月号の特集は、「40代の“たるまぬ”努力は美しい!」です。「40代は美しい」でも「たるまない人は美しい」でもありません。「たるまぬ(←もちろん“たゆまぬ”にかけている)努力は美しい」です。ここへ来て原点回帰というか、開き直りというか。思い出してください。私たち日本人は“努力こそ美徳”と親や学校から刷り込まれてきました。たまに「結果がすべて」なんて言う斜に構えたヤツがいますが、やはり結果がどうであろうと、努力が何よりもいちばん美しいんです。日本で美容整形が浸透しないのは、そのせいかもしれません。努力ナシに美しくなっても美しくない。美は結果でなく過程にある。努力、大好きですっ!

<トピック>
◎特集 40代の“たるまぬ”努力は美しい!
◎ママゎ私の美のライバル♪
◎日本の希望です 「働く母は美しい」

■コウメ太夫にクギ付け!

 というわけで、「自然と農業にたどりつきました」と語り出す別天地にたどりついちゃった工藤夕貴をはじめ、美容家などがずらずら出てきて、さまざまな“たるまない努力”の方法を紹介しているのですが、なぜかコウメ太夫(40歳)の企画があるんですよ。コウメ太夫が頭蓋骨をミシミシと矯正するなどの過激な施術サロンを体験する「“激イタ”サロンの『チキショー』判定会」。なぜコウメ太夫なのかというと、「毎日の晩酌と疲れから、顔も体もたるんでむくんだ状態」で、「芸人イチ気持ちがたるんでいる」からだそうです。

 ページの真ん中にドーンと掲載された白塗りのコウメ太夫。あのしもぶくれの顔は、どう見ても私たち中年女子を象徴しているようにしか見えません。塗りたくって塗りたくって塗りたくっても、隠しきれない苦労のあと。おどければおどけるほど、にじみ出る哀愁。施術後の写真は確かに少し引き締まったように見えるのですが、「引き締まったところでどうする?」という根本的な疑問が、心の隙間から見え隠れしてしまう。そう、私たちは、踊り疲れたコウメ太夫。美魔女に踊らされたコウメ太夫なんです。つまり、とにもかくにもコウメ太夫が気になるわけです! 白塗りを落とした素顔は、意外なことにちょっとイイ男でした。スナックのママに食べさせてもらってそうなジャンルのイイ男。ぜひご確認を。
 
■「おばさんは対抗しないで」と母親にいう、おかだ娘

 カリスマ小学生モデルとその母親が登場し、それぞれ使用しているコスメや美容器具を紹介する「ママゎ私の美のライバル♪」という変わった企画が組まれていました。小学生の使っているコスメを紹介されたところで、「フーン」以外に言いようがないと思いますので、主な目的はおそらく「こんなこまっしゃくれた娘の母親はどんな顔が見てみたい!」「こんな自己顕示欲の強そうなババアの娘はどんな顔が見てみたい!」という女の覗き見願望を誌上実現することだと思います。

 最初のページは、12歳の岡田結実(ゆい)さんとその母の祐佳さんが登場。ご存知ですか、ますだおかだの岡田圭右の娘と嫁です。が、そんなことは一切書いてありません。一部報道によると、「親の七光りと思われたらかわいそう」という父親の配慮で隠しているのだそうです。ますだおかだじゃ、誰も「七光り」と思わない気がしますが、いつだって親の心は無駄にガラスのハートなんです。ちなみに、嫁も「90年代に芸人として活躍」とプロフィールに書いてあり(調べたところ、「-4℃」というコンビで活動していた上嶋祐佳だそうです)、「14歳の長男は俳優・モデルとして活躍中」と書いてありましたのでコテコテの芸人一家です。

 岡田母娘のみならず、ほかの2組の母親も、“大手企業社長秘書を経て、ヘアスタイリストと結婚した元VERY読者モデル”、“学生時代に演劇部員”という経歴で、「ステージママはきっと出たがりで派手好きのはず」という読者のいじわるな視線に充分に応える誌面となっていました。よく考えれば、ステージママ=出たがりではなくて、出たがりのママだからこういう誌面に登場してるってことなんでしょうけどね。親の七光りだろうが子の七光りだろうが出たい人は出る。ま、いいじゃないですか。こうした方々のおかげでエンターテインメント業界は成り立っているわけです。
 
■そりゃあ「働く母」ではあるけれど

 ページは前半に戻って、「日本の希望です 『働く母は美しい』」という企画を見てみましょう。仕事と子育てを両立させている美人ママの時短美容法を紹介しています。といっても、登場している4人中3人は会社経営者。残る1人は、佐藤可士和の妻で、夫の会社勤務です。これら肩書きを見た時点で、不穏な雰囲気が漂います。さらに条件を見ると、4人中1人は息子はすでに16歳、残る3人は幼児持ちですが、保育園ではなく、保育園より保育時間がうんと短い幼稚園ママでした。

 平日15時に子どものお迎えと習い事の送迎をする私立学童保育代表(夫はプロ野球選手)。「週2回、ジムでパーソナルトレーナーとのトレーニングは必須。エステも隔週です」と語り、子どもとの公園遊びを日課にしている可士和妻。毎日10時に出社して18時には退社するマタニティウェア販売会社代表。一体これの何を参考にしろと?

 でも仕方がありません。働く母はみんな息つく間がないほど忙しい。そんな中でこのような取材をわざわざ受けるのは、「自社のPRになる」と目論む経営者くらいしかいないんです。それに、今の時代、社長業は「大変そう」と同情されることはあっても、憧れの対象ではまったくありません。昼間に会社を出て子どもをお迎えする時間が取れても、その代わりに責任という重荷を24時間背負っている……ハズ。それでいて、社の顔として美しさを一般社員以上に求められて、取材を受ければストレスリリースだのデトックスだのアーユルヴェーダだのステキな物語をペラペラしゃべれないといけないわけですから、ホント大変だと思いますよ。余計なお世話ですが、チオビタドリンクを差し入れしたい気持ちにさせられました。

 もう「美ST」の何を読んでも、誰が出てきても中年女性の悲哀しか感じられなくなってきました。どうしてこんなに哀しいのかなと思ったら、今月号の「美ST」は全体のトーンが女性週刊誌っぽいノリなんです。ジュニアモデルの母親もオンナシャチョーの暮らしぶりも、大衆目線。第2特集のダイエット企画では、身長147センチ、体重87キロの斉藤こず恵が登場して、一晩で唐揚げを200個食べた、日本酒を1升飲み干したなんて仰天話をしていますし。こういう開き直ったノリは個人的には嫌いじゃないです。でも、「美ST」ってもう少しオシャレ寄りだったような気がするんだけどなあ。違ったっけ?
(亀井百合子)

みんながいじるから、BBA雑誌になっちゃったのよ!

しぃちゃん

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