[女性誌速攻レビュー]「プレジデントFamily」12月号

東大一直線「プレジデントFamily」を成り立たせる、聖母信仰の恐怖

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「プレジデントFamily」2012年12月号
(プレジデント社)

 女性誌レビューにお久しぶりの「プレジデントFamily」(プレジデント社)が登場です。媒体資料によると、読者の平均年齢が男性43.6歳、女性39.5歳、男性の職業は会社員が圧倒的に多く65.8%、女性は52.7%が専業主婦です。さらに半数が戸建を持ち、住居エリアは首都圏が57.7%、世代年収は800万円以上が55%を占めます。スーパーセレブリティとはいかないまでも、そこそこに余裕がある家庭がメイン読者のようです。ヘルメットにゲバ棒振り回しながら「教育! 東大!」と叫ぶような過激なイメージの「プレジデントFamily」ですが、読者プロフィールには「お父さんが読んで、お母さんも読む。お爺ちゃんやお婆ちゃん、子供たちが読んでも面白い。そんな家族の真ん中に置かれる雑誌です」と、まるで一家団欒の中心にあるちゃぶ台のようなことが書いてありました。どっからどうみてもそうは思えませんが、真偽のほどはいかに?

<トピックス>
◎どうすれば、子供は賢くなるの?東大生184人「親の顔」
◎受験も、部活も、恋愛だって充実 「最高の思春期」の迎え方
◎特別付録「頭が良くなる理科ドリル」

実は「ミーハー」なんです

 「プレジデントFamily」といえば、何より表紙のキョーレツさ。無表情でやたら首の長い少年少女のイラストの横で「どうすれば、子供は賢くなるの? 東大生184人『親の顔』」という文字がデカデカと踊るこのシュール。「天才!秀才!逸材!」「何を与え、何をガマンさせれば、自分で考える子になるのか」など、人前で開くには結構勇気がいります。何かと似ていると思ったら、ギャルママ雑誌「I LOVE mama」(インフォレスト)を電車の中で読むのと同じ空気ですね。

 さてさて、先月レビューを書いた「edu」(小学館)が喉まで出かかっても決して言えないあの言葉「どうやったら東大に行けるの?」が、何のてらいもなく出てきちゃうのが「プレジデントFamily」です。今月の特集はまさに同誌の真骨頂とも言える東大ネタ。女性誌における憧れの象徴が「読者モデル」であるなら、「プレジデントFamily」読者の憧れは「東大生の親」です。益若のつーちゃんが着てたあの服が欲しい、あのつけまが欲しいと「Popteen」(角川春樹事務所)読者が願ったように、東大生の親が実践してきた教育法を、いやその生活スタイル全てをマネしたいと思うのが「プレジデントFamily」読者。この辺り、「先生原理主義」の「edu」とは若干異なる点です。

 そう考えて読み進めると、とっつきにくいと感じた「プレジデントFamily」も少しは身近に感じられます。「東大生が育ったお宅を訪問して、彼らが子供だった頃のお話を伺ってきました。ご両親の決めていた子育ての方針、しつけのルール、家族の習慣などから、地頭の強い子供が育つ秘密を探ります」というリードも、「憧れのあの読モのお部屋に潜入! インテリアのこだわり、クローゼットの中身、お気に入りコスメなどから、おしゃれの秘密に迫っちゃいます!!」と読み替えればしっくりきますね。職業モデル(=先生)よりも、身近な成功者である読モ(=東大生の親)のリアルな話を聞きたい。なぜって、私自身がいつか読モ(=東大生の親)になりたいから。いやはや、その実、非常にミーハーなんですよ、「プレジデントFamily」は。

「前のめり、カッコ悪い」の流れがここに……

 続きましては「受験も、部活も、恋愛だって充実 『最高の思春期』の迎え方」を見てみましょう。こちらは今号で唯一「賢い」「一流」「勝つ」などの煽り文句がなかったタイトルです。そうですよね、常に「勝て! 賢くなれ! 東大に行け!」じゃあ疲れちゃいますよね。

 しかし、「プレジデントFamily」に「人間だもの」な癒やしを期待していた私がバカでした。この企画「中学、高校の“難しい”時期には、勉強に集中できない悩ましいことがいっぱい!そんなとき一番近くで見守り、励まし、ときには叱ってみごとわが子を東大に合格させた母親たちが……」。え、ええ? ここでも東大ですか!? 「……母親たちが当時を振り返って語る輝かしい子育ての軌跡」。この企画、まさかの東大母座談会だったのです。

「主人が東大出身で、早いうちから“自分と同じ学校に進んでほしい”という気持ちがあったらしく、息子も自然に東大受験を意識してました」
「うちは小学生時代、主人の仕事の関係で転校が多かったものですから、もう少し落ち着いた環境においてやりたいと考えて、兄弟二人とも中学受験しました。その結果、まわりのムードも手伝って自然に……」
「もともとは東大進学という選択肢はまったく考えていなくて、姉妹2人とも小中高一貫校に入れ、勉強よりも情操教育に力を入れて……」

 などなど、東大母たちの「テメェ、どこ中だよ?」というメンチの切り合いから座談会はスタートします。「明るい肝っ玉ママ」「しっかり理論家ママ」「穏やかな勉強家ママ」「やさしい楽天家ママ」などそれぞれ東大母のタイプは違えど、「子供が自発的に東大を目指した」という点は一致。この「自発的に」というところ、読者ママたちが「うぉぉぉぉ~」と雄叫びを上げながらヘドバンをかますポイントです。その後も

「こちらから『勉強しなさい』と言ったことは一度もありませんし、むしろ逆に『もうそのへんにしておいたら?』と声をかけることもしばしばで」
「(東大を受験したいという気持ちが)生半可な決意ではないことがわかったので、最終的にはこちらも決意を固め『それならもう何も言わない。何があってもお母さんは味方だから』と言いました」

 など、読者ママたちの脳天を直撃する東大生たちの「自主性」と「やる気」。

 小さな諍いなどはもちろんあったでしょうが、恋愛はお休みし、目標に向かってひたむきにがんばる子、それを優しく受け止める母親、盤石な経済的基盤を築く父親。「いやいや男子高校生の性欲ハンパないから。お母さん知らない所でいろいろやってるはずだから」というツッコミも、成功者たちの圧倒的な自信の前ではただただ虚しいばかり。子どもを東大に入れるという「プレジデントFamily」界最高の栄誉を勝ち取った母親たちが一様に繰り返す、「自分は前のめりな教育ママではない」アピール。そしてとどめはこの一言、

「家庭って、お母さんさえ笑顔でいられれば、いい雰囲気を維持できるようなところがありません?」
「一同(うなずく)」

 またこれですか……。「edu」も「プレジデントFamily」も、方法論は異なるものの最終的には「笑顔のお母さんが頭のいい子を育てる」という呪いの一言を突きつけるのでした。

 ギャグのように東大東大を連呼する「プレジデントFamily」にも「いつでも微笑みを絶やさない、明るくてちょっと天然な癒やし系母」というテンプレートが隠されていたなんて。そもそも「家族の真ん中に置かれる雑誌」に「天才! 秀才! 逸材!」なんて書いてあったら普通の子どもはおののくはずですよ。いつも明るくお茶目なお母さんが、夜中に老眼鏡かけて「プレジデントFamily」を読んでいる姿を目撃したら、盗んだバイクで走りだしたくなりますよ。東大一直線コントに潜む、根深い聖母信仰。「お母さんの笑顔」、この一言で東大に入れるのなら、いくらでも笑おうってなもんです。
(西澤千央)

そして子どもは受験パンクの洗礼を浴びるのさ

しぃちゃん



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