「おとなの学校」小山敬子氏に聞く、介護への心の準備(前編)

老後はすぐにやってくる! 親の介護に独り身の老後、それぞれの現実問題

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Photo by Rosie O’Beirne from Flickr

 団塊の世代が65歳を迎え、日本はこれまで経験したことのない超高齢化社会に突入しました。自分の親だけでなく、その親である祖父母もいる。下手すると6人の高齢者を介護しないといけなくなる時代になってきています。子だくさんだった時代、女性が次々と子どもを産んで、育て終わった頃にはもうおばあさんになっていたように、子育てが介護に変わるとはいえ、結果は同じ。親や祖父母の介護が終わる頃には、自分が立派な高齢者になっている……なんて笑い話にもならない現実がすぐそこにあります。

 それでも、親や祖父母たちは年金をたっぷりもらっている世代。それに比べて自分の老後資金はというと、年金はあてにできない。それどころか今の収入をいつまで確保できるかさえ心もとない。結婚できるかどうかもわからない。ましてや、子どもが老後を見てくれるなんて夢のまた夢……考えれば考えるほど、深~い底なし沼にはまっていくようです。

 せめて今のうちにできること、知っておくことがあれば心の準備だけでもできるかもというわけで、認知症の改善に効果をあげて全国的に注目されている“学校スタイル”のデイサービス「おとなの学校」を展開する医師、小山敬子先生にお話を聞きました。

――うちの親は50代でまだ元気ですが、祖父母が続々と介護が必要な状態に突入していまして。先日も、物忘れの多くなった祖母を病院に連れていったところです。これから介護が始まったら母一人では大変なので、できることはやろうかなと漠然と考えているんですが……何をどうしたらいいのかさっぱりわかりません。

小山敬子(以下、小山) サイゾーウーマンから、介護の取材を受けるなんて思いませんでした(笑)。おばあさまは認知症の疑いがあったんですね。認知症の始まりは、身近にいる家族でもなかなか気がつきません。「何か変だな」とか「冗談なのかな」とは思っても、まさか自分の親や祖父母が認知症になるなんて思いませんし、信じたくない。いよいよ「これはマズい」と思って病院に連れて行く頃には、相当症状が進んでしまっています。若年性認知症の場合は40歳代でも発症しますし、60歳代以降なら認知症は十分かかりうる病気です。遅くても85歳を過ぎると、おおむね誰もが認知力は落ちると考えてください。これが人間の現実なんです。

――認知症とはどういう状態なのですか?

小山 認知症の人は、四畳半の世界にいるようなものと思ってください。たとえ見えているとしてもそれ以上の範囲は認識できていないのです。大変なストレスと恐怖感でいっぱいで、記憶もありません。目の前の家族の顔もわからない。だから娘のことを「若いころのお母さん」と思ってしまうんです。「お母さん」と呼ばれたら、「何言ってるの? 私はあなたの娘でしょう」などと言ってはいけません。相手に合わせましょう。「お母さん」と言われたら「お母さん」に、「お姉さん」と言われたら「お姉さん」になる。「ここはどこ?」と聞かれたら説明する……四畳半という小さくなってしまった世界で、安心して過ごしてもらいましょう。「どうしてこうなってしまったの?」などと問い詰めても、親子関係を悪化させるだけ。「わからない」ということを感じさせないのが大事なのです。

――介護が必要になるケースとして、認知症のほかにどんな病気があるのですか?

小山 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害という病気の後遺症で、要介護になるケースも多いですね。手足にマヒが残ったり、言語障害が出たりなど、日常生活を送るのに不自由な障害が残りやすい病気で、50~60歳代から多く発症します。左右どちらかの脳に起こると、反対側の半身がマヒします。特に、脳の左側にある言語脳が侵されると右半身が動かなくなるとともに、思考能力がなくなり、しゃべることもできなくなります。感情はあるのに表現できないので、本人にとっても恐怖感が強いです。イライラするし、ウツ状態になる場合もあります。

 この状態になると、リハビリをするしか状態を改善する方法はありませんね。障害の程度にもよりますが、1カ月から半年程度で病院を退院するので、家に手すりをつけたり、段差をなくしてバリアフリーにしたりなどの改修をして暮らすことになります。

――50代から発症するということは、すでに親を介護する可能性もあるんですね……。我が家の場合、嫌がる祖母を病院に連れていくのにも一苦労だったのですが、「何か変だ、介護が必要なのか」と思ったら、まずどうすればいいのでしょうか。

小山 「認知症かな?」と思ったら、神経科や精神科を受診してください。最近は物忘れ外来のような診療科のある病院もあります。身体が弱って、家事をするのが大変そうだ、お風呂に1人で入るのが危ない、など介護が必要だと思われる時には、市区町村の窓口に連絡するのが一番早いですね。担当課にすぐつないでくれるはずです。どんな介護サービスを受けるかは、ケアマネジャーが居宅サービス計画(ケアプラン)を作ってくれます。

――介護サービスにはどんなものがあるのですか?

小山 介護サービスの形態は、在宅サービスと施設サービスとに分けられます。在宅サービスは、家にヘルパーや看護師などが来てくれる「訪問サービス」、デイサービスやリハビリを中心に行うデイケアの「通所サービス」があります。私たちが運営している「おとなの学校」はデイサービス施設です。一般的には施設に1日滞在して食事、入浴、レクリエーションなどが提供されます。また1週間から2週間程度、施設に宿泊するショートステイというサービスもありますよ。

 施設サービスにも、いろいろと種類があります。入所して最期までいられるか否かで考えるとわかりやすいですね。「特別養護老人ホーム」は常に日常の介護が必要な方が入り、1回入るとおおむね最期まで入っていることができます。「介護老人保健施設」は、家庭に帰ることを目的にリハビリをする施設なので、原則として3カ月から6カ月ほどで退所しないといけません。「療養型病床群」は、長期間の療養が必要な人が入る病院です。「サービス付き高齢者向け住宅」は、バリアフリーで安否確認や生活相談サービスが提供される賃貸住宅です。ほかにも、認知症の人が少人数で共同生活を送る「グループホーム」があります。

――どの介護サービスがその人に合っているのか、わからなくて迷いそうです。でも、最初から施設に入るという人は少ないでしょうから、まずは家で介護をしながら暮らしていくことになりますよね。

小山 そこで別の問題がでてくるんですよ! 半身不随になったからといって、それまで長く一緒に暮らしていなかった娘が同居しようとしても、うまくいくかというとなかなか難しいでしょうね。介護が必要になったといっても、親は一個の人間なんですから、娘の言うことなんてそう簡単に聞くわけがない。でも人間は誰もが年を取り、弱って死ぬんです。ピンピンコロリが理想だと言う人は多いけれど、そうやって死ねる人なんて100人中5人いるかどうか。親の姿は自分の行く道。人生のトレーニングだと思ってケアするしかないですよ。修行というより、トレーニングくらいが気負いすぎなくていいんじゃないかな。

 そしてどうせ介護が必要になるんだったら、いかに最後まで幸せに暮らすかを考えましょう。親は自分を生んで育ててくれました。自分が赤ん坊の時、親はこれ以上のことをやってくれたんです。それを思い出してほしい。いや、自分はやってもらわなかったと思う人も、そうだったと信じることです。

(後編につづく)

100人に5人の中に入れる気がしないから準備!

しぃちゃん

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