[女性誌速攻レビュー]「edu」11月号

「のびのび子育てで東大に」、“必死”を“余裕”で隠す「edu」母

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「edu」2012年11月号(小学館)

 女性誌速攻レビューに「edu」(小学館)が初登場です。「子育ての視界不良がいままでになく深刻な時代です。そんな時代に『edu』は『子育てに日々奮闘する小学生のお母さん』のための雑誌として生まれました。子育てという濃霧の中の航海を安全に目的地に着くためのいろいろな情報をお届けする、小学生ママのための子育てナビゲーションマガジンなのです」(HPの媒体説明より)。「個」が確立されつつある小学生の子どもを持つ親は、「面倒をみる」から「育てる」へ一つの転換を迫られます。しかしなかなかその層に寄り添うママ雑誌は少なく、そういう意味で「edu」はかなり貴重な媒体。それまでママ雑誌が「赤ちゃんカワイイ! 子育てハッピー!」と煽ってきたのに、突然「子育てという濃霧の中の航海……」ですよ。己がタイタニック号のように沈没しないためにも「edu」、しっかりチェックさせていただきます。

<トピックス>
◎花まる学習会 高濱正伸先生の「5分間」集中法
◎ママたちに聞きました ウチの子が言われなくても勉強するようになったワケ
◎連載 手とり足とり 陰山メソッド「テストは細部までこだわって」

「edu」は“先生”が好き

 まず目次を見てみると、「先生」と名のつく方のオンパレードにびっくり。花まる学習会の高濱正伸先生、習慣づけ名人の横藤雅人先生、世界的脳外科医の林成之先生、陰山メソッドでおなじみの陰山英男先生、社会化教育が専門の鎌田和宏先生。「edu」は……真面目です。これら権威たちが「進んで勉強する子に育てる方法」やら「ママのための子育て『育脳』メソッド」やらを、実例を挙げ、時にユーモアを交えながらママたちに語りかけていきます。

 例えば大特集の「花まる学習会 高濱正伸先生の『5分間』集中法」を見てみますと、冒頭に「子どもの集中力は短い。ひとつの学習だけをやらせ過ぎないように」と、いきなりの先制パンチ。「edu」読者は(多分)真面目な方が多いですから、それを見て「ええ! 先生! どういうことなんですか!?」と(多分)たじろぎます。さらに「お母さんの欲が子どもの集中力を奪っている」「お母さんは、子どもがひとつの課題をやり遂げると、つい欲を出して『もう1ページやってみよう』と追加してしまう」と畳みかけるのです。しつこいようですが、読者は真面目ですから己を猛省し「私が……良かれと思っていたことが、あの子を追い詰めていたのかしら」と激しく落ち込みます。そこに「たいして勉強もせず、外遊びばかりしている子が、算数の文章題がけっこうできたりするのも、外遊びで集中力を培っているからなんですよ」「遊びの集中の深い子は、高学年になったときに、勉強に深く集中できるということ」とヒントを与え、(明日から何がなんでも外で遊ばせます、先生……)と読者が決意を新たにしたところでとどめ。「子どもの集中力を育むには、お母さんが精神的に安定し、いつもニコニコしていることです」。この“すべてアンタ次第だよ、奥さん”という禁断の一句で、完全に母親たちは先生の虜。なんですか、この流れるような落としのテクは! 高濱先生の「20数人の生徒でスタートした塾は、現在9000人の規模へと拡大」したという実績はダテじゃありません。

 母親たちをこんなに、一喜一憂させるのも、ひとえにその「先生」(※ただし有名人に限る)という肩書あってのこと。「edu」には“先生モテ”というジャンルがあるようです。

「edu」は“余裕”を見せたい

 「edu」はほのぼのリラックスした写真、子どもの落書き風なぬくもりあるイラスト、情報を詰め込まないゆったりしたデザインが特徴です。同日発売の「プレジデントFamily」(プレジデント社)と比べると、その違いは一目瞭然。「プレジデントFamily」の表紙がかなり高めのテンションで「年収300万からの教育費リッチ大作戦!」と迫ってくるのに対し、「edu」はお母さんが愛おしそうに我が子の髪を結っている写真に、手書き(風)文字でキャッチをすらすら。「プレジデントFamily」の雑誌コピーが“子供を元気にする。親も元気になる”で、「edu」が“ママの笑顔が、子どもを伸ばす”。言ってることはたいして変わらない気がするのですが、「edu」にはとかくアツくなりがちな教育に関して努めて平静でいようとする、余裕を見せんとする気概のようなものを感じます。その辺り、ジャンルは違えど「LEE」(集英社)にも似た匂いを感じますね。

 学者、医者、教育のプロなど「権威」を崇拝しつつ、自分は決して「猛母」ではないと信じたい気持ち。それは例えば「0歳で捨て子、16歳で出産、33歳でおばあちゃんに。画家・しの武さんの、不幸せを幸せに変えるエッセイ」だったり、おむすびでおなじみの福祉活動家・佐藤初女さんの連載(現在は終了し、MOOK化)だったり、風景写真をどーんと贅沢にレイアウトした俵万智のほのぼの短歌エッセイや外国料理の紹介ページなどにも表れています。良き教育、良き子育てとは「心の余裕」にこそ宿る。「edu」の理念はそんなところにあるのではないでしょうか。

 しかし、点数じゃない、順位じゃないと言いながらも、読者母たちから寄せられる質問は「頭を使えば使うほど、よくなるのですか?」「早期学習や英才教育で、頭のよさが決まるのですか?」「習い事は、なるべく多くさせたほうがいいですか?」(「林先生が解決!育脳メソッドなんでもQ&A」より)など「頭の良さ」に特化したものばかり。「勉強していい大学に行け!」なんて、子どもの自主性を重んじない低俗な母親が言うセリフ。「子どもをのびのびと育てていたら、結果として東大に行きました」、これが「edu」母たちの夢見る「濃霧の中の目的地」なのではないでしょうか。

 いかがでしたでしょうか、「edu」。幾重にも積み重ねられたエクスキューズで、その正体を現そうとはしない、なかなか手強い雑誌のようです。いつものクセでいろいろ下衆に勘繰ってしまいましたが、「小学生教育」に関して非常に丁寧に作り込まれており、読めば読むほど味わいのある誌面でした。「edu」母たちは、「良き母」になろうと必死なのです。その「必死」が子どもを追い詰めることもわかっていて、これまた必死に「余裕」を見せようとする。母親たちが潜在的に設定したハードルの高さに驚くこと請け合い。今後とも注意深く読み進めていきたいと思います。
(西澤千央)

“すべてアンタ次第だよ、奥さん”って、おもいッきり生電話の時のみのさんじゃん

しぃちゃん

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