[女性誌速攻レビュー]「SAKURA」秋号

やんちゃモデルと葉山系を生かしきれないママ雑誌「SAKURA」

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「SAKURA」2012年秋号(小学館)

 モデルや女優が子どもを産むたびに「Yahoo!トピックス」にニュース記事が掲載され、「おめでとう☆」「え~、逆算するとやっぱデキ婚じゃん!」「いまはデキ婚って言わないんですぅ、授かり婚って言うんですぅ」というコメントが並ぶ、ここ平和の国・ニッポン。本来ならさして自分に興味のない輩から妊娠日に疑惑をもたれながら、それでも出産後は誌面に載りやすいベビーグッズをリサーチして買ったり、旦那さんとの不仲を隠したりしながら、幸せを振りまくマシーンと化しているのが、ママタレです。そのママタレント・モデルを主役に置いたママ雑誌が「SAKURA」(小学館)。あまり馴染みのない人もいるかもしれませんが、それは季刊誌だから(だと信じたい)。「自分らしく、ママを楽しむ。好感度カジュアルファッション」という手垢まみれの文言は、雑誌を読んだ後にかみしめると、別の意味合いが出てきます。というわけで、早速「SAKURA」の世界へご案内いたしましょう。

<トピック>
◎神田うの流こだわりのママライフ
◎二子玉系×葉山系 ベーシックアイテムで始める“こなれママ”秋物語
◎秋のこなれルール公開

堅気じゃないママたち

 まずは「SAKURA」の基本情報を見てみましょう。同誌媒体資料によると、読者の平均年齢は31.5歳、子どもは4.1歳。平均世帯年収は891.7万円、1シーズンのファッションに使う代金は5万8,960円、子どもにかける費用は2万8,510円となっています。そして読者が一番欲しいモノはマイホーム。同じく30代の子持ち女性の雑誌として王者の貫録を見せている、光文社「VERY」の媒体資料を見ると、平均年齢こそ書いてありませんが、35歳~39歳の割合が一番高く、平均世帯年収は743万円と、「SAKURA」よりも150万円ほど安い。でも「VERY」の特徴は、持ち家率の高さ。58.2%もの読者が「戸建て持ち家」と回答しています。そして最大の違いはこの一文。

「大都市圏のアッパー家庭に育ったVERY世代」(「VERY」)
「育児や家事を楽しみながらおしゃれママライフをエンジョイする新世代ママ」(「SAKURA」)

 「VERY」はアッパー家庭至上主義者。実際の読者におけるアッパー家庭の出身者は全体の1/5にも満たないと思いますが、2代・3代にわたる家柄や○○幼稚園出身ということに価値を置く人たち。ママという“設定”と、ハイソサエティーへの憧れという“思想”は共有しています。

 一方、「SAKURA」は家庭への思い、物語は誌面のどこにも見当たりません。その代わりに意味を持つのがモデル陣のセレクトです。「東京生まれHIPHOP育ち」なZEEBRA氏を夫に持つ中村美和、傷害事件を起こしたこともある荒くれ坊や・柏原崇と結婚・離婚し、サッカーの鈴木啓太と再婚した畑野ひろ子、二児の母であり未婚のシングルマザーである道端カレン、今号は登場していないものの真木蔵人と離婚したHARUKO、モデルではないものの連載を持つサーファー夫と共に写真で登場するMieら。後述しますが、「サーファー」「海」が「SAKURA」には重要なキーワードで、色黒+かなり明るい髪の毛、そして決して平たんではなかった人生経験を持つモデルたちの「堅気じゃない感」がハンパありません。

 しかし、よくよく考えてみると、「VERY」読者といえども「堅気じゃない感」はハンパない。そもそもフツーの家で育った女性が、何代にもわたる名士の家の坊やを手玉に取り結婚することが“異常”。しきたりもわからず姑や義実家とぶつかりながらも、最終的に「ここは私の家」とふんぞり返ることができるのも“異常”。もし本当に「大都市のアッパーな家庭」で生まれ育ったとしても、似たような環境で生き抜いてきたこともこともある意味“異常”。「家柄」「ブランド」という得体の知れないものを相手にしながらお受験を乗り切り、入学したらしたらでPTAやママ友とのマウントを取りながら勝ち上がっていくことも“異常”。「VERY」的な世界を目指す時点で、「堅気じゃない」んですよ。そう思うと、「VERY」読者と「SAKURA」読者は実に近しいところにいる、と思えてくるのです。

うのの長所は何もないところ!

 じゃあ、「VERY」と「SAKURA」の線引きがどこにあるかというと、今号にはその答えにぴったりの人が登場していました。「神田うの流こだわりのママライフ」にご登場の、神田うのです。この人も、娯楽産業のプリンスと言われた夫の男女関係に悩まされた過去があります。ところが、子どもを産んでからはすっかり落ち着き、今回も13万円近くするベビーカーや「baby Dior」の子ども服、時折自分のブランドを交えて大々的に私物を公開し、裕福で幸せな生活を披露しています。

 うのは母になった自覚や食事についても語っていますが、いい意味で軽い。母讃美も、「母になって生まれ変わった私」も、子育ての方針も何もない。ベビー服やベビーグッズの買い物を楽しみ、食事にこだわる姿勢は、どちらかといえば「母になった」という設定を楽しんでいるような気がします。そこが「SAKURA」との共通点。経済的に余裕があり、母という設定があるけど、思想はない。「VERY」にうのの私物が公開された記憶は筆者にはないのですが、たぶん載ったところで、読者は心のどこかで反発すると思うんです。即物的すぎると。物語や上昇志向があるかないか、そこで「VERY」になるか「SAKURA」になるか、分かれるのかもしれません。

「険のないRIKACO」という新たなカテゴリー

 女性誌の楽しみの一つといえば、着回しコーデの設定。読者が憧れて目指すファッション、ライフスタイルが凝縮されています。今号の「SAKURA」には、「二子玉系×葉山系 ベーシックアイテムで始める“こなれママ”秋物語」があり、同誌では二子玉川、葉山が聖地ということがうかがえます。どちらもザ・都心ではないところが特徴。いわく、二子玉ファミリーとは「タワーマンションに住む都会派ファミリー。ママはカジュアルの中にも、リッチ感と上品さとフェミニンの3大要素を死守したスタイルが大好き! ファッションはもちろん、美容や家電のトレンドにも敏感で“自分流”に取り入れる賢さも併せ持つ愛されママ!」だそう。まあ簡単にいえば「全方位愛されママ」って感じですね。一方、葉山ファミリーは「以前は都内在住だったが、海をこよなく愛し、自然の中で子どもを育てたいと地方へ移住。ママは海の香りがする上質なトラッドアイテムが大好き! 自宅菜園やビーチ掃除など、環境問題とも向き合いながらスローな生活を満喫中!」とのこと。こちらは一言でいえば「険のないRIKACO」ってところでしょうか。

 こんなに面白い設定だから、着回しコーデのストーリーも盛りあがる! と思いきや、「家族で休日ドライブ」「娘と公園へ」「おうちでリラックスタイム」と至って普通……。ちょっとアレレなのは、葉山系ママの「都へ仕事の打ち合わせ」。「息子が小学校へ入学して手がかからなくなってきたので、少しずつ仕事復帰! 今日は久々に都(東京)へ打ち合わせのために出て参りました」。出て参りましたって、誰に向かって言ってるの? 東京を都って言うのが面白いんだ? と、なぜだか詰め寄りたい気分になりました。葉山系は特に、ほかの女性誌にはない属性なので、もっと個性をガンガンに打ち出してほしかった。「近所の海へお散歩」はダウンベスト+ロングスカート、「収穫した野菜でLet’s クッキング」も台所でTシャツ+デニム、とフツーすぎるぐらいフツーなんです。ただ、このフツーなのが「SAKURA」の世界観なのか、「意味」を捨てることに徹しているのかと深読みしたくなりました。これが「自分らしく、ママを楽しむ。好感度カジュアルファッション」ということなのか? これが「育児や家事を楽しみながら、おしゃれママライフをエンジョイする新世代ママ」ということなのか?

 繰り返しますが、「SAKURA」の特徴は「葉山系」とそれを体現できるやんちゃ系のモデル陣。イマイチこの2つをうまく生かし切れていないのがもったいなくもあり、ただ実際に葉山系を目指す人・共感できる人は少ないだろうから、ビジネスとして考えると難しいと思う部分もあったり。しかし、やんちゃだった人がオーガニックコットンや自家菜園や海に帰るというのは、なにか生物学的な要因があるのでしょうか。世間という荒波にもまれて「自然派」という海にたどり着くさまは、鮭の遡上を彷彿させ、頑張れ! と思わず応援したくなるひたむきさです。
(小島かほり)

ほんと分からない雑誌だったわ~

しぃちゃん

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