「タレント本という名の経典」

RIKACOのネクストステージは、ヤンチャにオーガニックを布教すること!

2012/09/17 16:00
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『HOME』(RIKACO、主婦と生活社)

――タレント本。それは教祖というべきタレントと信者(=ファン)をつなぐ“経典”。その中にはどんな教えが書かれ、ファンは何に心酔していくのか。そこから、現代の縮図が見えてくる……。

 RIKACOはもう「不遜」じゃなくなったのか……。

 RIKACOを考える時、無粋だとは思いながらも、どうしてもそのことが頭をよぎってならない。『浅草橋ヤング洋品店』(テレビ東京系)での発言もさることながら、RIKACOといえば『ここがヘンだよ日本人』(TBS系)での提言・暴言が多くの人の記憶に残り、世間が持つ「RIKACO」像のひな型成形に大きく寄与しているように思う。それが証拠に、ウィキペディアのRIKACOの項目には、同番組での発言や立ち居振る舞いがギッシリ、それこそ悪事を見逃すまいと言わんばかりに一挙手一投足が書かれている。強気に出る割には意見が支離滅裂、とりあえず過激な発言をすればいいという「女テリー伊藤」的な立ち居振る舞い、形勢不利な場合は長い手をぶんぶん振りまわし眉間とデコにしわを寄せながら話す……などなどRIKACOの人間らしい面を世間では「不遜」という一言で片づけるらしい。

 そう、RIKACOは不遜だった。前夫・渡部篤郎と結婚したのが1993年、27歳の時らしいが、「MCシスター」(ハースト婦人画報社)でモデルを経て、アイドルとタレントの狭間のポジション、そして夜の六本木をうろついている頃から、RIKACOはもう酸いも甘いも噛み分けた「カリスマ主婦」みたいな顔をしていた。「姉御肌」を飛び越えて、存在自体が「カリスマ主婦」。悩み相談をする気などサラッサラーのサラサーティほどもないのに、RIKACOを前にするとアリもしない悩みをねつ造させられる“悩み自白マシーン”のような圧力。「落としのRIKACO」として警視庁捜査一課にでも入ってくれないかと思うほどの、「アタシ、何でも受け止めるよ」感。相談者に寄り添うのではなく、上からの物言いで自己をカリスマに押し上げる演出力。若くしてそれを手に入れていたRIKACOは、『ここヘン』『怪傑熟女!心配ご無用』(TBS系)など、至る場所でもう唾をぺっぺと飛ばしながら叱咤激励していたんだ、自分以外を。

 そんなRIKACOが第一次マイナーチェンジを始めたのが出産後。そして第二次が離婚だった。人生の大きな節目を乗り越え、シングルマザーとして芸能界を渡り歩くRIKACOは「哀川翔の隣人」というブランドと引き換えに(別に引き換えにはしなくてよかったのだが)、「不遜」を削り落としていった。

 昨年秋に発売された『HOME』(主婦と生活社)は、「スタイルを維持するための食生活、実践している美容法、家庭で作るレシピ、母親としての子育て観、ファッションへのこだわり、私服スナップ、お気に入りのインテリア、愛用品など、 RIKACOの“ふだん”がたっぷり詰まった1冊です」とあるように、彼女の魅力を多角的に検証している。その中でRIKACOは、

「子育ては自分自身が子どもと一緒に幸せに育っていく 神様が与えてくれた最高のチャンス。そう思い始めてから、私の生活はすごく変化しました」

 と自身のマイナーチェンジを語っている。確かにこの本では、RIKACOのプロポーションを支えるローフードレシピやオーガニック商品、エクササイズも紹介されている。ヨガに心酔し、「朝と夜、ベッドで瞑想する」らしい。まったく必要ない情報だが、寝る時は「下着はいっさいつけないようにしている」という、とっておき情報もぜひお伝えしておきたい。

 話を戻すと、現在のRIKACOは六本木でブイブイ言っていたことが想像つかないぐらい、脂身の少ないパサッパサ~な日々を送っていることがわかる……が、本当にそうだろうか。RIKACOのブログには、Zeebra&中林美和夫妻との交流、EXILEとの新年会(同じ事務所だから)などの写真が掲載されている。元格闘家の魔裟斗が現役時代にテレビのインタビューで、試合後の解放感も手伝って2~3日遊びまわるというエピソードを話していたのだが、その遊び仲間としてRIKACOを挙げていた。なるほど、まだまだヤンチャな人々との交遊は続いていたのだ。

 実際にブログに寄せられるファンのコメントも「EXILE魂での尾崎豊の話もRIKACOさんならではのいいお話でした」「私もお姉サマを目指してがんばります!」「RIKACOのブログってさぁ、ホントにマジって感じでぇ、読む度に『ふ~ん』とか『そうかぁ』とか考えさせるんだよねぇ」と、RIKACOに怒られたい人・鼓舞されたい人・答えを教えてほしい人で溢れている。そうなのだ、RIKACO自身もまだまだ肉汁溢れるオピニオンキャラでいたいし、求める人もいる。しかし魑魅魍魎の芸能界における「お説教枠」は満席。美輪明宏と勝負できるこもった声もなければ、和田アキ子ほどの握力もないし、野村克也の四重アゴにはかなわない。しかし、あるじゃないか! RIKACOにはオーガニックなスローライフが!

 その昔、ヤンキーにサブカルチャーと触れる機会を与えたのが小泉今日子と言われたが、RIKACOはヤンチャにオーガニックを教える伝道師になるべきなのだと思う。ヤンチャたちの夜遊びの友としてオーガニックタオルの柔らかさを、イライラしてカツアゲしたくなった心を癒やすアロマキャンドルを、「ババア、こんなもん食えるかよ!」と母親に暴言を吐いていたことを後悔するようなローフードの薄味を教えてあげてほしい。

 筆者の生活圏5m以内の話で恐縮だが、「RIKACOさん、マジかっこいいよね~。あの足とウエストの細さは憧れだわ~」と話す友人たちの共通事項は、深夜のファミレスで頬杖つきながら「ヤンチャしてたあの頃が、アタシの人生のピーク」と話すことだ。まだまだ人生捨てたもんじゃないってっことを、どうかRIKACOから伝えてほしい。無論オーガニックの良さも。サラサーティ(おりものシート)のCMにもチャームナップ(尿漏れ)のCMにも出演し、すべての女のダダ漏れを受け止めてきたRIKACOの包容力は、ヤンチャ族さえ沈みがちな世知辛い今こそ求められている。
(西園寺のり子)

最終更新:2019/05/17 20:57
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