[女性誌速攻レビュー]「家庭画報」9月号

夜会巻きは盛りで勝負! 「家庭画報」の格調はニワトリのトサカと同じ原理

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「家庭画報」2012年9月号(世界文化
社)

 突然ですが、みなさん「家庭画報」と聞いてどんなイメージをお持ちですか? 「茶道、華道の家元が出てくるような、一般家庭とはかけ離れた世界」「能や歌舞伎のお堅い話ばかり」などと敬遠していませんか? 確かに「家庭画報」は硬派な文章と美しい写真で“親しみやすさ”とは遠い存在かもしれません。ただ、見方を変えれば十分に面白みのある雑誌なのです。読みもしないなんて、もったいないオバケが出てきますよ。今月号は特に“面白い”企画が多い。ぜひ自分ならではの楽しみ方を見つけてください。

<トピック>
◎伊勢・紀伊の海から――海老料理の極楽
◎お洒落が際立つ「眼鏡の装い」
◎主賓として出席する結婚式の新提案 正礼装のヘアスタイルで品格ある美しさを

■全海老好きに贈る24ページ

 今月号の大特集は「魅惑の九州へ行く」。ただただ、風光明媚な景色や観光スポットを紹介するだけではなく、日本画家・平松礼二氏(月刊「文藝春秋」の表紙など)夫妻の「スケッチ旅行」として紹介したり、エッセイスト平松洋子氏と五島列島を訪れ、彼女の繊細な感性が見つけた島の魅力を紹介したり、作家の青木奈緒氏が宮崎県の高千穂に伝わる幽玄な夜神楽を訪ねたりと、ひと手間もふた手間もかけた特集となっています。そちらは正面から楽しめる紀行なので、ご堪能ください。

 筆者が注目したのは、「伊勢・紀伊の海から――海老料理の極楽」という企画。まずは志摩市・伊勢市のホテルやレストランの料理長が、とっておきのレシピを伝授しています。「志摩産伊勢海老のロティ シャテーニュ風味 伊勢海老ソース」と得体の知れない名前に気後れしつつ、「作ってみよう」と前向きにレシピを読んだのですが、「シャテーニュ60グラムって書かれても、シャテーニュ自体が分からないのよぉぉ」「セップ茸ってなに? え、ポルチーニ茸のこと? だったらポルチーニ茸と言ってよぉぉ」と早くも挫折の予感。筆者のように『キユーピー3分クッキング』(日本テレビ系)で満足している人にはちとレベルが高い。

 レシピで挫折したからといって、あきらめないで~! ページをめくると、なんと尾鷲市長の岩田昭人さんが海老の種類・食べ方を教えてくれます。なんでもこの岩田氏、「公務に支障がない限り、毎朝尾鷲の魚市場に立ち寄り、その日に水揚げされた魚をチェックするほどの魚好き」だそう。まさに行政を司るさかなクン! その説明も、赤座海老は「“海老の女王”の名がふさわしい。上品な甘さを楽しむなら刺身やにぎりで。塩焼きすると甘味が増す。パスタも絶品!」など、端的で調理をする人にはありがたい情報。ただ、10種類の海老が並ぶ有様は、学研の図鑑となんら変わりない! 「家庭画報」さんの本気に感服です。さらには伊勢海老の剥き方を写真で紹介したり、「おいしい海老を訪ねる旅&お取り寄せ情報」として海老地図なるものまで掲載したり。“やると言ったらとことん”の「家庭画報」の真面目を感じてください! Don’t think. Feel!

■和泉節子は正しい「家庭画報」の住人だった!

 良家ソサエティーの流行を垣間見ることができる、というのも「家庭画報」の1つの特長です。例えば、メガネ。いまは下界では、若い女性の間でまだまだ“アラレ眼鏡”と呼ばれる大きめの黒ぶち眼鏡が定着して「ハズシ」のアイテムとなっていたり、パソコンの青色光を軽減するための眼鏡がヒットしていたり、フレームが軽くてシンプルなものが人気を得ているようです。が、「家庭画報」では違う。「お洒落が際立つ『眼鏡の装い』」を見てみると、テンプルが花柄とハート柄になっていたり、テンプルに有田焼のプレートがはめ込まれていたりと、ド派手なものがはやっているよう。モデル女性が渋いグレーの着物に、有田焼のフレーム+薄紫色のレンズの眼鏡をかけた写真なんかは、「姐さん!」と呼びたくなるド迫力でした。

 続いてはジュエリー。「洗練を極めた日本のジュエリー」で紹介されている商品のデザインが圧巻です。大粒真珠にプラチナの曲線をあしらったデザインや琳派をモチーフにしたペンダントブローチなど華美な装飾が素晴らしい。と同時に、コーディネートにおける「足し算引き算」のセンスが問われそうです。もし「足し算」ばかりしていたら、和泉節子になりそう……。

 さらに「家庭画報」読者世代が頭を悩ます問題、結婚式でのファッションを取り上げた「主賓として出席する結婚式の新提案 正礼装のヘアスタイルで品格ある美しさを」も、洋装(昼の披露宴、夜の披露宴)・和装・親族の和装などさまざまなケースに分けて紹介し、大充実の内容。各ページのキャッチフレーズを読んでいるだけで、いろいろな駆け引きが感じられます。主賓の和装の場合、最も格が高い黒留袖は親族の装いなので、華やかさとお祝いごとへの慶びを表すために「『吉祥文様の色留袖』が最適」とのこと。逆に親族の場合は「控えめに格と家柄を表す『格調のある柄の色留袖』で」と提案しています。

 さらには髪形にも気を付けなければならず、夜の披露宴での洋装には「縦のラインを強調した“夜会巻きアレンジ”が格調高く」とあります。「夜会巻き」がキャバ嬢からギャルまで手垢まみれの存在になってしまったので、「家庭画報」読者においては「格調高い夜会巻き」が求められるのでしょうか。で、「格調高く」するにはどうすればいいのかと申しますと、「頭頂部をふんわりと高く盛り上げ」「顔の長さの2分の1のボリューム感を」出すそうです。マジか! 2分の1は結構デカイですよ。案の定、モデルを務めた女優の高橋ひとみの“格調高い”夜会巻きを見て見ても、盛りすぎて逆に「銀座のママ」になってしまっています。今後、盛りの高さで格調高さが決められると、トサカの大きさで優劣が決まるニワトリのオスの世界となんら変わらなくなってしまうのでは、と心配になりました。良家ソサエティーのマウントの取り方って、本当に難しそうですね。

 「小悪魔ageha」(インフォレスト)を読んでいると、お水系カルチャーに戸惑うことがありますが、「家庭画報」だって異文化カルチャーとの接触という意味では、まったく同じ戸惑いがあります。いかんせん“良家ソサエティー”という、一般人にはコンプレックスの対象になりがちな世界だから“親しみ”が感じられないかもしれませんが、「家庭画報」の懐は深いんです! なんて言ったって、海老と夜会巻きが同列なんですよ? このレビューで新たな「家庭画報」の魅力に気付いていただければ本望です。
(小島かほり)

突き詰めると、も「ageha」も同じ……

しぃちゃん

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