[女性誌速攻レビュー]「Gina」 vol.5

「Gina」渾身のモテ企画は、男嫌いを増殖させるプロパガンダ!?

2012/07/12 19:00
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「Gina vol.5」(ぶんか社)

 昨年10月、流星のごとく女性誌界に現れた辛口ギャルファッション誌「Gina」。どれだけ男ウケが最悪でも、「スタッズ(鋲)アイテムで芯の強さをアピールするわよ!」と息巻く同誌ですが、5号目を迎える今号もその精神は健在。初っ端から「デニムシャツ×ハイウエストスキニーデニム」という、全国民の99.9%が火傷をするコーディネートを提案しています。ただでさえ強烈なデニムonデニムですが、さらに今流行りの芸人・スギちゃんの姿もだぶってしまい……。事実、「今年は、スギちゃんのせいでデニムベストがさっぱり売れない」とアパレル業界が嘆いているんだとか。しかし、なによりも「人とは違う」を大事にする「Gina」は、デニムベストを羽織った水原希子を表紙に起用! まさかのスギちゃんにオマージュを捧げる形で幕を開けた今号の「Gina」を、早速読んでいきましょう。

<トピック>
◎DENIM,MY LOVE feat.Kiko Mizuhara
◎“紗栄子BODY”の秘密
◎彼氏ができにくい○○な女たち

■興味があるのはアンタの体だけよ!

 「一体、どこの層に需要があるのかわからない」そんな女性タレントの筆頭と言ってもいい紗栄子が、今号の「Gina」で6ページにも渡り特集されています。そう、紗栄子は、「Gina」に需要があったのです! しかし、ダルビッシュ有との離婚劇で“銭ゲバ”との印象が強い紗栄子が、カッコイイ女性を目指す「Gina」読者と果たして相入れるのでしょうか。

 不安に思いながら読み進めてみると、そこにあったのは、「基本的な食生活は?」「よく食べているのは?」「食べないようにしているものは?」「鏡の前でまずチェックするのは?」「肌のハリを保つためにしてることは?」「夜ケアでハズせないのは?」といった、紗栄子の“体”についての事細かな事情聴取。「働くママとして」「愛する子どもたちのこと」「周囲への感謝の気持ち」「将来の夢」など、紗栄子のどうでもいいライフスタイルには一切ノータッチで、「興味があるのはアンタの体だけなんだよね」とでも言わんばかりの“ヤリチン的”質問攻めが展開されていました。そりゃそうですよ、下半身デブだったら、「紗栄子の日々の気づき」を知ったところで、「Gina」読者マストアイテム・ピッチピチのスキニーデニムをカッコよく穿きこなせませんもんね!

 しかし、そんな「Gina」の意図を知ってか知らずか、紗栄子の答えと言えば「(夜ケアでは)お肌にはかなりたっぷりクリームを塗ります」「(太りやすい人がすべきなのは)規則正しい生活」「(食べ過ぎないための工夫は)『腹八分目』って強く思います(笑)」など、おませな小学生でも知っていることばかり。まだ26歳とはいえ、経産婦に期待しているのは、そんな甘っちょろい回答じゃないよ! 「嫌いなママタレ1位」に輝いたにもかかわらず、いつまで「頑張りすぎずに、ナチュラルに、余裕のある、美しい私」を演出しようとしているんでしょうか。さっさと開き直って、かつては球界一のイケメン・ダルを魅了したボディの作り方を、読者に伝授してあげてほしいものです。

■「モテないは誇りである」という価値観

 さて、「Gina」は、その辛口感によりモテないというのが通説。今号の読み物ページは「彼氏ができにくい○○な女たち」と、真正面から「モテない問題」について取り組んでいます。しかし、案の定「Gina」disパーティーの会場と化していました……。

 「男受けより女受けな女」「隙のない女」「自分を高く見つもりすぎてる女」「こだわりが強い女」など、「Gina」企画書の想定読者層を丸写ししたのではないかと思われる、負け美女・犬山紙子氏によるモテない女像の列挙。この企画の直前ページで、青みがかった濃厚レッドのLipや、ゴールドのニュアンスが効いたネイビーアイシャドウをオススメしてたのに、そんなことお構いなしで「メイクが濃すぎる女はモテない」と断定しています。

 さらに「Gina」disパーティーには、一般男性も参戦。「彼女に求める○○なことランキング」では、「一緒にいてラク」が第1位に輝くという結果になりました。スタッズ(鋲)大好きな「Gina」読者と一緒にいると、うっかり『北斗の拳』(集英社)の“Dead or Alive”な世界観に没入して気が休まらねぇよと、暗に批判しているのでしょうか。思わず、「だったら『MORE』にでも行って、ハッピーハッピー騒いでろ」と嫌味の1つも言いたくなります。その一方で、「典型モテメイクの子を見ると(略)その時点で恋愛対象外」という意見も寄せられ、じゃあ、ちょっとカジュアルテイストでも入れればいいかと思うと、「山ガールやボーイッシュな子はオシャレでも『いいなぁ』とは思わないですね。(略)“女性らしさ”を感じられるとトキメキます!」と、斬って捨てられる。男性に安らぎを与え、でもちょっとした意外性もあり、女らしいといったら、「サンリオ」ぐらいしか思い浮かばないんですけど……。

 結局、好みは人それぞれだということなのでしょうが、企画を通して、男性視点の「あれはダメ、これはダメ」「ああしろ、こうしろ」があまりにも飛び交い、疲れてしまったというのが本音です。これは、読者を男嫌いにさせるためのプロパガンダではないのかと疑問を抱くほど、どんよりした気分になってしまいました。

 そんなモテ企画を読み終え、「Gina」をパラパラとめくっていると、ある写真に目が止まりました。「黙ってさえいればイイ女」日本代表・藤井リナが、ファッションページで、真っ赤なドレスを身にまとい、つまらなそうな顔をして煙草を吹かしていたのです。空前の禁煙大ブームである昨今、日本人女性が煙草を吸う写真は、女性誌ではなかなか見られないのではないでしょうか。それを堂々と掲載する勇気を称えると共に、もうなんだったら、「Gina」は女性誌でありながら、モテないことを誇りにし始めたなとさえ思ってしまいました。今後「Gina」のモテ企画は、本気でモテようとすると男嫌いになるだけなので、自虐プレイの一種として、軽く笑って読むべきなのかもしれませんね。
(豊島ユイ)

最終更新:2013/03/25 22:09
『Gina(ジーナ)5 (JELLY 2012年08月号増刊)』
「スタッズ女」という言葉まで生まれてた!
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