『デブ、死ね、臭い! を乗り越えて』刊行記念インタビュー

「いじめの原因でもあり、アイデンティティーでもあった」細山貴嶺くんが語る、子役の光と陰

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子役タレントとして活躍していたころ(左)に比べ、スマートになった現在(右)

 「かわいい」「癒やされる」ともてはやされ、一躍スターになったかと思えば、心身ともに大人になり、ひっそりと消えていく子役スターたち。成長著しい彼らの絶頂期はとても短い。それでも「大人の都合」に笑顔で応える彼らは、子役としての自分をどう捉えているのだろうか。

 2001年から2006年頃、ぽっちゃり体形に蝶ネクタイ、サスペンダー付きのズボンで「お坊ちゃま」キャラとして活躍していた子役、細山貴嶺くん。現在高校3年になった彼が壮絶ないじめ体験をつづったエッセイ『デブ、死ね、臭い! を乗り越えて』(マガジンハウス)を出版した。宿題を盗まれる、首を絞められるなどのいじめを受け、自殺も考えたという彼。子役活動と同時期にいじめを受けた彼に、子役がもたらす影響を聞いた。

――太っていたということのほかに、子役であったこともいじめの原因のひとつだったそうですね。

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細山貴嶺さん(以下、細山) 子役だったからいじめられたということもあったんですが、それ以上に大きなプラス面もあったんです。芸能界にいて、自分のコンプレックスを売りにしている芸人さんたちを見て、僕は「短所は長所でもある」と気づけた。芸能界にいなかったらそういう気づきもなく、薄っぺらい人間になっていたんじゃないかなと思います。子役として活動してきたからこそ、今の僕がいる。子役だったからこそいじめを乗り越えることができたんです。

――幼い自分が「商品」であり、自分に大人がお金を払うということについて、恐怖や戸惑いはありましたか?

細山 自分が商品であるということは、ほかの人にはない価値を持っているということ。恐怖というより、自分は自分として胸を張っていいんだと捉えていました。

――子役として「生意気なお坊ちゃま」キャラを演じなければいけないことはつらくなかった?

細山 「生意気なお坊ちゃま」は、実際の僕とは正反対のキャラ。全然お金持ちじゃないし、自分で言うのもなんですが生意気というよりは、ほかの人に合わせる平和志向。バラエティー番組では求められるキャラとしての面白いコメントを即座に言わなければならないので、その点では負担になっていた部分は確かにありました。でも、視点を変えてみれば、学校でいじめられていても、仕事では自分は必要とされているということ。実際の自分とは違う部分が他人から求められ、アイデンティティーを証明する手段にもなっていたんです。複雑ですね。

――「自分のキャラと違うからいやだ」と訴えなかったんですね。

細山 それはなかったですね。2歳から芸能活動を始め、物心ついたときには仕事が日常生活の一部となっていたので、自然と「本当の自分」と「ビジネスとしての自分」のスイッチを切り替えられていました。そうしないと心が保てなかったというところはあるかもしれません。だからといって、学校でも自分を出すといじめられると思って、どう振る舞えばいいか測っていたところがあります。本当にリラックスできたのは、家で親と一緒にいる時間か、仕事に行く途中の電車の中くらいでした。

――子どもらしいわがままを親に言ったことは?

細山 ありません。性格的な部分が大きいのですが、僕は自己主張して相手に従わせるよりも、自分が相手に合わせた方がいいと思っているんです。反抗期らしい反抗期もなかったですね。もしかしたら、小学生の時に両親が離婚したので、一生懸命僕を愛して育ててくれた母に反抗するのは違うと思っていたのかもしれません。

――ほかの子役はどうでしたか? わがままな子はいました?

細山 ほかの子役の子とはあまり深く話したことがなかったので、正直よくわからないんですよ。僕にとって子役はビジネスパートナー。仲良く遊ぶのは違うという意識があったんです。ただ、やっぱり学校でいじめられているという話は何人かから聞いたことがあります。ほかの生徒とはちょっと違う特徴がある子、僕だったら太ってるとか、そういった相違点があるといじめられて排除されるのかなと思います。

――今は「子役ブーム」といわれていますが、大人たちが勝手にチヤホヤして、飽きたら見向きもしないということ風潮についてはどう思いますか。

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細山 悲しいけど、この業界はそういうもの。一時期売れたとしても、視聴者側が面白い感じなくなったらそこで終わり。仕方ありません。仕事が減って傷ついた時は、親や周りの人が一緒にいてあげてほしい。僕も成長とともに仕事が少なくなり不安な時期があったんですが、母が「それは別にあなたがどうというわけではなく、芸能界全体として中学生は使いにくいから仕方がないんだよ」と言ってくれたので、「僕はもう不要なんだ」と本気で悩むことはありませんでした。誰も僕を必要としなくなっても、親は最後まで僕を必要としてくれるという安心感もありました。親との信頼関係が重要だと思います。

――大人でも「自分探し」という言葉があるくらい、社会で自分の居場所をみつけることができず悩む人が多いわけですが、どう思いますか。

細山 「自分ってなんだろう」「どういうふうに生きればいいんだろう」と悩むのは誰もが通る道だと思うんですけど、誰にも答えは見えません。だから、ただ自分に自信を持って、人を傷つけず自分らしく生きていれば、きっとあなたを大切に思ってくれる人がいるよ、と思います。

――将来の夢は?

細山 今、高3で受験勉強中。将来的には、いじめで苦しんでいる子を助けるために政治家になりたいと思っています。教師ということも考えたんですが、根本からいじめ問題を解決するには、日本の教育システムを変える必要がある。だから、政治家を目指しています。

――もう一度生まれ変わったら、子役になりたいですか?

細山 絶対に子役としての人生を選びます!
(インタビュー・文=安楽由紀子)

細山貴嶺(ほそやま たかね)
1994年生まれ。赤ちゃんモデルを経て、2歳より子役タレントとして活躍。『おはスタ』(テレビ東京系)、『踊る!さんま御殿!!』『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)、『ワンダフルライフ』『笑う犬の発見』(フジテレビ系)、『英語でしゃべらナイト』(NHK)などへの出演経験がある。

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