[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」6月22日号

受刑者同士の介護、仕事ができて疎まれるパート……「婦人公論」が放つ真実

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「婦人公論」(中央公論新社)2012年
6月22日号

 「婦人公論」6月22日号の特集は、「太らない、倒れない体をつくる正しいダイエット」。その中で、ベストセラーとなった『「空腹」が人を健康にする』(サンマーク出版)の著者であるの南雲吉則氏がこう語っていました。「意識して空腹の時間を作ることで、自分の体が何をどれだけ必要としているのか、体の真の声を聞くことができます」。南雲氏は、お腹がグーッと鳴って本当の空腹を感じた時だけ、体にいいおいしいものを食べるのだそうです。

 フーンと思いながら「婦人公論」を読み進めて、ふと、これは“情報”にも同じことが言えるのではないかと思いました。スイーツやジャンクな情報があふれかえっている現代、お腹は空いてなくてもつい手が伸びて摂取して贅肉を貯め込みがち、自分が何を必要としているのか真の声が聞こえない。自分が本当に聞くべき声も聞こえない。声がデカいやつが勝ち、吠えまくったやつが勝ち、気の利いたことを言ったやつが勝ちの世の中、喧噪にかき消されてしまった声、叫びはきっとあるはずだと思うのです。今回は、「婦人公論」に掲載されているそういった声をご紹介します。

<トピック>
◎特集「太らない、倒れない体をつくる正しいダイエット」
◎ルポ「女子刑務所――知られざる世界」
◎「パート人生相談 溜息とホンネ渦巻く職場から」

■知られざる、刑務所の福祉施設化問題

 外山ひとみ氏の連載ルポ「女子刑務所 知られざる世界」。毎回衝撃的なのですが、今回もあまりにつらい内容でした。今回は刑務所の高齢化問題と、摂食障害を持つ受刑者の問題のふたつをレポートしています。社会的に孤立した高齢者が貧困から万引きを繰り返し、刑務所に入るケースが増大しているそう。高齢受刑者の世話をするのは誰だと思いますか。それは受刑者なのだそうです。受刑者が受刑者のオムツを交換し、着替えや歯磨きなど身の回りの世話をするんです。しかも、それが嫌々ではなくやさしさがあったりする。孤独な生活から孤独ではない場所へ。そこが塀の中とは、なんともやりきれない話です。

 摂食障害を持つ受刑者の存在も、どの刑務所でも大きな問題となっているとのこと。症状が重い患者は、自分で戻した食べ物を取っておいてあとで食べようとしたり、刑務作業の工場の机に戻したものをなすりつけ、乾いてからはがして食べたりするといいます。汚いし臭いもひどくほかの受刑者の迷惑になっているけれども、現状はいかんともしがたい。刑務所の福祉施設化。彼女たちのケアやほかの受刑者への配慮という、本来の職務を超えた仕事を課せられた刑務官の叫び。ルポを読むと、叫んでる気がするんですよ、ほんとに。悲痛な叫びが聞こえる。でもこれを読むまでそんな叫びは聞こえなかったし、そもそも聞こうともしなかった自分に気づきました。

■「パート」のポジショニングの難しさよ

 もうひとつ興味深かったのは、「パート人生相談 溜息とホンネ渦巻く職場から」という企画です。パートさんというと、頭に浮かぶのは“ありふれた”“日常生活の”“一般的な”といったイメージではないでしょうか。パートさんではない人からみれば、改めてその声を聞く機会はあまりないですし、聞いてみようとも特に思わないのではないかと思います。

 しかし、部外者の想像と当事者の現実は、「スパゲティナポリタン」と「ナポリのスパゲッティ」ほど違います。パートにはパートだからこその悩みも嘆きもあり、そして喜びもある。要領が悪く年下の若い“先輩”に嫌みを言われたり、逆に仕事ができすぎてやりがいを感じられなかったり、正社員からけむたがられたり……。仕事ができればいいってもんじゃないというあたり、実に複雑ですね。それでも、パート3人の覆面座談会では、「スキルが磨かれていく面白さもある」「趣味を生かせるパートを経験してみたい」と、喜びと夢いっぱいのハッピーエンド。あまりにありふれていてどこでもいつでも聞けると思いつつ、実際は聞いたことがなかったパートの声。「婦人公論」だからできる企画でしょうね。

■短文で濃い内容、長文で薄い内容もある

 医師で作家の鎌田實の連載エッセイ「僕の好きな女性」に、女性ではないピーコが取り上げられていました。1989年にがんのため眼球を摘出、抗がん剤のために髪の毛が抜けた当時の自分を「おかまで片目でオランウータンみたいで……」と自虐気味に振り返りつつ、「自分の命は借り物。自分のためだけに生きてはいけないのよ」と看護学生相手に語るピーコ。福島へボランティアに行き、「おかまということをオープンにしてから、差別がものすごかったの。風評に負けちゃだめよ」と泣きながら話すピーコ。タレントとしての声はイヤになるほど聞いていたつもりでしたが、聞いたことのない声がここにありました。2ページの短い文章ですが、マイノリティとして生きるピーコのやさしさがあふれる感動的なエッセイだったので、一読をおすすめします。

 ほかの秀逸な記事に比べて際立ってお寒かったのが、インタビュー「水谷千重子 小林の幸ちゃん、一緒に演歌界を盛り上げていこな!」です。演歌歌手・水谷千重子は、芸人・友近の友人という設定ですが、要するに友近本人。レイザーラモンHGやDJ OZMAなど「本人の友人」設定の別キャラクターなるものが時々出演しますが、ガチでおもしろくないし、おもしろくなさをおもしろがる高度なジャパーニーズOMOSHIROI(←ブスKAWAII的な)を考慮してもやっぱり回りくどくて面倒! 肝心の「お友達の友近ちゃんの恋愛」については、「とても幸せそうです」「一般男性なのでこれ以上は言えません」と逃げている。架空のキャラだからこそズバリ言えることを言わないと意味がないよ。声なき声が多く掲載されていた今号の「婦人公論」にあって、内容ゼロにも関わらずビッシリ3ページ。なんでもペラペラしゃべればいいわけではないと痛々しく感じた次第です。
(亀井百合子)

「婦人公論」

パートと正社員を入れ替えてほしいときってあるよね~

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