[女性誌速攻レビュー]「Grazia」6月号

独女向け雑誌は夢が語れない! 「Grazia」がワーキングマザーを美化するワケ

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「Grazia」2012年6月号(講談社)

 先月号からワーキングマザー向けの雑誌としてリニューアルした「Grazia」。今月号では、「やっぱり気になるこの人の仕事とプライベート」として神田うの嬢が登場しています。出産前は「生意気」を商売道具に変え、“出る杭”としていろんな所で叩かれまくったうの嬢ですが、出産を経て、

「今は、子どもが最優先ですから。彼女をないがしろにするような仕事のしかたはしません。彼女より大事なものはないんです。私は、どんな仕事先の方にでも、胸を張って、そう言いますよ」
「先日、『徹子の部屋』に出演した時、19歳の頃のVTRが流れて、そこで私、『子どもなんて、親がいなくてもスクスク育ちますからねー』なんて、あっけらかんと言ってるんです。もう、唖然。あれを思えば、私も成長しました(笑)。子育てをしているようで実は、子どもに育てられている、そんなふうに思います」

 と、高野山で修行して徳を積んだのかと思うほど、キャラクターがまるで入れ替わっていました。すごいなー、出産でこれほど慈悲深くなるなら、近所の迷惑ジジイも会社で威張り散らしてるハゲもみんな出産できるようになればいいのに! な~んて意地悪なことを思っちゃいました。でも、うの嬢も自身の立ち居振る舞いに関してはプロ。ワーキングマザーがテーマのインタビューで「出産前と特に変わってません」なんて言えないですもんね。というより、世間からの「母になったんでしょう? 物の見方が変わったんでしょう?」という無言の圧力に応えているような気がします。「ワーキングマザー」に対する世間の感情というのは、今月号の「Grazia」にふんだんに込められていましたので、そこに迫って行きたいと思います。

<トピック>
◎着るだけでサマになる「働く母」のベーシック服
◎梅雨どき特集 あめあめふれふれ、働く母さんは
◎「恋かもしれない!?」、その時の処方箋

■ワーキングマザーは世間にとっての金づる!?

 今月号の大特集は「着るだけでサマになる『働く母』のベーシック服」です。トリーバーチの4万5,150円のプリーツスカートやらストラネスの10万1,850円のジャケットやら、相変わらずゴージャスなアイテムが並びます。特集内の「オンタイムをベーシックで駆け抜けよう」というページでは、自身も新米ママであるモデルのSHIHOが、白を基調としたおしゃれなオフィスを闊歩したり、寸分の隙間もないファッション+メイクにピンヒール、黒ぶち眼鏡というベタすぎる「いい女」で電話応対していたり、ショルダーバッグを肩に掛けながら颯爽と歩いたり。あのー……いまだこういったワーキングマザーに出会ったことないんですけど……。

 「梅雨どき特集 あめあめふれふれ、働く母さんは」という一生懸命気さくな感じにしました特集では、ジミーチュウのレインブーツやらフルラのヒールラバーシューズなどが紹介され、雨の日の広がる髪の毛には「美人ヘアアレンジ」を促すなど、ぬかりない仕上がりに。付録には「働く私の見方 サロン50」が付き、旅ページでは「子どもに見せたい世界遺産級の美しさ 五島列島の旅」があります。

 読み物ページには「デキる『女社長』列伝」があり、ぐうの音しか出ないほど完ぺきな女性がずらずらっと登場します。みなさん、仕事にも自負を持っており、でも「肩ひじ張らない」自然さも持ち合わせています。女性誌は常に光の当たりやすい人物・ストーリーを持っている人物を見つけ、ロールモデルにしようと企みます。そうじゃないと、誌面で話も展開も膨らまないから。でも、「自分にしかできない仕事」をしている女性(男性も同じですが)なんてどれほどいるのでしょうか。ほとんどの仕事は他の人でも成り立ちますが、そこに垣間見えるのは「自分にしかできない仕事と思わないと、今の生活を守り抜く自尊心が保てない」という本音。そんなギリギリの生活なのに、ワーキングマザーはオフィスだろうが雨の日だろう、もうぶりっぶりに女っぷりを上げて、日々の生活に疲れたらサロンでリフレッシュしたり、子どものために五島列島に行かなくてはならないようです。あー疲れそう。そう、「Grazia」及び世間様が求めているのは、“完璧な”ワーキングマザーなんです。

 なぜ、ワーキングマザー向けの「Grazia」がこれだけ大風呂敷を広げるかと言うと、独身女性向けの雑誌に「夢」がなくなったから。着回しコーディネート企画の主人公の設定に、自然と「派遣社員」が入ってきたり、ボーナス時期の高級ブランドの出稿や旅行ページが少なくなったり、読み物ページでは「結婚できない私」を堂々巡りさせるだけの内容だったり。独身女性向けには夢を語りにくくなったし、消費行動も見込めなそう。その反動で、夫と子どもを得て、なおかつ仕事と収入をキープしているワーキングマザーこそが現代を生きる女性の理想であり、消費活動盛んな存在である、と世間様とお金儲けをしたいオジサンたちが考えていそうだな~と感じるのが「Grazia」の作りなんですよね。だから経産婦には子どもを得ることでいかに自分が“成長”できたかを語らせ、仕事に意味を持たせ、ちょっとお高めのアイテムも「ワーキングマザーのスタンダード」と喧騒するんじゃないか。ワーキングマザーは子どもや自身の生活だけではなく、世間からの希望やら羨望やら悪だくみさえ背負う存在になったようです。

■高齢出産のレギュラーは野田聖子かカヒミ・カリィ

 今月号の読み物ページには、「アラフォー出産」「『宅配』上手の教え」「『恋かもしれない!?』、その時の処方箋」などワーキングマザーが知りたいトピックが並んでいます。「『宅配』上手の教え」に関しては生活情報誌の方がこの手の情報の調理法に長けているのでスルー。「アラフォー出産」も意欲はうかがえるのですが、いかんせんカヒミ・カリィだとか映画監督だとか棋士だとか、一般的な職業ではない人たちの話なので、「幸せのおすそ分け」程度しか見込めそうにありません。この手の特集はいつも体験者のインタビューがメインなんですが、「労組のお兄様たちを味方につけて、特別育児休暇をとりつける方法」「これで社長も首を縦に振る! 一時的キャリアダウンのプレゼン法」のような企画の方がワーキングマザーに必要だと思うんですけど……。

 で、今月号の目玉「『恋かもしれない!?』、その時の処方箋」を見てみましょう。女性の社会進出が進み、今や離婚の要因の一つとして既婚男性を怯えさせている、女性の浮気。「Grazia」のアンケートでも「今、あなたは誰にときめいていますか?」という質問の第1位は「仕事関連で出逢った男性」(36人)とあります。ただし、このアンケートは分母が不明で、さらにこの質問は複数回答可。そこから恋愛に発展したかどうかは載っていません。そのかわり、生物学の先生に「素敵な男性にときめくのは生物学的に当然!」と本能レベルの肯定をしてもらっています。そこまで遡るか! 

 でも変に「母親だって女性ですもの! 婚外恋愛だっていいじゃない!」と仰がず、淡々と読者の声を拾うのが「Grazia」のいいところ。「私がリアルな恋から逃げ切った理由と対策」として「相手の男性の子ども時代を自分の息子に重ねるようにしている。私を口説いている男が、ほんの30年前まで甘ったれですぐ泣いて、手がかかる少年だったと思うと恋心が失せる」「明らかに独身時代よりランクが落ちた男にときめいている、惨めな自分をフッと客観視したこと」と、多少強引な部分もありますが、現実はいろんな誘惑と戦って辛勝している母親は少なくないと思うんですよね。だからこそ、妙に生々しいこの手の企画をもっと拡大してほしいです。

 今月号は川上未映子先生が登場し、母になることをえらいブンガク的に語っておられました。その割に、お腹が目立たないようなハイウエストで切りかえしたワンピース+靴下+ルブタンの靴、という最上級おしゃれガーリーなお姿。言文不一致ならぬ、言体不一致は今後のママのトレンドになりそうですね。なんていったって、文系女子(笑)憧れのアイコンが母になるっつーんですから。年齢的には野田聖子、カヒミ・カリィにはかなわなくとも、35歳での出産に、女性誌界隈が新しいママモデルとして注目していますよ。
(小島かほり)

「Grazia」

声と表情がない分、うの嬢は紙媒体だと超いい人!

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