「生きつづけるロマンポルノ」特別企画

セックスを通した男女の“本質”を描き出す、日活ロマンポルノの普遍性

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(C)日活

 私は恋愛にセックスは不可欠だと思っている。男女を描いた映画では、肉体の交わりを通して、互いの魂がぶつかりあうような関わりを見たい。セックスを描くAVの世界では、男が撮ったAVは射精だけだし、女性目線のAVは男をペット化しているように思えて、どうしても萎えてしまう。見たいのは「関係性」なのに。そう感じている女性たちが少なくないのだろう。周りの友人知人たちの間で、「日活ロマンポルノ」が話題になっている。

 映画会社の日活が今年創立100周年を迎える。その一環として、今月12日から渋谷のユーロスペースを皮切りに、厳選された32本のロマンポルノが全国で上映される。

 日活は1971年、斜陽になりかかった映画の灯を消さないためにもと「ロマンポルノ」の制作を始めた。これはセンセーショナルなできごとだった。すでに存在していたピンク映画とは違い、それまで日活が培ってきた撮影技術やスタジオシステムを惜しげもなくつぎ込んだのだ。当時の男性たちは映画館にひたすら足を運んだ。88年までに1,100本のロマンポルノが世に送り出された。制作が終了してからも、熱烈なファンは多く、折に触れて上映会が行われてきた。ときには女性限定鑑賞会も企画され、 リアルタイムで見られなかった女性たちで満席になったという。

 80年前後、私は映画館で何度かロマンポルノを見た。だが、若かったせいか、セックスシーンに興奮はしたものの、心揺さぶられた記憶はほとんどない。その後、恋愛したり失恋したり、結婚したり離婚したりを経て、CS放送やDVDで見てみると、これはまさしく「男女の本質」を描いたものであると確信した。「大人にならないとわからない」映画なのかもしれない。

 ロマンポルノと一口に言っても、いろいろなジャンルがある。文学性の強い暗い作品から、時代性を映した恋愛ドラマ、あるいはどたばたコメディ。主役の女性の職業も主婦、OL、芸者、売春婦から海女にいたるまでさまざま。

「それでもポルノだもの、所詮、男目線で女が貶められてるんでしょ」

 以前、知人の女性にそう言われたことがある。もちろん、ポルノである以上、性的刺激を喚起するシーンは多い。だが、そこに描かれているのは、あくまでも「セックスを通した男女の本質」だ。男が無理やり女性を犯しているようなシーンも皆無ではない。だが、結果的に、女はそういう男をあっさりと越えていく。あるいは強烈な意志で、そういう男に反発していく。男は逞しい女に呆然とするしかない。理性ではなく、本能的な女の生命力や業の深さが男を凌駕していくのだ。男たちは、そんな女たちに敵わない。映画の作り手たちは女性が好きで、敬意すら感じているように私には思える。それが映画から感じとれるから、当時、鑑賞していた男たちも「女を貶めている」気分にはなっていなかったのではないだろうか。

 なにより脚本が素晴らしい。男女関係を巡る裏切りや嫉妬、葛藤が余すところなく描かれている。監督も、神代辰巳、曾根中生、田中登などが独自の世界を作り上げた。ロマンポルノ出身の監督も多い。たとえば崔洋一、周防正行、相米慎二、滝田洋二郎、根岸吉太郎、森田芳光などなど、現在の映画界を語れば必ず出てくる名前ばかり。それだけ監督の作品性を重視してもいた。

 そして女優陣。白川和子、宮下順子、谷ナオミは言わずもがなだが、ある程度の年齢の男性たちに聞くと、「風祭ゆきが好きだった」とか「中川梨絵はかわいかった」とか、それぞれ心の中に「当時のマドンナ」がいるようだ。女の私から見ると、色気の宮下順子、フェロモンの谷ナオミが両横綱だろうか。

 女の肉体の歓喜をきちんと描いているのも、ロマンポルノならではだ。体の快感がときに理性を裏切る。だから女は切なくなったり、自分で自分を信じられなくなったりする。そういった女の心と体の複雑さを、女優たちは演技で見せる。過剰な説明はせずに、カメラは鋭くそこを描きだす。画面から流れるそこはかとないエロス……。つまり、映画作品として、ロマンポルノは普遍的テーマをひたすら追求しているのだ。
(亀山早苗)

(後編につづく)

『ロマンポルノと実録やくざ映画―禁じられた70年代日本映画 』

女は図々しく逞しい生き物ですから

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