[女性誌速攻レビュー]「美ST」6月号

「美ST」の美のベクトルがあっちこっちに! 「美魔女」という言葉が持つ意味

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「美ST」2012年6月号(光文社

 今月の「美ST」の表紙は、互いに腰をすりよせながら美魔女4人組が登場です。シロウトとは思えない美しさと自己陶酔っぷりには頭が下がります。彼女たちに触発されたのか、齋藤薫センセのコラム「表紙の美女から何を学ぶ? 齋藤薫の読む美容液」もいつになくスパーク! 「歴史的にも美人コンテストには差別的だとするネガティブな見方がついてまわったが、“美魔女コンテスト”は日本の女に勇気を与える試みという意味で、世のため人のためなニュアンスがあるから、逆に拍手喝采」「美魔女はもう女の歴史の一部を変えてしまってる」「全女性の運命を変えた」「『あなたも立派な美魔女!』と言われた瞬間、キレイの魔法がかかる。歳をとらなくなる。“美魔女”はもはや、大人の女に魔法をかける呪文へと昇華しているのである」……だってさ。世のため人のため歴史を変えてしまった美魔女。もはや人間じゃないね。怪物大王とかハクション大魔王とかニコチャン大王とか、そちらさんたちと同族のような気がしてきました。

<トピック>
◎ユーミンの美しきたましい紀行
◎KAWAII美魔女の時間の止め方、戻し方
◎特集「お待たせしません。“今すぐ美女”技!」

■美トレより比叡山に入れ!

 いやね、別にいいんですよ。「美ST」が若さ、美しさを第一とする価値観なら、それで徹底してくれればわかりやすくていいんです。それをヘンにバランスをとろうとして揺らがせるから、わけのわからないことになるんです。その象徴とも言えるページが、新連載「ユーミンの美しきたましい紀行」。松任谷由実がパワースポットを訪れて語るという、ヤバイ予感でいっぱいのカオスな企画。一回こっきりならまだしも連載なんて! だ、大丈夫?

 「今、私が立っているこの比叡の霊山で受けたバイブレーションは雄大さ、迫力がすごいですね」って冒頭の一文を読んだだけでも後頭部がシビれてきました。雄大なバイブレーションって何なんでしょう!? すっげー気持ちよさそうなんですけど、アッチの意味じゃないですよね? それに続く文章については、「エネルギー」「祈る」「イマジネーション」「脳の研究」「心と体」といった単語を頭の中で適当に組み合わせておのおの作文していただければ、それに近いものになると思いますのでお試しください。で、最後のほうでユーミンがこんなことを語っていました。

「40代からは内面から綺麗にならないと。形じゃない。若いときは形から入っても綺麗だけど、ある程度の年齢になると、自分から輝く姿勢を持っていないと長続きしません」

 数ページ前に、表紙に登場した美魔女たちが「あえてミニスカも着るし、家では一年中ショーパン」「美トレは毎日欠かさず続けています。具合が悪い日も(笑)」「アルゼンチンタンゴ(にはまっている)」「たまには若いコ向けのタイトな洋服も着るようにしないとね」「食べ過ぎ防止には、1個分の千切りキャベツ」といった頭がキャベツな会話を繰り広げたばかりでこのユーミンの崇高なお言葉! 一応、美魔女も「ケアに勝るのは、積み重ねてきたSTORYが生む目の奥の輝き!」と、内面を意識したことを言ってはいるんですが、いかんせん美魔女なもんで……。

 そりゃ、内面も外見もどっちも美しく輝いていることがベストなんでしょうけど、外見の美しさのためには、ヨガだの加圧ジムだの美トレだの、場合によっては美容医療だのとある程度解答が用意されているのに対して、「内面から綺麗に」とは無責任きわまりない言葉です。一体どうすりゃいいんでしょうか。どんな人が内面が綺麗と言えるのでしょうか。ちなみに、表紙に登場した美魔女4人の肩書きは「会社経営」「ヘアメークアップデザイナー」「エステティシャン」「主婦(元モデル)」。これが輝いている人の代表者という意味でしょうか。それと、ユーミンは「若いときは形から入っても綺麗だけど」と語っていますが、内面こそ若いときからの積み重ねがあとになって効いてくるのではないですかね。40代になって、いきなり生き方の姿勢を変えろと言われてもダイエットより難しい気がします。ウエストは増減可能ですが、時間はいくら努力しても増減不可能です。

 その数ページあとには、仁科亜季子のインタビュー「つらい日こそ、上を向いて笑おう」が掲載されています。38歳で子宮頸がん、46歳で胃に腫瘍がみつかり、昨年は腸閉塞で腸を切ったという仁科は次のように語っています。

「お湯で洗って氷水で引き締め、化粧水を1時間もパッティングする美STの美魔女・山田佳子さんはすごいと思います。(中略)最近、ネットで私の整形疑惑が流れているらしいのですけれど、引っ張ったり、入れたりというのは絶対にしていないので(笑)。自然の流れでいいじゃない、無理して老化に逆らってもイタい感じがします」

 出た、「老化に逆らうのはイタい」発言!! もう、巻頭から30数ページまでで、美のベクトルがあっちこっちに飛んじゃって混乱しっぱなし。まとめますと、40代は毎日1時間パッティングしたり他人の視線を意識してミニスカやショーパンを穿き美貌の維持に努め、かつそれがイタく見えないように自然の流れにまかせ(←この時点で破綻)、さらに内面も輝くように生きろと(←無理難題)。美魔女になるには、ホグワーツ魔法魔術学校よりも厳しい修行の道が待っているわけですよ。なんかよくわからないけど、みんながんばれよ。

■ティッシュ2枚程度の美容でいい

 企画「KAWAII美魔女の時間の止め方、戻し方」でも、見た目-20歳から-10歳の美魔女(ナレーター、ネイルサロン・スクール経営、美肌研究家ら)が、なぜか半裸で白シーツにくるまって、家族への愛と同列にヨガだの米ぬかだのリンパケアだのを語っています。ところが、大特集「お待たせしません。“今すぐ美女”技!」で、また迷える40代の心をかき乱される! タイトルページにあるリード文が、これまで登場した美魔女たちのコンセプトを破壊しているんです。

「肌のキレイな人に『いったい何やってるの?』って聞くとたいていは、『毎日必ず』『コツコツと』『10年続けてます』なんてワードが返ってきます。そりゃあ、時間とお金と気合いを充分かけてしっかりケアをすればどんな肌だってそれに応えてくれるもの。でも、私たちが知りたいのはそんなごもっともなことじゃあ、ないんです。毎日必ずできるほど暇じゃないし、コツコツできるほど真面目じゃないし、何より、10年たったらそのぶん年取ってる!」

 美魔女の努力水の泡! ということで、保湿ケアやドリンク剤、美顔器、メイク法などすぐに効果が出る美容法を紹介しているのですが、その中で72歳の五月みどりが、自ら実践しているというカツラ用粘着テープを使って自家製二重テープを作る方法やブラにティッシュを詰めてバストアップする方法を解説していました。五月みどりは1月号の巻頭インタビューに登場したときも同じことを語っていたのですが、読者からの問い合わせが多かったとのことで改めて詳細を掲載したとのこと。問い合わせが多かったということは、その程度の美容法を望んでいる人が多かったということでしょう。「美ST」読者といえども、案外そんな程度。「いつもの私よりちょいキレイかも」という程度で案外満足なのかもしれません。

 40代、ふつうに考えて毎日1時間もパッティングなんかしていられません。美魔女は「世のため人のため」と齋藤薫センセは書きました。確かに「美魔女」という言葉によって、「美しい人」にちょっぴりコミカルなニュアンスが付加されたことは、全女性のためになった気がします。「美しくてうらやましい、でもがんばりすぎちゃってイタい、私にはとても無理だわ、だけど、なれるものならなってみたいけど、いや、そこまででなくてもいいか」といった複雑な感情すべてが「美魔女」という一単語に表現されていると思うのです。そうして、美魔女を羨望と冷笑の間に置くことで、美魔女になり得ない大多数の40代女性は心穏やかに過ごせるようになりました。筆者は外見の輝きを求めることをとうに捨てたんで、内面の輝き(笑)を目指そうと思います! 次号、ユーミンのたましいの旅に期待します!
(亀井百合子)

「美ST」

ユーミンの魅力は浮世離れ感とダサいダンスなんで!

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