[女性誌速攻レビュー]「Grazia」5月号

新装刊の「Grazia」に見る、ワーキングマザー向け雑誌の難しさ

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「Grazia」2012年5月号(講談社)

 今月号から「Grazia」がワーキングマザー向け雑誌にリニューアルしました。誌名まわりに「ワーキングマザーがいちばん楽しい!」というキャッチが踊り、今月号の特集も「せわしなくって、幸せな『働く母』を生きていこう!」と気合も十分。表紙&インタビューには、“ポイズンの嫁”としておなじみ、女優・松嶋菜々子が登場。『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で高視聴率を取る女優なのに子育てと両立しているとか、生活が充実しているとか、そんなありきたりな話ばかり受け答えしてますけど、松嶋の起用はそんな理由じゃない! 一部週刊誌で報道された、「松嶋菜々子、ハローワークで家政婦を募集! 時給は相場より安い1,300円」というニュースが、ワーキングマザーの現状を生々しく伝えており、「働く母」の味方・「Grazia」にピッタリ、というのが筆者の妄想による起用理由。あながち外れていないと思うんですが……。

<トピック>
◎せわしなくって、幸せな『働く母』を生きていこう!
◎雨宮塔子連載「瞼のパリ」
◎気になるニュース、女の論点

■自分は探さなくても「ここ」にいる!

 まずは「せわしなくって、幸せな『働く母』を生きていこう!」を見てみましょう。トビラページには新装刊にあたって編集部からの挨拶と決意表明が掲げられています。ちょっと長いですが、抜粋します。

「今号よりGraziaは、『子どもを産んでからも仕事をし続けている女性、し続けたいと思っている女性』に向けて、新装刊しました。
 小さな子どものいる日々は、新しい発見や驚き、そして幸せに出会うことのできる毎日でありながら、人生の中で、もしかしたら、いちばん忙しい時期かもしれません。(略)
 そうやって時には思い通りにならないことに振りまわされながらも、何よりも『自分であるために』働くことを選ぶ女性たちが、今、私たちのまわりに、まちがいなく増えています。(略)」

 立派な口上ですが、出ました! 女性誌の伝家の宝刀「自分であるために」精神! 学生時代は恋愛、もしくはバックパッカーでインドあたりをさまよいながら自分を探し、就職活動には「会社の役に立つための自分」をプレゼンさせられ、結婚するときには「家庭と仕事のバランス」を選択させられ、妊娠を考えればキャリアと母親を天秤に掛けさせられる。今の時代、子どもを産むまでに繰り返し「自分」を問われ続けられているのに、ワーキングマザーとして働く理由に「自分であるために」なんて高いハードルまで設定されたら、完全に萎えますよ。いつまでも見つからない「自分」なんか探してられっか!

 もちろん仕事を続けることで広がる人間関係や価値観の変化があり、いつか「自分のために仕事をした」と言えるようになるかもしれませんが、それはあくまで副産物。仕事を続ける理由なんて、「わが子を食べさせるため」という細腕繁盛記的なモチベーションで十分、それ以上をワーキングマザーに求めるのは酷というものです。

 ファッションページに目を向けてみても、「ワーキングマザー」に寄りそう心は見えてきません。ワンピース紹介ページには軒並みひざ上15cm以上のワンピースだったり、「英国キャサリン妃を虜にしたカシュクールタイプの新顔」が紹介されていたり。靴やバッグの紹介も、ブランドごとに掲載され、「まずブランドありき」という姿勢が見えます。「子どもと一緒、を心地よく」というページでもブランドごとのコーディネートだったり、妹誌「ViVi」お得意のセレブのスナップショットを挟み込む作りだったり。本当にワーキングマザーのための雑誌にするのであれば、一枚でオンオフを切り替えられるジャケットなり、自宅で洗濯できる素材の外着を検証したり、読者の立ち位置にあった企画展開があると思うんです。詰まる所、今までの雑誌の作り方に「ワーキングマザー」という冠を乗せただけ、という印象が拭えません。

 ワーキングマザーの日常は女性誌的価値観からみれば、「地味」で「汗臭い」ものです。独身&子なしOLのように飲み会や習い事は頻繁にはありませんし、終業時間とお迎え時間がかぶりそうになれば試合前のボクサーのごとく時計と睨みあったり、息つく間もなく家事をこなしたり、子どもとの時間を過ごしたり。一方で、女性誌には読者から「夢を見せてほしい」という期待も背負っています。そのバランスの舵取りがとても重要かつ雑誌の個性にもなっていくのでは。今月号の「Grazia」は、その覚悟が足りなかったように感じました。誌名を隠せば、「35歳」の名のもとにすべてのライフステージの女性を包括している「Domani」となんら変わりはなかったです。果たして「Grazia」の今後はどうなるのでしょうか。

■だれか、パリ女病の療養所を知りませんか?

 「Grazia」を読んでいて、「Domani」かと本当に錯覚してしまったのは連載陣の顔ぶれが似ていたからです。つい4~5カ月前までは「Domani」で連載していた、内田恭子、雨宮塔子は「Grazia」にお引っ越し。「ファッション」という縛りがなくなった内田の連載は、のびのびと子育てについて語っています。一方、「Domani」でパリ女病をこじらせていた雨宮、発作が起きない空気のきれいな新天地に移って症状も和らいだかと思いきや、新連載のタイトルは「瞼のパリ」!! いや~~、もうホラーですよ! パリ病のオバケ! なになに、パリには中山美穂と雨宮塔子しか日本人は住んでいないの? 大屋政子の孫とかいないの? 雨宮はまた素敵なパリジェンヌの話を書いているし! 親善大使でも狙ってるのかと邪推するぐらいの、パリジェンヌ推し! もう謝るから、パリ以外の話をして~。

 モノクロページの読み物企画「気になるニュース、女の論点」は青木理氏の「社会にはびこる日本人の“思考停止状態”」、佐々木俊尚氏の「ノマドワーカーは次世代の新しい希望となるか」など女性誌しては硬派なコラムが充実。ワーキングマザーの知的好奇心を刺激したいという「AERA」(朝日新聞出版)のような意図が見え隠れします。それもアリだと思いますが、リニューアル号なら読者の悩み・興味の対象である子育てや仕事との両立についての話題も欲しい。内田と雨宮のコラムは自身の半径5m以内での話、「女の論点」はだいぶ遠く離れた話。ちょうどいい距離感のコラムこそ、この雑誌の求心力になるのでなないでしょうか。現在のエイジレスな総カジュアルなファッションの流れを考えると、女性誌で取り上げるファッションアイテムは割と似通っています。ゆえにスタイリングや編集手腕が問われますが、読み物ページでの差別化という視点も必要でしょう。

 というわけで、リニューアル号を見るにつけても、ワーキングマザーを対象とした女性誌の難しさが感じられた「Grazia」。もともと対象読者であるワーキングマザーたちもロールモデル不在の中、手探りで日々を送っています。ゆえに「Grazia」が簡単に理想像を打ち出せるとは思えません。だからこそ、読者に寄り添い、安易な答えを出すことなく、形作っていってほしいと思いました。……と真面目なことを書いてきましたが、筆者が今号で気になったこと! 「働く母」向けと言いつつ、ピチッピチな肌を持つ榮倉奈々と、読者層よりだいぶお姉さんの高橋恵子が今号にドーンと出ていたのがツボでした。高橋は広告絡みのようでしたが……なぜこの人選?
(小島かほり)

「Grazia」

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