[連載]マンガ・日本メイ作劇場第20回

何と闘って何が伝説なのか、わからないことだらけの『紅伝説』

kurenaidensetsu.jpg
『紅伝説』(講談社)

――西暦を確認したくなるほど時代錯誤なセリフ、常識というハードルを優雅に飛び越えた設定、凡人を置いてけぼりにするトリッキーなストーリー展開。少女マンガ史にさんぜんと輝く「迷」作を、ひもといていきます。

 「大事なことは2回言う」というのは、今日では常識である。そうでなければ、人間の集中力と理解力では、相手の意図を理解できないからだ。歌のサビ部分を何度も繰り返すのも、そこが大事な部分だからだろう。大事なことは繰り返し、そしてやり通す。これは人生においてとても大事なことだ。

 『紅伝説』(あさぎり夕、講談社)は、背中に鳳凰の印を持った男女が愛し合いつつ、敵と戦う話である。

 そして彼らがなぜ戦うのか、誰が敵なのか、伝説とはなんのことなのか。それは漫画を読めば……わからない。1度読んだだけではわからない。2、3度読むと、それぞれ1回ずつなんとなく語られていることに気がつく。お願いだ、大事なことはせめて2度言ってくれ。

 主人公の彩香は、背中に鳳凰の印を持つ、武道に長けた女子高生である。幼い頃から、崖(がい)という男性に育てられ、彩香を狙う者たちから逃げながら生活している。で、誰が、なんのために彩香を狙っているのか……。あんまりよくわからない。

 ちなみに彩香ははじめに柔道をやっているのだが、途中から急に空手に変わっているので、彼女がなんの武道を熱心にやっているのかもなんとなくボンヤリしていて不明である。

 わからないと言えば、彩香が誰を好きで、何がしたいのかもイマイチよくわからない。炎という謎の男に「運命の人」とか言ってイチャイチャした直後に、「あたしのすべてをあげてもいい人は崖1人」とか言って猛烈に迫ってるし、雪王という美形のお兄ちゃんが登場すれば、「愛されていることにめまいがする」とか言って「つきはなせるはずがない、かわいい男」と上から目線。お前の本命は誰だ?

 序盤、意気揚々と彩香を襲った者たちがいる。彼らこそが、彩香を狙い続ける敵だったのか……! と思っていると、後半、彩香と絆を深めて味方になってしまった。そして一緒に戦うようになっていく。え、彩香はいったい誰から逃げてたの? いったいこのストーリーの根幹をなす部分はいったい何?

 そんなやりきらない感を顕著に表した登場人物がいる。妖子である。自分を「変化の妖子」などとスケ番風なあだ名で名乗る、少々痛い女である。彼女は自信満々に彩香に化ける。しかし誰一人騙せずにあっさり見破られて、「変化の妖子、一生の不覚!」とか言って戻ってくるのだ。ストーリー上、彼女の変化の成功率は0%である。いったい何が「変化の妖子」だ。「趣味:コスプレです」程度?

 それでも、実績がないのに名前をつけちゃうのはこの作品の特徴らしい。結局、「紅伝説」というタイトルの理由も、「誰が、何をして、どうなったから、こう言い伝えられており、主人公たちはこうしなければならない」という明確なストーリーが見えてこないのである。……1回しか言わないから。さらっと読んだだけでは、何がなんだかよくわからない、「1回しか説明してもらえないから、頭に入らない」ことに気づくまでは、自分がバカになったんじゃないかと思ったほどである。非常に頭を使う難解ストーリーであった。

 そうして彩香には崖、炎、雪王、輝羅、早手という仲間ができるのだが、彼らはバタバタと倒れて死んでいく。その原因も、なんだかよくわからない。「私に任せろ」とか言うので任せたらそのまま死んじゃったり、襲撃の第一撃で力尽きて死んじゃったり。なんだか死ぬ理由がイマイチなので、仲間が死んでもあんまり悲しくならない。いや、登場人物たちは激しく悲しそうだけども。

 ストーリーの根幹もわからないのに、主人公を取り巻く恋愛模様もわからないという「わからないの螺旋階段」を昇り進めていくうちに、なんの扉にもたどり着かないまま突然終わってしまう。読み終わって思うのは、それぞれ1回しか語られない伝説や設定は頭に残らず、作中、ひたすらムチマッチョな男同士がいちゃついたり、彩香がいろんな男を挑発して巨乳をブルブルいわせたりしていたなあ、ということである。この手のシーンは最初から最後まで、何度も描かれている。

 ああそうか。そこがこのマンガで一番大事なことだったのだ。伝説とか鳳凰とか、どうでもいいことだったのだ。だから1回しか言わなかったのですね。

 ムチマッチョを堪能したい方にオススメです。

■メイ作判定
迷作:名作=10:0

kurenaidensetsu02.jpg

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター。女性向けのコラムやエッセイを得意とする一方で、ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、就職系やテニス雑誌、ビジネス本まで、幅広いジャンルで活躍中。 『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。

『紅伝説』1

闘う前に、ボスが死んでるという点も見逃せないっ

amazon_associate_logo.jpg

【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】
男はもう女を救わない、少女マンガとして夢を与えることを放棄した『こころ』
『覇王愛人』ほど、作者の脳内がダダ漏れになったマンガはない!
登場人物と設定のどこにも共感ポイントがない、奇跡の『禁断』シリーズ



サイゾーウーマンのSNS

  • 「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

関連リンク

関連キーワード

何と闘って何が伝説なのか、わからないことだらけの『紅伝説』のページです。サイゾーウーマンジャニーズ(SMAPTOKIOKinKi KidsV6NEWS関ジャニ∞KAT-TUNHey!Say!JUMPKis-My-Ft2Sexy Zone)の最新ニュースのほか、ここでしか読めない裏芸能ゴシップなどをお届けします。女性誌レビューコラムインタビューなども充実! マンガ・日本メイ作劇場のニュースならサイゾーウーマンへ!