[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

ブスも美人もモテも負けも……木嶋佳苗の引力に魅せられる私たち

2012/03/18 21:00
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(C)安彦麻理絵

 
 先日、サイゾーウーマンのYさん(女)、某出版社のAさん(男)と3人で、高田馬場ルノアールにて打ち合わせをしていた。2時間みっちり仕事の打ち合わせ……と言いたいところだが、内情は1時間30分が「木嶋佳苗について」であった(子ども、保育園に預けといてコレって、どうなんだろう一体)。それにしたって、女は「木嶋佳苗が大好き」である。なにしろ、この日の新聞広告に出てた「女性セブン」(小学館)の見出し。「木嶋佳苗・女が気になるモテるブス力」ってどうなんだ? 凄いタイトルである。「ブス力」なんて単語、42年生きてきて生まれて初めて聞いた。

 そのことをYさんに伝えると、彼女はすかさず「私、公判で木嶋佳苗、見てきましたよ!」と言うではないか。「うそーっ!! すごい!! えーー!! ナマ佳苗、見たんだ、すごいーーっ!!」……多分、世の中の女たちが今一番見たい有名人、木嶋佳苗。

「どうだった!? やっぱりブスだった!?」

 ……まるで「上戸彩ちゃん、どうだった!? やっぱり可愛かった!?」みたいな、それと同じレベルの質問である。「どんな服着てた!? メイクはちゃんとしてたの!?」そんなに気になるか、佳苗のこと……ここまでくると、「佳苗のポーチの中身」まで知りたい勢いだ。

「佳苗、ジャケットの下にキャミとか着てましたよ。メイクは多分してなかったと思います、スッピンじゃないかなぁ、あれ」

 そして、Yさん曰く「佳苗、思ったよりもデブじゃなかった」らしい。「一般に出回ってる写真よりも、もう少し痩せてましたねぇ~」「ムショのクサい飯食ってちょっと痩せたんじゃないの? なんか麦飯とか出るらしいじゃない」……ムショでのヘルシーフードが佳苗をちょっぴり細身にさせた。しかし、そんなことよりも、かなり仰天した事実がある。それは「佳苗は声がものすごく可愛い」らしいのである。

「なんか、あどけない女子中学生みたいな? そういう声なんですよ、佳苗!!」

 ……それを聞いて私は、何かストンと合点がいったような気がした。もしも佳苗が。ジャイアンのお母さんとか、ジャイ子みたいな声だったら。きっとここまで男たちは騙されなかったのではないか……まさに「男殺しの声を持つ」木嶋佳苗。カヒミ・カリィとか、シャルロット・ゲンズブールみたいな、ああゆう声なんだろうか? 佳苗、ウイスパーボイス? そんな声で「女性としての本来持ってる機能が、普通の人よりも高いと言われた」なんて公判でしゃべってたのかと思うと、ある意味「萌え~」である。佳苗のモテるブス力。Yさんは熱くこう語る。

「料理上手に床上手、それで声が可愛いっていうのが、佳苗のモテの3本柱なんですよ!!」

 ……顔とか体型はすっとばされてるわけだが、もしかしたらそんなものは、そこまで重要ではないのだろうか?

 「料理作ってくれるって、ポイント高いですよ~」と、Aさんが言う。「ん~、なんかやっぱり、男が自分のために料理するのって、わびしいですからねぇ~、男の料理って、やっぱりねぇ~……」と、小さな声で気弱そうにしゃべるAさん、なんだか即、佳苗の餌食になってしまいそうである。

 高いカネ払って整形するよりも、料理の腕磨いたほうが実は確実に男をモノにできる……って、犯罪者に教えられてどうすんだ。「佳苗に負けてる美人」って、いっぱいいそうである。てゆうか、いるな、私のまわりにも。せっかく美人なのに、男がらみでロクな目にあってないヤツ。まぁ、しょうもない男ばっかり好きになるから仕方ないんだけど。

 ところで、案の定って言ったらいいんだろうか、佳苗裁判の傍聴席を求めて殺到してたのは、やはり女……なんだか女が多かったらしい。Yさん曰く、木嶋佳苗に群がる女たちは「佳苗ギャル」と呼ばれてるそうだ。すごいな、佳苗ギャルって……てゆうか、こんだけ佳苗のことに思いをめぐらせてる私も、間違いなく佳苗ギャルである……。

最終更新:2019/05/21 16:29
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