[女性誌速攻レビュー]「LEE」4月号

ガワだけ押し付けられるイクメンブームと、つるの剛士の神格化のワケ

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「LEE」4月号(集英社)

 今月号の「LEE」の表紙&インタビューには、『毎度おさわがせします』(TBS系)、『パーティー野郎ぜ!』(テレビ朝日系)から大出世して、いまはフランスを語っちゃう大女優になったミポリンこと中山美穂です。インタビューではフランスに住んでからの10年の変化、とくに昨年の東日本大震災によって大きく価値観が変わったという話をしています。食べ物は新鮮さ、ケミカルなものではなく自然なものに注目するようになり、化粧品に関しても自然素材なものを選ぶようになったとか。パリではノーメークの女性も多いらしく、

「その影響なのか、私もふだんは、日焼け止めとマスカラをさっとつけるくらいです」
「アンチエイジングに興味なくはないけれど、私はシミもシワもあっていいと思っている」

 とおっしゃるものの、さすがミポリン、もともとの美しさもあってキレイなお写真が並びます。インタビューを読み終えてページをめくった瞬間、ビビりました! 自然派ミポリンの写真と背中合わせにして、夫・辻仁成センセー&江國香織センセーの『右岸』『左岸』(集英社)の広告がドーン! ミポリンお手製のおからや豆腐ナゲットでパッサパサ~になってしまった辻センセーがドーン! そのわりにロン毛と眼光鋭い眼差しで年齢とガチンコバトルを繰り広げている辻センセーがドーン! 同じものを食べ、同じように暮らしているのに、まったく違う結果を得ているこの夫婦の不思議さを感じられずにいられませんでした。辻センセーはミポリンと夫婦というより、博士パーマでなにかそぎ落とされた表情を浮かべている江國センセーと夫婦の方がしっくりくるような気が……。

<トピック>
◎表紙の人インタビュー 中山美穂さん
◎こどもLEE
◎Special Talk with つるの剛士さん×コウケンテツさん「僕たち、実は“オクメン”なんです」

■オーガニックコットン狂

 今月号はファッションページが充実、とくに広告出稿が順調なようで、かつての「大家に家賃を収めに行くコーデ」などのトリッキーなページは封印されているようです。淡々と誌面を読み進める中で、自然に溶け込みながらも強烈な違和感を放っているのが「こどもLEE」です。「LEE」周辺の業界人に“親子のおしゃれルール”を聞くページでは、なかなか強烈な言葉が並びます。

「小学校に行くようになったら、お揃いはイヤだって言われてしまいそうでしょ。だから素直に着てくれる今の時期は、私の好きなものをお揃いにすることが多いんです」
「海辺の暮らしに合う 肩ひじ張らないカジュアルが基本です」

 これらの合間合間に、「編みかけのボーダーはオーガニックコットンで」とか「ほっこりとしたぬくもりのあるおしゃれが得意」とか、「おしゃれママ教典」(教祖は渡辺満里奈、雅姫あたり)に載ってそうな言葉が挟まってきます。「すぐに大きくなるから、おさがりでいい」「ミートソースの染みと鼻水が同居するのが子ども服だ」というのはもはや昭和、平成も20年を過ぎれば子ども服にも意味が出てくるのですね。子どもの意志がまったく皆無、ということに親が無自覚なのが実に怖い! 母親のエゴ丸出しです。子育てなんて親のエゴをどれだけ制御するかがキモなのに、ここまで開き直られると……。

 モード系ブランドまで余すとこなく紹介する「sesame」(朝日新聞出版)や不定期にブランド子ども服を紹介する「VERY」(光文社)と、「LEE」のナチュラル志向は相反するように思われがちなのですが、ミーハーに「アルマーニジュニア」を信仰する気持ちと、「オーガニックコットン」でガムシャラに子ども服を作る姿勢はまったく同じに見えるのは、筆者が部外者だからでしょうか。

■「nina’s」パパとは違うしんどさ

 さて、今月号のハイライト「Special Talk with つるの剛士さん×コウケンテツさん『僕たち、実は“オクメン”なんです』」を見てみましょう。「LEE」でリレーダイアリー「“毎日イクメン”で行こう」を連載中のふたりが初の顔合わせ。キャッチには「“奥さんを喜ばせたい!”が子育ての原動力」、リードの終わりには「“奥さん大好き”合戦を繰り広げました!」という言葉……「イクメン」という言葉に違和感を覚える人が多い中、イクメンはネクストステージ「奥さん大好き=オクメン」に進み始めたようです。

 肝心の中身ですが、つるのが一枚も二枚も上手です。コウの子どもがイヤイヤ期に入ったという話を受けて、「『おめでとう!』ですね。イヤイヤ期は大変だというけど、子供の成長の段階の一つだもの」と4人の子持ちの貫禄をみせ、自然に話を自分に引き寄せます。自分の3女がイヤイヤ期に入り、靴をはかせようとしても拒否。それでも「親がはかせれば5分ですむところを15分。でもなんでも自分でやろうとし始めたんだから、めでたい! めでたい!」。赤ちゃん返りに関しても「人として生まれて初めて“嫉妬”という感情が芽生えたわけでしょう? めっちゃめでたい。『立った立った! 歩いた歩いた!』と同じで『うちの子が嫉妬してるよ~』と喜ばなきゃ」 と赤ペン先生泣かせの模範解答! 子どもを嫁に取られたというお決まりのネタも、「寂しかったですよ~」といいながらも、「これは僕も奥さんにフラれないようにバージョンアップしないとあかん、と頑張りました」。しまいには、「うちの奥さんねぇ、どんどん素敵になるんですよ。かわいいとかきれいというより素敵」と嫁自慢でフィニッシュ。「イクメンと言われるのもしっくりこない」と言っておりますが、「イクメンタレント」最終形態ココにあり! といった全方位制覇の完璧さです。

 でもこのつるのの磨き上げられたイクメンぶりは、子育てに悩むパパ・ママ両方の現状をうまく投影した結果だと思うんです。

 パパサイドから見たら、まさにお手本。「LEE」は不定期に男性向けの「MEN’S LEE」も発行しています。それを見ても、「オヤジ化STOP! 男の身だしなみ最前線」「子どもにモテるBOOK」「ホットプレートで料理王になる!」など、ファッション、子育て、料理(=奥さん対策&家族で暮らしを楽しむ)といった内容で、「つるの解体白書」といった感じ。実際に「子育てに関わりたい!」と思っている父親が増加していることも確かですが、「男だって子育てしろ!」という社会風潮に無意識に怯え、自分がどんな父親になりたいのか分からぬままに、「ガワ」だけ押し付けられてアタフタしている男性陣も少なくないと思います。「イクメンブーム」の落とし穴はまさにココにあったのですね。

 ママサイドから見たら、つるののような完璧な夫が存在しないことは頭のどこかで分かっていても、孤独に子育てしている自身の「お守り」のように、「理想の夫」としてつるのにいろんな願望を投影しているような気がします。

 現代の女性は「仕事と家庭を両立して、子どもも産んで、それでもエイジレスな現役感を保っていて、女として輝いている」と想像上の生き物のような存在でいることを求められていますが、男性側も「安定した企業で稼いで、忙しくても子育てに積極的で、料理やインテリアなど自分のライフスタイルを持っていて、浮気もせずに妻だけを愛する」とハードルが高めに設定されているのだな~と再確認。もちろんこれをさらっとやってしまう人は世の中に数パーセントはいると思うのですが、これをスタンダードにすると追いつめられる人が出てくるはず。相手にあれもこれも求める欲望合戦、両者がどこで手を打つようになるのか、この先に期待と不安が募ります。

 今月は「つるの信仰の恐怖」にすっかり気を取られてしまいましたが、付録の「基本のお弁当BOOK」がおススメです。本当に基本の「き」ですが、奇抜な調味料も使わず、フライパンひとつで完成するお弁当など、実用性が高い! この春からお弁当づくりが必要になる人には参考になりそうです。
(小島かほり)

「LEE」

でも弁当箱が異常なほど小さかった……

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