[連載]悪女の履歴書

「とにかく頭が良かった」中学時代の木嶋佳苗、その異常なる行動力と冷静さ

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Photo by kamikobe from Flickr

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■婚活サイト登録から9日で男性宅へ引越し

 異常なる行動力、熱意とタフさ。それは法廷での木嶋被告の尋問からもうかがえる。

 板についた丁寧語で、弁護側尋問には謳う様に証言する木嶋被告。傍聴席からは後ろ姿しか見えないが、”カナエ”の丁重な話し方、かわいい声だけを聞いていると、犯罪とは無縁の、育ちがいい女性にしか思えない。質問にも一拍置いて丁寧に答えるなど、受け答えの様子は決して頭は悪くないという印象だ。中学時代の木嶋被告は「とにかく頭が良かった」らしい。

 頭の良い木嶋被告なら、当時、引越しただけで捜査の手から逃れられるはずもないことは分かっていたはずだが、彼女を取り巻く過去の出来事を考えれば、逃げ切れると考えていたとも思える。

 こうした努力が実ったのか、1人の男性と出会うことに木嶋は成功する。それが冒頭の「野田に一戸建て住宅を持つ」男性Aさんだ。Aさんは母親を亡くしたばかりの1人暮らしの40代だ。母親の遺産もあり、金銭的にも余裕があった。

「すぐに家に引越してきなよ」

 Aさんはこう木嶋被告に言ったという。それだけではなく、マンションの違約金やクレジットローンも払ってくれるという。木嶋被告にとって何とも都合のいい救世主であり、「引越し」「金銭援助」という条件に見事に合致した形だ。偶然とはいえ、木嶋被告の運の強さを感じずにはいられないエピソードだ。9月16日にはAさんが池袋の木嶋被告マンションに出向き、引越しの準備に取り掛かる。もちろん、この時もマンションには警察の監視が続いていた。

 知り合ったばかりの女性に、24時間警察の行動確認があるのは尋常ではない状況だ。しかし木嶋は「支援してくださっていた方が急死して、警察に疑われている」と話し、Aさんもそれを信じた。Aさんは「刑事ドラマのようだね」と面白がり、「守ってくれる」とまで言ったという。9月19日、2人が引越しのためAさん宅へ電車で移動する際も、複数の警官が同じ電車に同乗している。

 「あなたは誰ですか」との警官からの質問にAさんは「友人です」と答えたという。今度は野田のAさん宅に、24時間の警察の監視が付くようになる。ゴミを出すAさんに「中身は何?」と聞く警官。そんな状況でもAさんは木嶋被告を信じ続けた。

 木嶋被告の「男を信じさせるテクニック」。他の被害者からも同様の証言が出ているが、この間、Aさんは木嶋被告に約450万円もの金を渡してさえいた。

 驚くのは、警察から”狙われている”にもかかわらず、冷静さを失っていない木嶋被告。一戸建て住宅の中では、「(引越しして)安心して眠れる」 「ずっといてくれていいんだよ」という会話が2人の間で交わされた。だが、ここまで木嶋被告に心を許したAさんと木嶋被告の間には性的関係はなかった。それどころか木嶋被告は法廷で「同じ部屋で寝たことは一度もありません」ということを、ことさら強調し、「(Aさんに)異性の魅力を感じたことはない」と言い放っている。

 9月25日に、木嶋被告はこのAさん宅から任意同行の上、逮捕された。

 逮捕から数日後、Aさんは家の火災報知器が全て取り外されていたことに気付く。状況証拠的に考えれば、これは木嶋被告の仕業だという可能性は高い。

 会ったばかりの男の家に引っ越し、その主であるAさんの不在時を狙って複数の火災報知器を外した(かもしれない)木嶋被告。外には24時間態勢で自分を監視する複数の警官たちがいる――。

「絶対にボロは出さない」「騙される男がバカ」「警察だって騙す自信がある」

 そんな彼女の心の呟きさえ聞こえてくる。今回の事件を考える上で、最も象徴的なエピソードのひとつだろう。
(取材・文/神林広恵)

(つづく)

『現代版 魔女の鉄槌』

底知れねぇ!

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