[官能小説レビュー]

SMという形で互いを想うピュアな気持ちを描いた『卒業』

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『卒業』(館淳一、幻冬舎)

■今回の官能小説
『卒業』館淳一

 昨年は官能小説界にとっても激震の一年だった。作家、団鬼六氏の死去。まだまだ世間一般には知られていないSMという世界を広く知らしめ、先陣を切って走り続けてくれた団先生。その耽美なSMの世界を引き継いでくれている官能小説家は大勢いる。なかでも、館淳一の描くSMの世界観は、どれも男女間の強い絆のもとに成り立っている。痛みを伴う屈辱的行為や、ともすれば生死に関わるようなプレイだからこそ、互いを強く想う描写をきちんと描いている。

 今回紹介する『卒業』は、くたびれた中年の裕介と、美しい養女のゆかりの物語。結婚式を翌日に控えたゆかりと裕介は、ふたりが出会った十年前を振り返りながら、最後の快楽に溺れてゆく。

 大好きな言語学を存分に研究できる代わりに、不動産を多く持つ鹿瀬家の婿養子になった裕介。あまりセックスが好きではない妻の喜久江とは存分なセックスはできず、溜め込んだ性欲をトルコ風呂やオナニーで解消する日々だった。

 そんなある日、両親を亡くしたゆかりを、鹿瀬家の養女として引き取ることになったのだ。質素な白いブラウスに黒髪のポニーテール、華奢な身体つきの14歳のゆかり。初めて彼女と出会ったとき、裕介は恋に落ちたのかもしれない。婿養子という立場から鹿野家になじめずにいる裕介と、喜久江からの辛い仕打ちを受けているゆかりは、自然と心を通わせる間柄となった。

 ふたりの主従関係はひょんなことから始まった。土蔵のなかで、裸女の緊縛写真を熱心に見ているゆかりを見つけた裕介は、このことをふたりだけの秘密にする代わりに「お仕置き」という名の調教を始めた。スカートをたくし上げ、まるい尻を叩くと、真っ白な肌はみるみる脈打ち赤く充血していった。抱きしめるような形で肩を抱くと、ふたりは秘密の同盟を結ぶ。

「お父さん……。お母さんには内緒ね」

 妻と娘が留守の間を見計らい、秘密の情事は定期的に行われた。風呂で互いの性器を洗い合ったり、土蔵で何時間も柱に縛り付けたり……裕介は心のなかで何度も自制しようと試みながらも、抑えきれない気持ちをぶつけるかのように、ゆかりの中に潜んでいたマゾ気質を呼び覚ましていく。ついには、ゆかりの処女を奪ってしまう。早熟なゆかりは裕介からの性の教えを次々と学んでいった。

 ある日裕介は、妻の喜久江が長年不倫をしており、娘の夏子は不倫相手との間に出来た子どもだと知る。衝撃的な事実を知り、ますますゆかりとの愛情を深く感じることになった裕介。そして、思いがけない展開が待ち受ける……。

 純真無垢な少女をイチから手懐けていく快感、その一方で良心と葛藤する気の小ささが、いかにも中年男性らしいリアリティーに溢れている。

 裕介にとって、暗い生活のなかで唯一の灯火となったゆかりへの愛と、裕介に対するゆかりの純粋な愛情……ゆかりから裕介への、最後のプレゼントは必読。互いのピュアな気持ちはSMという形を経て、至極の愛へと昇華する。

『卒業』

ゆかりがかなりの策士

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